戦後思想のわかりにくさ | 気になる映画とドラマノート

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戦後思想のわかりにくさ

 アメリカには、アメリカ自身を社会主義にしたい人々と、帝政ロシアのユダヤ人迫害に恨みを持つロシアからのユダヤ移民が、「帝政ロシアへのうらみつらみ」という動機から、社会主義に共鳴する人々がいた。

 また、一方、セオドア・ルーズベルトとマハンの海上征派論に基づく、アメリカのアジア太平洋支配の理念が底流に生き続けていた。

 トルーマンは、アメリカが原爆を保有したとわかったとたん、ソ連に対する優位を確信したし、やがてソ連のキューバ、東欧、アジアへの共産化の野心を知ると、日本の天皇を反共産主義の礎にするに都合がよいと考えはじめる。この転換は、ゆるゆると行われたので、GHQの諜報部には、ハーバード大学のマルクス主義研究会所属し、日本共産党系の歴史学者の羽仁五郎に師事したハーバート・ノーマンが所属したり、同じくハーバード大学のマルクス主義研究会所属していた都留重人が、アメリカのB29に同乗して、上空から広島長崎を視察したりした。

 そして、ハーバート・ノーマンのはたらきかけによって、日本共産党の拘留されていた党幹部が出獄して、講演会を行って、「天皇の戦争責任を追及しなければ、日本国民はさらなる惨禍に見舞われることになる」と呼びかけた。

 そして、日本共産党は、アメリカが社会主義国ではないのにかかわらず、アメリカ軍を中心とするGHQを解放軍と呼んだ。

 この時、在日韓国、朝鮮人は圧倒的に親共産主義派が多かったので、日本共産党とともに、闘争したのだが、やがて、在日の政治意識は、「敵は資本家」から「敵は日本人」に変化していく。

 日本の左翼もまた、この在日の人々の「敵は資本家」から「敵は日本人」への変化に影響されて、次第に、「日本民族の恥部、残虐性の摘発、反省の薦め」という発想がうまれてくる。

 これは、アメリカによる財閥解体、農地改革、労働法、民法改正などが、日本の左翼にとって、戦うべき目標を見失わせる結果を生んだために、金融資本との戦いというテーマが後退し、「民族性攻撃」に変化したことを意味する。同時に在日にとっても、韓国人にとっても、「帝国主義日本」というレーニンの帝国主義論に立脚しつつも、階級闘争論そのものは忘却されて、「韓民族」対「日本民族」の道徳性優越論に集中するというかなり変態じみた現象を生む遠因となった。