大河ドラマ信長KING OF GIPANGの17話は、珠玉の回だ。
桶狭間の勝利の祝いの夜、信長は、実母がひそかに家臣のひとりと密通している場面を目撃する。
信長は怒りにかられて、ただちにその家臣を切り捨て、母親を恥を知ってくださいと責めて、軟禁する。
ここでおもしろいのは、斉藤道三のもとから嫁いだ信長の妻が、なぜ信長が母親に対して冷たいのかわからないので、信長の留守に、母親を訪ねて、信長様は「変なところがある。ご母堂様がなにをされようと、信長さまに関係ないことです」というのだ。
韓国ドラマが、親の倫理的過失をこどもが責めることをテーマにして、ほりさげるところを、この信長17話は、こどもの親にたくす倫理性と失望へのうらみの問題を、「結局のところ、親は親、こどもがそれを責める根拠はじつはないのではないか」という指摘をズバリとしてみせている。
そして、この家臣は、信長が切り捨てたつもりが、後に生きていたことがわかる。
信長の祖父は、その家臣を殺すことを禁じて、信長に言う。
「そこに座って、美しき流れのみなもととは、いかなることかをしばし考えよ」と言い残す。
信長は、母親を責める心情をそのことによって捨てるのである。
その後、母親は、信長の家来池田常興の妻に対して、「よき母親になりなされ」と涙を浮かべて言う。こうした親子の信・不信のドラマが、さりげなく本質を捉えて信長の物語にうめこまれている。