昨日見た大河ドラマ「江」 | 気になる映画とドラマノート

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「江」の作者は、保守的な人だと思われる。いや、保守的ではない、保身的、世間迎合的である。

というのも、昨日の放送で、石田三成が反発する豊富家臣たちに追及されて、徳川家康に助けを求めて、家康の助言により隠居するのだが、そうした状勢について夫の秀忠と家来の本多が話し合いをしていると、何かと江が口を挟み、質問をするので、秀忠がうるさがって、お前はどうしてそう口を挟むのだ、というようなことを言う。

これに対する江の返事が呆れる。

「私は、ただ世の中の動きが知りたいだけなのです」

これではまるで、選挙になると日本の放送局がこぞって、国民一人一人が政治に関心を持って、主体的に一票を投じましょう。そのためには、ニュースや新聞に関心を持って、という女性像に江は合致していると言わんばかりのセリフだ。

ただ、江戸時代だから、新聞テレビラジオがないだけで、江は家庭の事ばかりでなく、社会的関心の旺盛な女性だった、とこういう意図がなければ、「私は、世の中の動きが知りたいだけです」なんていうセリフになるはずがない。
しかし、本当は、「淀殿は姉ですもの、豊富の行く末が心配なのは当たり前ですわ」くらいが当たり前の状況ではないだろうか。

ところが、そういうセリフにしてしまうと、江が単に内輪の、姉を心配するというごく普通の女になるが、「世の中の動きを知りたい」となると、単に家庭内や姉妹の範囲にとどまらず、日本国の平和だとか、戦のない世の中になってほしいものだとかを、気に懸けるかしこい女性と強調することができなくなるので、このセリフになったのではないか。

しかし、このセリフ、何とも通俗的、優等生的セリフであり、したがっていかにも、現代女性のあるべき知的で活発な女性を無理矢理戦国時代の江のキャラクターに押し込んだような感じがしてならない。

ちなみに、イギリス映画「インドへの道」では当時、イギリスで女性の普通選挙投票権が始まりかけていて、登場人物の一人の女性が、一知半解の知識に基づいてなど私は、投票したくない、と言ったようなセリフを言う。目の前には、政治的洞察も何も関係なしに、ただ権利の拡張を喜ぶ女たちがいる前で、その女性は言う。