この「ホ・ギュン」は、朝鮮王朝がいかに屈辱的な外交に甘んじてきたか、民を犠牲にし、女たちを犠牲にしたかを完膚なきまでに、描いて、強烈に自己内省している。決してドラマ済衆院のように嘘と誇張を並べ立てて、高宗とアメリカ人は慈悲深く、日本は根性悪な民族だなどという自己満足な描き方に堕すことはない。
「ホ・ギュン」の作者が明確に歴史実態としてドラマに盛りこんでいるのは次のことだ。
世子冊法を明国から受けなければならず、それは、①明国の使者を歓待して、②女を抱かせて③さらに、300人の女を連れていかせなければならない④朝鮮の一年分の税3万両を明の朝廷にばらまかねばならない、とふっかけられるごとき状況もあった。
と、このように端的に描いている、つまり日本の島崎藤村が「破戒」を書いたように、自国の歴史の負の部分を呵責なく描いて、鑑賞者とともに深く内省して現代の人権確立に活かそうという気概にあふれている。それは誰のせい、外国のせいではなく、まず、自国自身に正さねばならぬ点があるのではないか、というまっとうな精神だ。そしてこれは日本もまた、学ぶべき態度で、自虐というものと、嘘と誇張は違うのだ。
日本でも韓国でも、自国批判が悪いのではない、嘘と誇張が悪いのであって、自国の歴史の負性を描けば、すべてが自虐だなんてことは決してない。 (私は常々、自虐史といわれるものに嘘があるのを重々承知しつつも、その反動で自国の過ちを書けばなんでもかんでも、反○というレッテルを貼る風潮に腹立たしく思っているので、書きました。問題は、「反○」とか「自虐」とかのレッテルではなく、真実か誇張、嘘か、それだけでなくてはなりません。民族がそれだけで悪や劣等であるはずもありません、地球上のどんな国でもです。
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陽明学の咀嚼と漢詩の修練によって、人一倍理非曲直をわきまえたホ・ギュンは、官吏としての役割から、明国の使者の接待をさせられて、法外な金銭と女300人を要求され、さらに知己のキーセン、ソランを明国に渡すことになり、胸をかきむしられるような屈辱をあじわう。
そして、幼馴染イ・ジェヨンが亡国の高級官僚イ・イチョムの仲間になったと知らされて衝撃を受ける。
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