懦弱者の遺構巡礼 -2ページ目

懦弱者の遺構巡礼

遺構、史蹟に留まらず様々な街を彷徨い、記録に留めた物達。
不定期更新御容赦。

新むつ旅館は八戸の元遊郭新陸奥楼という名前であった。小中野遊郭の妓楼で1898年(明治31年)開業と、120年程の歴史のある貴重な建築物でもあり、売春防止法施行の1958年(昭和33年)の前年に転業し、旅館として現在に至る。

遊郭の建物をそのまま旅館として使用しているので当時の釘隠しや擬宝珠のある階段、空中廻廊なども実際に触れることも出来る。
Y字の階段の艶の出た手摺や階段は戦後消防法に基づいて設置したと言う話もあるが、遊廓らしい内装でもある。
玄関を見据える御多福はかなりの大きさだ。手摺や欄干の意匠一つに丁寧な仕事を感じる。一歩踏み入れるとギシギシと音が鳴るのはそれだけの歴史がある証でもある、120年も前の建物がこうして残っているのは奇跡に近いとすら感じてしまう。
時間が作り出した木の色、木目。2006年(平成18年)に国の登録有形文化財に登録されている。しかし国からは維持する為の助成金等は出ないので保存活動の為のイベントや寄附等で修復や維持を行っているという。
梅の釘隠し。他にも松や鶴と言った縁起を担ぐ意味合いの物をさり気なく使っている。将棋の駒様の部屋番表示。
空中廻廊。艶の出た手摺、欄干の美しさ。
当時からの物なのだろう。玄関広間、正面左側にある立派な神棚。
一階の左側が見世だった所で格子越しに娼妓が居たという。破風の起り屋根は独特の品がある。
細かな意匠に目を奪われる。組子が覗く屋根。当時の情景が想像出来るような細やかな意匠に一つ一つ触れることが出来、更には歴史的な資料も普通に拝見することが出来る。