近所に、単身の高齢者ばかり住んでいるアパートがあります。
元大工さんが作ってくれたベンチがあって、そこにみんなで座っておしゃべりしたり、食品販売車の音楽が鳴ると、みんなゾロゾロと出てきて今夜のおかずを買ったりと、素敵なコミュニティが出来上がっています。
そこの1人のTさんは83歳。朝、子供達の安全のために交差点に立つ、緑のおじさんを50年以上してくれています。背筋が伸びていて、とても83歳には見えない。
アパートの敷地内で野菜を作り、よく私にくれます。料理も得意、草刈りもまめにして、裾上げとかの縫製の仕事もしています。きっと心も体も健康なんだなぁ。こんなだったら長生きしたいなぁと思わせてくれる、素敵なご老人です。
Tさんの家の前を通りかかると
「さつまいもを沢山貰ったから、持っていきな。」
と声をかけられた。
使用済みのレジ袋に入ったさつまいもは、
自家製焼き芋にするのに丁度良い、細身の紅あずま。
洗い桶にゴトゴトッと入れると
カチッ
と何かが落ちた。
それは銀色の薬の飲み殻で、ワイパックスと書いてあった。Tさんは精神安定剤を飲んでいました。
私が見る元気な姿は、Tさんのごく一部で、その裏には孤独や不安を抱えていたんだ。
あんなに元気そうに動いていたのも、実は不安で動かずにはいられなかったのかもしれない。
男の人だから、愚痴を言うことも出来ず、一人でこらえているのかも。
年を取って、病気になって、亡くなるって、自然の摂理で当たり前って思っていたけど、死を選ばないで、最後まで生き抜くことは、とても勇気がいることのように思えてきました。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます
「誰のために生きるの?」
「自分のため」