日本を代表するロックシンガー、氷室京介さんが表舞台から姿を消して6年が経ちました。
『LAST GIGS』最終公演で還暦の年にアルバムの発売を考えているという発言をされていましたが、氷室さんの還暦から2年が経とうとしている今も特に発表はありません。
私も一ファンとして、氷室さんの新作を待望しています。
今回は私の個人的な「氷室京介アルバムランキングTOP5」をご紹介したいと思います。
ランキングの基準としては、
・良い楽曲が多い
・サウンドが良い
・ベスト盤ではなく、アルバムとしての完成度が高い
という点にフォーカスを当てています。
これから氷室さんの音楽をディープに聴いていきたいと思われている方などの、参考になれば幸いです。
第5位 『NEO FASCIO』(1989年)
ソロデビュー後2枚目のアルバム。
前作のラストナンバー『独りファシズム』から流れを引き継ぐように、ファシズムをテーマとしたコンセプト・アルバムです。
全体主義に基づく監視社会の恐ろしさを描いたジョージ・オーウェルの小説『1984年』のような描写が歌詞の中に散りばめられていき、ラストナンバー前の『CALLING』で「運命はきっと変わる時を待っている」と力強く、かつ淡々としたメロディで歌われ、エンドロールのような『LOVE SONG』で締められる、この流れが最高です。
中盤に氷室さんを代表するシングル曲『SUMMER GAME』と、そのカップリング曲の別テイク『RHAPSODY IN RED』が、アルバムの流れをぶった切るように収録されているミスマッチ感も絶妙。
BOØWYのプロデューサーを務めた佐久間正英さんがベース、ギター、シンセ等をマルチにこなし、ドラムがそうる徹さん、あとボーカルとギターが氷室さんという、たった3人でレコーディングされた作品でもあります。
サウンド的には佐久間さんがイニシアチブを取って制作されているため、氷室さんのキャリアの中でも異色の作風と言えるものになっていると思います。
シンセサイザーの音色やSE、ドラムやボーカルのリバーブ感などは時代を感じずにはいられませんが、楽曲の世界観は発売から30年以上たった今も色あせていません。
むしろSNSの普及などで、人々が無意識のうちに監視社会で生きていると言える現代こそ聴かれるべきアルバムでしょう。
第4位 『MELLOW』(2000年)
前作『I・DE・A』はギタリスト、スティーヴ・スティーヴンスと共に制作され、氷室さんご自身も「究極の氷室京介」を体現したアルバムとまで言っているほどの傑作です。
その次に発売されたこのアルバムは、前作同様氷室さんのセルフプロデュースによる作品ですが、サウンド的には前作の雰囲気を引き継ぎながらもタイトル通り「メロウ」なバラードや、ミディアムテンポのロックが中心。
私の中では『I・DE・A』と『MELLOW』は対になっているようなイメージがあります。
このアルバムでは氷室さんの美メロセンスがこれでもかと発揮されていて、『So Far So Close』や『ダイヤモンドダスト』等は日本ロック史の中でも屈指の美しいバラードだと思います。
しかし、ただのバラード主体のアルバムというわけではありません。
オープニングからハードな『SLEESLESS NIGHT~眠れない夜のために』で始まり、バラード曲が続いた後に、氷室さんの楽曲の中では珍しい、ルーズなR&Rナンバー『Jive!』、ラップが取り入れられたハードなナンバー『bringing da noise』でアルバムが終わるという、緩急のしっかりついたロックアルバムです。
余談ですが氷室さんのこの頃のアルバムCDは特殊ジャケットや紙ジャケットのものばかりなので、何かの節目で是非全作品をリマスター、プラケース仕様で再発してほしいと思っています。(笑)
第3位 『IN THE MOOD』(2006年)
『I・DE・A』以降、どんどんハードでカッコいいロックサウンドを展開していく氷室さん。
このアルバムはとにかく隙のない、ゴリゴリのロックサウンドで構成されています。
参加ミュージシャンも、GLAYがバックを務める『SAY SOMETHING』以外は全て海外のプレイヤー。
『EASY LOVE』ではラップを前面に取り入れたり、『BITCH AS WITCH』ではスクラッチ音を入れ、歌詞とメロディもミクスチャーロック的なアプローチがされているなど、新たな試みが要所要所に散りばめられています。
歌メロがキャッチーでライブ定番曲にもなった『WILD ROMANCE』『IN THE NUDE』『SWEET REVOLUTION』などは、氷室さんらしいトラック数の少ない、鋭利な8ビートのロックナンバー。
後半では洋楽のカバーも収録されているなど盛りだくさんの内容で、収録時間は50分程度ですがいい意味で満腹になれるアルバムです。
第2位 『FLOWERS for ALGERNON』(1988年)
氷室さんのソロデビューアルバム。
はっぴいえんど一派やゆらゆら帝国、スピッツのディスコグラフィが並ぶ、所謂「名盤ランキング」のような企画ではBOØWYの作品ばかりがランクインしますが、私はこのアルバムこそランクインするべきだと思っています。
BOØWY時代の音楽性を踏襲しつつも、BOØWY時代とは明らかに違う音楽性を展開しているアルバムで、『DEAR ALGERNON』や『ALISON』のような、鍵盤を多用した美しいバラードは氷室さんソロならではです。
ロックナンバーにしても『ANGEL』はBOØWY感がありますが、サビの途中で転調したり、シンセのフレーズがキメになっているあたりはBOØWYとは明らかに違います。
シャッフルの『SEX&CLASH&ROCK'N'ROLL』も、ほとばしるエネルギーを感じる『"16"』や『ホンキー・トンキー・クレイジー』とは違い、大人なクールさを感じさせてくれるナンバー。
『PUSSY CAT』はルーズな雰囲気の8ビートのロックンロール。
当時の氷室さんの熱意がこれでもかと詰め込まれた作品で、一貫した氷室さんの美しさとナルシズムがアルバム全体の世界観をまとめています。
ただ『NEO FASCIO』同様どうしても時代を感じるサウンドではあり、あわよくばリミックスされて生まれ変わった音源で聴いてみたい作品でもあります。
一度だけ発売されたリマスター盤はプレミア状態で、現在はサブスクでのみリマスター音源で聴くことができます。
収録曲の大半はライブの定番曲として2000年代以降も演奏されていますが、やはりライブテイクの方が古臭さがなく、より鋭利なロックサウンドになっています。
第1位 『"B"ORDERLESS』(2010年)
これぞ最高のロックアルバムです。
ギタリストのYukihide"YT"Takiyamaさんが参加してから、氷室さんの音楽はより贅肉がそぎ落とされた、洋楽の匂いの濃いロックへ進化していったように感じます。
冒頭の、GLAYのTAKUROさんが作詞を務めた『My name is”TABOO"』『PARACHUTE』から一気にハードなロックの世界にいざなわれ、『Doppelgenger』『忘れてゆくには美し過ぎる...』など、激しく美しい楽曲が展開されていきます。
少数精鋭でギター、ベース、ドラム、ボーカルのみの編成の楽曲が多く、鍵盤も最小限しか使われていません。
しかしアルバム全体を通して隙間の多いサウンドではなく、密度の濃いサウンドに仕上がっており、まさに完全無欠のアルバムと言えると思います。
この当時の氷室さんは50歳を迎えようとしている頃で、50歳を超えるミュージシャンは歌のキーが下がったり、若い頃に比べてバラードやしっとりしたナンバーが増えていく傾向が強いのに対して、氷室さんはキャリアの初期より激しいサウンドに挑戦されているのが凄いですね。
このアルバムの発表から4年後に氷室さんはライブ活動引退を発表し、さらに2年後に表舞台から姿を消されてしまいましたが、キャリア終盤のツアーでもこのアルバムの収録曲の多くが、過去の楽曲を差し置いてフィーチャーされていました。
それくらい氷室さんにとっても納得のいくアルバムだということでしょう。
この作品以降、YTさんはシングル曲の編曲を担当したり、ツアーに参加したり、キャリア最後のベストアルバム『L`EPILOGUE』に収録されたBOØWY時代の楽曲の再録版で、まるで布袋さんご本人のようなギターを再現していたり、もはや氷室さんの右腕のような存在になっています。
今後リリースされるであろう新作では、これまで以上にYTさんがフィーチャーされた作品になることが期待されますね。
というわけで、今回は個人的な氷室京介さんのアルバムランキングを紹介してきました。
今の若いリスナーにとっては「元BOØWYのボーカル」というイメージが強いと思いますが、氷室さんはソロになってからが最高なんです。(笑)
サブスクでも聴けるので、今回ご紹介した作品たちもぜひ聴いてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




