朝の陽射しが眩しく、昨晩のお酒が抜けないままの会長と副会長が顔を合わせた。
「おはよう、寝れたけ?」
「なかなか寝付けなくて、なんか音が気になりませんでした?」
「…実はな、やってもたんよ。」
「えっ?」
「カプセルのTVでペイチャンネルがただで観れたやんか。」
「」
「つい、手が止まらんくて。。」
「会長、、あなたって人は。。でもテッシュ無かったじゃないですか。」
「フロントで番組表のプリント貰ったやんか。」
「!」
「朝から言うことちゃうんやけどね。。」
「いや、あれ硬い普通の紙ですよ!?」
「う、うん。」
それ以上は何も聞かなかった。いや、聞けなかった。
気まずい雰囲気の中、今日の目的地まで向かった。
今日は佐賀から一気に熊本まで南下し、阿蘇山を目指した。陽射しが強く、風もかなり吹いていたがそれが心地よかった。バイクに跨っている間は頭の中が空っぽになれる。余計な事は何も考えず、目的地に向かう。たまに老後の事を考えてしまい赤信号を突っ走ってやろうかと思うくらいだ。
しかし、それが仇となった。気付いた時には阿蘇山のふもとまで来ていた。
書記がいない。
二人は後ろを振り返るが見えるのはヤン車が1台のみ。路肩にバイクを止め、副会長が煙草に火を付ける。
「会長、どうですか1本。」
「悪いなあ。」
「フーッ。ふもとまで来ましたねー、お腹空きません?」
「空いたんよなあ。食べログ情報ではもうチョイしたらラーメン屋あるで。」
「いいですね!そこ行きましょ。」
「それな。」
二人はスルーしている。今一番会話に出すべきことは二人とも分かっているがあえてのスルーだ。
ラーメン屋ではちゃんぽんが美味しそうだったので二人はこれを注文した。長崎に寄らなかったので丁度良かった。暖まった体でバイクを走らせる。
阿蘇山は一面緑と言うことは無く、むしろ所々に溶けないまま残った雪があるくらいだった。お土産屋さんに入ったり、阿蘇山登頂記念と書かれたパネルと一緒に写真を撮ったりしたが、何て無いな。と頭の中で二人は呟いた。
「さーて、もう一気に鹿児島まで行くで!」
「おー、行っちゃいましょうか!」
二人はまた走り出した。走る。ひたすら何も考えずに走る。考えたら負けだ。考えるとしたら今日の晩御飯だ。鹿児島と言えば芋焼酎、黒豚、魚も美味しそう。
そうこうしてる間に、指宿に着いた。ここは砂風呂が有名であることはリサーチ済みであった。温泉施設に入り、更衣室を出ると大浴場への通路と砂浜への通路がある。先ずは砂浜へ向かい、仰向けに寝そべると従業員のおばちゃんが砂をスコップでかけてくれる。長いバイク走行で冷えた体がみるみる暖かくなっていく。ウトウトしていると時間が来たので次は大浴場へ向かい、専用のシャワールームで砂を落とす。湯船に浸かるとちょうど良い湯加減で顔がほころぶ。
「気持ち良過ぎですね!」
「それな。」
「この近くに宿あったら取りましょうよ!その周辺で飲みましょう!」
「そうしょ!」
宿はすぐに見つかり、空部屋もあるとのこと。近くには昔からやっている地元民御用達の居酒屋もあった。地酒の芋焼酎を数種類飲み、黒豚の豚カツや近くでとれた魚の刺身に舌鼓を打った。
宿に戻ると二人は居酒屋でオススメして貰った焼酎を飲み直し、知らぬ間に眠った。
「おいよーーー!」
副会長は何か声が聞こえた気がしたが、すぐに夢の続きを見に寝入った。
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