午前6時、すっかり明るくなった頃にフェリーは福岡県の門司港に到着した。
昨夜の事はあまり覚えていないが、全裸の書記を動画に納めてYouTubeにアップロードをする、しないと言うことで揉めていたような気がする。その後は3人で飲み明かして、雑魚寝の寝室で眠りこけた。
「おいよー、起きなよー。」
書記の声が頭に響く。こういう時に1番最初に起きるのは大抵書記である。うるさいな、そう思いながらも会長と副会長は黙々と歯を磨き、身支度を整え始めた。
「会長、今日はどのようなルートを通るでありますか?」
「んーとね、まず福岡市まで向かおうかそこでラーメン食べよ。んで太宰府天満宮寄ってから、佐賀まで行って吉野ヶ里遺跡を見に行こう。で、佐賀駅前のビジホかカプセルホテルで泊まるって感じで。」
「なるほどー!博多ラーメン食いてー!」
「僕生徒のために太宰府天満宮で御守り買うちゃろー。太宰府天満宮に祀られてる菅原道真は学問の神様でねー」
「行くぞ。」
副会長と会長はそれぞれのバイクに跨がり、エンジンをかける。調子は良さそうだ。門司港にはトラックやローリーが多く走っている。その中をフェリーから降ろされた車とバイクがかけて行く。
「ほんで僕どうしたらええんよー。」
「」
「」
「ねえよー!」
カワサキとヤマハのバイクは走り出した。とにかく走った。後ろは振り向かない。博多ラーメンを目指して風を切る。
「おいよー!!」
走る、とにかく西へと走る。国道を走り出してもう2時間位になるだろうか。お腹が空いて来た。そこにラーメンの看板が見え、副会長がウインカーを出して入ろうと合図を送る。
「ここで食べとかんけ?」
「一楽ラーメン、うまそやん。ええよー。」
店内は家族連れが一組とトラックの運転手らしき方が数人カウンターに座っている。
「おすすめのメニューてどれですか?」
「ここは味噌ラーメンがうまいですよ!」
「えっ?」
「えっ?」
博多ラーメンと言えば豚骨というイメージがあったので少し戸惑ったが、食べてみると案外美味しかった。
「ズッズル、ズブッッズッーズー!!」
奥からとんでも無い音で麺をすする音が聞こえたので見てみると、そこには書記の姿があった。
「あっ!なんでー置いていくんなよー!タクシー使ったってよー!」
「チッ」
なぜこの店が分かったのだろう、疑問はあったがとにかく3人が揃ったことは素直に喜ばしい。「ほな俺の後ろ乗れや、飛ばすから手を離すなよ。」
副会長が灰皿にタバコを押し付け言った。
「おお!ありがとうよー。」
書記と副会長のタンデム走行は、とにかく早かった、暴れ馬が騎手を振り落とすかの如く荒々しく車と車の間をすり抜けて行く。
「あっ!危ないてよーー!ううわーー!!!」
書記の叫び声が鳴り止まないままに太宰府天満宮へ向かった。書記は生徒のための御守りをごっそりと買い込んで居た。その調子で吉野ヶ里遺跡まで一気に向かい、遺跡の中で記念撮影をし、あんまりおもんないなーと話しながら今日の夕飯を考えていた。
佐賀駅の周りは本当になにも無かった。カプセルホテルは確保したがそこから夕飯を食べる場所がなかなか見つからない。佐賀駅近くのデパートに入り、あまり綺麗とは言えない中華料理店で適当に色々頼んでビールで乾杯した。
「今日だけでも結構走ったなー。」
「ほんまよー。疲れたよー。」
「お前背中に捕まってただけやいてよ!」
「それがしんどかったんよー。」
よく見ると書記の手のひらは真っ赤に膨れ上がっていたが、見ていないことにした。
「よーし、カプセルホテルの大浴場で疲れとるかー!」
「うぃー、気持ちええ!」
「頭痒かったんよー!シャワー気持ちええよー!」
「くぉるあ!!!湯かかっとるんじゃーー!!!」
背中に鬼の姿が描かれている男は怒り狂い、書記を睨みつけた。
会長と副会長は目を合わせ、そそくさと大浴場を後にした。大量の漫画本の置いてある休憩室でビールを飲みながらカイジを読み漁った。
「う、うわーーーー!!!」
大浴場から聞き覚えのある声が聞こえたが、二人はカイジのチンチロ編を読みながら堕落してるなー俺ら、と苦笑いをしていた。
2日目はこんな感じで終わっていった。


iPhoneからの投稿