
空侍(くうじ)は役者を生業とする「自由人」だ。どの「科」、「属」にも入らない。「種」で言えば「芸」とも言える。空侍は天涯孤独、乳飲み子の時に寺門に捨てられ、その住職に育てられた。12才の時に寺を逃げ出し、旅芸人の一家に拾われ役者に目覚める。天恵の器量の良さと芸感の良さが幸いし、十代の終わりにはヤマトでは有名な役者になっていた。この人気に目を付けたEDO市立大歌舞界が莫大な金銭トレードで空侍を買い取った。空侍は大歌舞界の舞台でも偉才を放ち、その人気は頂点を極めた。
空侍は夜の顔も持つ。”夜叉烏”(ヤシャガラス)と呼ばれる義賊の長がそれである。幼き頃より鍛え上げられた身体能力は常人の範疇ではない。その体力と生まれ持てる勘の鋭さを活かし、傲慢な金持ちの家に潜入し、金品を盗み、正直で貧しい民の家に金を撒く。空侍にとってその行為は純粋に趣味の領域である。そこには感動も痛みも正義も悪もない、そこにあるのは虚無感だけだ。
昼と夜の顔を持つ空侍は己の葛藤の中、夜の闇に佇む。
つづく、、



