国際プロジェクトで本当に悩ましいのは、「モジュールが買えるかどうか」ではないことが多いです。問題になりやすいのは、同じ製品が地域差によって次々と別バージョンに分かれていくことです。バージョンが増えるほど、BOM、評価試験、認証、在庫、アフターサービスまで複雑化し、納期の見通しも立てにくくなります。

調達側が最も望む 5 つの結果

バージョン数を減らせる

SKU が減れば、見積依頼、発注、受入検査、アフター対応まで一気に楽になります。

納期が安定しやすい

バージョンが少ないほど変更が減り、生産計画や部材手配が読みやすくなります。

在庫をコントロールしやすい

共通のプラットフォーム部材を主在庫にして、地域差分は最終組立や現地倉庫でできるだけ後工程に寄せます。

コンプライアンスのやり取りが軽くなる

重複検証や手戻りを減らし、部門間の往復調整も抑えられます。

リスクを管理しやすい

欠品や緊急オーダーが発生しても、切り替えやバッファ確保がしやすくなります。

国際プロジェクトがバージョン増殖で崩れやすい理由

周波数帯の違いが連鎖的な変更を生む

周波数帯が変わると、アンテナ整合、試験条件、認証ルートまで一緒に変わることが少なくありません。

同一製品ラインに 2 つの典型シナリオが同居しがち

長距離で小容量データを安定送信したいケースと、中距離でより大きなデータを送りたいケースです。

ハード変更が入ると調達は受け身になりやすい

再見積、再日程調整、再検証が発生します。つらいのは単価よりも「読めなさ(不確実性)」です。

LoRa2021 が複雑さを“元に戻す”4 つのポイント

周波数カバレッジが広く、複数国の要件を少数の設定に集約しやすい

LoRa2021 は一般的な Sub-GHz 帯に加え、高周波帯の用途にも対応します。周波数範囲は 150–960MHz と 1500–2500MHz までカスタマイズ可能です。この考え方により、国ごとの差分をハードの型番分けではなく「設定テンプレート」に寄せやすくなります。

1 つのプラットフォームで長距離と高スループットの両方に対応

変調方式の名前を暗記する必要はありません。結論だけ押さえれば十分です。

  • LoRa は長距離・小容量・安定送信に向き、データレートは最大 125 kbps
  • FLRC は高速伝送に向き、データレートは最大 2.6 Mbps

同じハードで 2 つのニーズをカバーできれば、プロジェクト段階や市場ごとに「別のハードプラットフォーム」を増やす可能性を下げられます。

互換性とエコシステムの柔軟性が、途中での“乗り換え”リスクを下げる

LoRa2021 は既存の LoRa デバイスとの後方互換性を持ち、LoRaWAN とのシームレスな互換性も重視しています。さらに FLRC などの拡張変調に対応し、サードパーティ製スタックの統合により複数の低消費電力無線プロトコルにも対応可能です。途中で標準や要件が変わっても、全面的な設計見直しや再購入になりにくくなります。

低消費電力と材料コンプライアンスが、共通設計の実行性を高める

スリープ電流 ≤ 2 µA は、電池・電源戦略の共通化に役立ち、地域ごとの電池寿命要件による基板改修や手戻りを減らします。無鉛プロセスで RoHS / REACH に準拠している点も、受入検査や部門間調整をスムーズにします。

また、ドキュメントには Sub-GHz の見通し環境で 5,000m 以上 の伝送距離という記載もありますが、実際の到達距離はアンテナ、送信出力、環境、設置高さの影響を受けます。したがって、これは参考目安として捉えるのが適切で、保証値として扱うべきではありません。

実地での検証と一貫支援で、納品の安心感を高める

仕様の簡素化だけでなく、供給面の安心感は「現場での耐性テスト」や「支援体制の充実」からも生まれます。

重要シーンでの“高負荷テスト”に耐える

国際プロジェクトが最も恐れるのは現地トラブルです。G-NiceRF の技術は、多くの大規模プロジェクトで実績があります。

  • 高同時接続・即時応答の実績2015 年 湖南衛視「全員加速中」などの大規模・複雑シーン、2019 年 武漢世界軍人運動会の現場
  • 高信頼性・耐干渉の実績2016 年・2018 年 CCTV 春節聯歓晩会(ロボット通信支援)、2021 年 建党 100 周年記念行事の現場通信支援
  • 長期・工業用途での量産配備2024 年までに、国家電網の全二重音声モジュールで量産配備

“隠れた統合作業”を減らす一貫支援

モジュールを買ったあとに周辺部品や仕組みをかき集める負担を減らすため、G-NiceRF はモジュールだけでなく技術支援・ソリューションも提供します。

  • ハード面の周辺提供:スマートアンテナなど、周辺製品で RF 整合の手間を軽減
  • ソフト面の付加価値:マルチホップMESH と OTA(Over-the-Air)アップデートに対応し、構築・保守の難しさを抑える
  • 高度なカスタマイズODM/OEM により、製品販売から「通信機能一式」の提供へ

すぐに実行しやすい 3 つの調達運用

国別ではなく地域グループで管理する

各グループで管理するのは 3 点だけ。周波数・出力制限、認証・ラベル要件、納品・アフター要件。

仕様書は固定項目を固め、差分は別枠で管理する

固定項目:電源、インターフェース、パッケージ、温度範囲、バージョン戦略の境界。

差分項目:地域設定、出力ティア、アンテナ方針、設定ファイル命名規則。

在庫は共通プラットフォーム部材を主にし、地域差分は後工程へ

国別の完成品在庫を避け、差分は最終組立や現地倉庫へ寄せて過剰在庫・滞留在庫を減らします。

調達と開発を揃えるために確認したい 8 つの質問

  • 対象地域はどこか
  • どの差分がハード差分として必須か
  • どの差分が設定で解決できるか
  • 2〜3 種類の設定テンプレートに集約できるか
  • 認証・ラベルはバージョン分けが必要か
  • 量産受入は同一の試験フローを流用できるか
  • 欠品時の代替・バッファ戦略はあるか
  • 新しい国を追加するとハード変更が必要か

よくある質問(FAQ)

LoRa2021 は 1 つのハードで複数国・地域の周波数帯をカバーできるか

可能です。LoRa2021 は 433/470/868/915MHz などの Sub-GHz 帯に対応し、より広い周波数範囲にも対応できます。実務では、ハード本体は共通のまま、周波数・出力設定と、必要に応じたアンテナ整合で地域差分を吸収することが一般的です。

LoRa2021 はデュアルバンドか

はい。Sub-GHz と 2.4GHz の両方の用途に対応するため、「地域によって周波数帯が違う」国際案件に向いています。

LoRa と FLRC の選び方は

長距離で小容量を安定送信するなら LoRa。より大きなデータ(大きめのログや画像断片など)を高速に送りたいなら FLRC。目安として、LoRa は最大 125 kbpsFLRC は最大 2.6 Mbps です。

長距離と“大きめデータ”の両方が必要だと、ハードを 2 系統に分ける必要があるか

多くの場合は不要です。同一ハードで設定プロファイルを切り替える運用が一般的です。長距離は LoRa、距離が近い/高スループットが必要な場面では FLRC に切り替えることで、「1 プラットフォーム 2 モード」として運用できます。

送信出力は調整できるか 国ごとの出力制限はどう扱うか

調整できます。LoRa2021 の送信出力は最大 22 dBm まで設定可能です。国ごとの制限は、ハード差分にせず地域別の設定テンプレートとして管理し、量産時に地域プロファイルを焼き込み/配信する運用が一般的です。

電池駆動に向いているか

スリープ電流が ≤ 2 µA まで下げられるため、長待機設計に向きます。実際の電池寿命は「送信周期+受信時間+送信時間」の組み合わせで決まるため、実際の動作サイクルで試算するのが確実です。

電源電圧と動作温度範囲は

電源電圧は 1.8–3.6 V、動作温度は -40〜85℃。多くの産業用途・屋外用途の基本要件をカバーします。

参考リンクと選定の入口

同種製品の全体像を先に把握してから比較したい場合は、まず lora module

要求を“実行できる選定ルール”に落とし込みたい場合は How to Choose the Right LoRa Module

理論スペックだけでは物足りず、実地の通信距離テストやパケット到達率(PDR)の比較データ(LoRa vs FLRC)を確認したい場合は、こちらのテストレポートのほうが説得力があります。LoRa2021 Module Range and PDR Field Test (FLRC vs LoRa) - LR202

SX1276/SX1262 または LR1121 から LR2021 へのアップグレードを検討していて、具体的な違いと移行作業量を把握したい場合は、こちらの技術比較ガイドが参考になります。Comparison and Upgrade Guide for Semtech SX1276 SX1262 LR1121 LR202

 

まとめ

LoRa2021 の価値は通信性能だけではありません。国際プロジェクト向けの「共通プラットフォーム」という考え方により、バージョンを減らし、在庫を軽くし、納期を安定させ、リスクをより管理しやすくします。