こんにちは‼︎
ヴォーカリスト兼ボイストレナーのKです。
今回のテーマは融声、つまりミックスボイスに
ついてのお話です。
情報が溢れている昨今、一言にミックスボイス
と行っても各々によってそれぞれ解釈は異なり
ますしこれは当然、プロの界隈でも明確な定義
付けがされているわけでもありません。
そこでこの記事ではミックスボイスメソッドの
起源となった数百年前のベルカント時代の融声
について考察します。
ま、小難しい事言わず簡単に言うと色々情報が
多すぎて迷ったのでしたら初心に返って原点か
ら学び直しましょ。
ってお話(笑)
とりあえず最近のミックスボイス事情ってとて
も複雑化してましてですね・・・
やれ、地声ミックスだの、裏声ミックスだの、
ベルティングボイスだの、ミドルボイスだの
・・・云々。。。
さらに細分化していくとご紹介しきれないくら
い数多くのミックスボイスが存在するでしょう
このようにミックスボイスは非常に多様化して
ます。
地声と裏声のミックスされた声がミックスボイ
スと呼ばれているのですからその力配分を変え
てやれば確かに先述したような融合状態の声は
全部ミックスボイスと言えます。
では大昔のミックスボイスに対する考え方って
どうだったんでしょうかね?
こんなに沢山の考え方や用語が存在したのでし
ょうか??
今回はこの辺りに焦点を当てていきます。
ご興味ある方はこの先もお読みください。
では早速本題です‼︎
先に結論から申しますね。
注意点として・・
数百年前であっても声楽の流派は沢山ありまし
た。
ですが少なくとも地声と裏声を融合させてその
両方の性質を併せ持つ広い音域の声を習得する
メソッドで数多くの超人的な歌手を育成してき
たベルカント唱法において融声と言われる声は
。。。
一種類しかございません‼︎
これですね。
失敗例として幾つかの不健全かつ歪な融合パタ
ーンは紹介されていますがもっとも理想的かつ
健全な融合状態は一つだけです。
以下、リード先生の著書「ベルカント唱法」か
らの引用ですが全ての発声パターンは以下のい
ずれかのカテゴリ分けが可能です。
1.地声と裏声の声区が十分に発達し、滑らかに
結びついていて完全な対等関係にある状態。
2.地声と裏声が、聴いてわかるギャップを持ち
ながらともに使われている。理想的ではないが
まず良好なじ状態。
3.裏声のみ使われていて、地声が完全に除外さ
れている。あまり好ましくない融合状態。
4.地声のみ使われていて裏声が除外されている
上記の3同様に好ましくない融合状態。
5.地声と裏声が未発達状態ながら最初から結び
ついていて見掛け上は融合しているように聴こ
えてくるもっとも好ましくない状態。
少し脚色していますが概ね間違いではないと思
います。
以前にもご紹介しましたかね。
正解はもちろん「1」のみです。
はて?
この5つの発声状態を改めて見ると現在ミック
スボイスの一種と呼ばれている数多くの声もい
ずれかにカテゴライズされてることに気づきま
せんでしょうか??
となると近代のミックスボイスと呼ばれてる声
はそのほとんどが不完全な融合状態といえます。
地声ミックスとか裏声ミックスとかは声区融合
の失敗パターンの典型です(笑)
ベルティングボイスについては論外。
歌手寿命を縮めるだけの諸刃の刃ですので教え
てる側も教わってる側も即刻止めるべきとすら
個人的には思います。
では上記の「1」の状態の声ってどんな発声な
のでしょうか?
この状態を解明していくに当たって避けて通れ
ないのがベルカント唱法において「ヴォーチェ
・ディ・フィンティ」あるいは「メッツォ・フ
ァルソ」と呼ばれている声です。
直訳するとヴォーチェ・ディ・フィンティは
「偽りの声」
メッツォ・ファルソは
「中くらいのファルセット」となります。
とは言え、リード先生の原書でも下記のように
言及されてます。
「ヴォーチェ・ディ・フィンティ重要性を理解
するには、この発声上の工夫が廃れてからかな
り時が経過している現在、少し難しいかもしれ
ません」
1987年にこの本が販売された当時ですでにこの
ように話されてます。
で、その続きも転載します。
「実際にはヴォーチェ・ディ・フィンティとい
うのはファルセットから派生したものに他なら
ず、ファルセット声区の音に、幾分「鋭い」音
質を持たせるよう調整された声です」
ここがとても重要‼︎
ヘッドボイスではなくファルセットに幾分
「鋭さ」を加味した音声であること。
「鋭さ」=「音の硬さ」と解釈するのが妥当
でしょう。
ここからはフースラー先生のアンザッツも使っ
て考察します。
人間の持つ人体の共鳴器官の中で母音に鋭さ、
硬さを出せるアンザッツは一つしかありません
。
それがアンザッツ「1」
いわゆる上下の前歯を共鳴させる声です。
それに対してファルセットは主にアンザッツ
「5」が共鳴します。
ヘッドボイスであれば「4」でしょうか
。
で、次は各々のアンザッツに声を当てた時、声
帯周辺の筋肉群である口頭懸垂機構の動きも見
て見ますね。
ファルセットの発声によるアンザッツ「5」
を鳴らす際、もっとも積極的に使われるのは
「a」の甲状舌骨筋です。
ヘッドボイスのアンザッツ「4」で積極的に
使われるのが「b」「c」の口蓋咽頭筋、茎状
咽頭筋。そして意外にも「d」の胸骨甲状筋
も動きます。
この状態の発声時には「a」の甲状舌骨筋に
よる甲状軟骨の引き上げが抑制されます。
その影響で声帯上方の空間が広がり軟口蓋の
影響を受けず鼻腔へも音が抜けていきます。
↑
こことても重要‼︎
ただし、ファルセットもヘッドボイスも低音
域(mid2Fより下の音域)では一気に声量が
減退しその力を急速に失います。
最後はアンザッツ「1」です。
このアンザッツでは「a」の甲状舌骨筋が最
大限に働きます。
いわゆる「ハイラリ」の発声がこれです。
一般的にはこの発声時には軟口蓋も引き上げ
られ鼻腔への音の導線を閉ざすため鼻腔の音
抜けはほぼゼロになります。
その反面、音質は非常に硬くなり人間の出せ
る限りでもっとも硬質で鋭い音質の母音を練
り出せます。
この声は地声で再現しやすいので喚声点まで
は音質を変えず無理なく登り下りが可能です
。
喚声点(mid2F)までは・・・ですけど。
さて、ここまでそれぞれのアンザッツの発声
時における咽頭懸垂機構の筋肉群の動きも解
説しました。
話が前後して申し訳ありませんがリード先生
の仰ったヴォーチェ・ディ・フィンティの特
徴をもう一度思い返してみましょう。
「実際にはヴォーチェ・ディ・フィンティとい
うのはファルセットから派生したものに他なら
ず、ファルセット声区の音に、幾分「鋭い」音
質を持たせるよう調整された声です」
ファルセット声区に幾分鋭さを持たるよう調整
された声。
僕も僕の歌のお師匠さんもこのヴォーチェ・デ
ィ・フィンティという声については10年単位で
研究してきました。
察するにこのヴォーチェ・ディ・フィンティと
いう声はアンザッツ「5」とアンザッツ「1」
の合わせ技と言えるでしょう。
なあんだ、アンザッツ「1」とアンザッツ「5」
を共振させれば良いのか。
短絡的に考えると確かにそうです。
アンザッツ「5」とアンザッツ「1」を共振状
態に持って行ければ良いのです。
ところがこの共振状態の発声を邪魔するやつが
いる分けです。
ここで厄介な存在が軟口蓋の存在です。
実際にはアンザッツ「5」とアンザッツ「1」
の発声は口腔内の広がり具合が大きく異なりま
す。
アンザッツ「1」は軟口蓋で鼻腔への道筋を閉
鎖し口腔内の共鳴に依存します。
アンザッツ「5」は鼻腔の共鳴に大きく依存し
ます。
これどうやって共振させるんよ??
無理ゲーじゃね・・・
こう考えちゃいますよね。
ではここで改めてアンザッツをもう一度みてく
ださい。
アンザッツ「1」とアンザッツ「5」の間に
アンザッツ「3a」「3b」がいるのがわかる
と思います。
ここがキーポイント。
つまりアンザッツ「5」と「1」だけでなく
アンザッツ「5」「3a」「3b」「1」を
ぜーーーんぶ共振させちゃえば良いんです。
これが僕が前々からこのブログでもお伝えし
てる顔面の共鳴です。
ですけどこの4っつのアンザッツを共振状態
に持って行くには声帯上方の空間を広げて軟
口蓋の影響を受けず鼻腔にもしっかり音が抜
けて行くように保持してやる必要があります
。
ここでうなじ側にある
口蓋咽頭筋、茎状咽頭筋。輪状咽頭筋
この三つの筋肉群が活躍します。
ヘッドボイスで歌ってしまってはロック、ヘ
ヴィメタルの曲想に合いませんけど声帯上方
の空間を広げてやるためにはこのうなじ側の
筋肉群の働きが不可欠です。
イメージとしては・・・
歌い出す前の発声フォームとしてはうなじ側
に声帯を引っ張りつつも実際の歌い出しは顔
面前方の空間を鳴らしにいく感覚。
これで咽頭懸垂機構にある筋肉群に前後上下
の引っ張り合いが起こります。
ここについてはフースラー先生も言及してま
す。
「優れた歌手ならば誰しも、特に最も良い状
態で高音を出すときに軟口蓋から口蓋弓にか
けて強い緊張感が起きるのを知っている。
またそのとき同時に咽頭が強く下方向に引っ
張られる状態も体感している」
これこそが引き上げ筋と引き下げ筋とで行わ
れる対抗的な働きなのである。
引用ここまで。
これですよ。
これがヴォーチェ・ディ・フィンティの正体
。
さらにさらに‼︎
ヴォーチェ・ディ・フィンティは近代のミッ
クスボイスと比較してあり得ないくらいの音
域をカバーしてます。
昨今、ミックスボイスと呼ばれてる声は地声
(チェストボイス)と裏声(ヘッドボイス)
を繋ぐための音域、約半オクターブほどの音
域をカバーしてる声と認識されてる方がほと
んどでしょう。
ですがヴォーチェ・ディ・フィンティは地声
音域にも裏声音域にも大きく張り出してます。
mid2AからhiFとほぼ2オクターブ近くありま
す。
現代のボイトレでミックスボイス(ミドルボイ
ス)と呼ばれる声はmid2EからhiBくらいまで
の音域の声と思われてる方がほとんどでしょう
声区についての考え方や認識も現代と過去では
大きく異なります。
文字通り地声と裏声が滑らかに結びつき低音か
ら高音まで完全にコーディネートされ地声とも
裏声とも違う第三の声種として融合した状態が
本来のミックスボイスと認識されてました。
ここからは僕の個人的見解です。
昨今、歌の先生やボイストレーナーさんがよく
仰る
「これがミックスボイスです。」
と言われる声よりもベルカント当時の理想的
な融声(ヴォーチェ・ディ・フィンティ)は
もう一段階、母音に硬さ鋭さが加わった声だ
と感じます。
音源としては多くありませんが現代にも残っ
ているベルカント直系のテノール歌手の歌声
の母音からは超音波に近いような「キーン」
とした音色を帯びてるんです。
軽く耳鳴りがするような音ですね。
ご紹介しておくと
エンリコ・カルーソー
ベニアミノ・ジーリ
ティート・スキーパ
これはカルーソー
これはジーリ
これはスキーパ
このほかにもベルカント直系の最終継承者とし
て
ルチアーノ・パヴァロッティ
プラシド・ドミンゴ
ホセ・カレーラス
という、過去の3大テノールもいますね。
僕のお師匠さんに言わせると彼らを最後に純粋
なベルカントの直系は途絶えてしまったそうで
す。
ポピュラーミュージックの世界でしたら・・・
やはりエディットピアフが有名ではないかなと。
彼女の声は天然のヴォーチェ・ディ・フィンテ
ィです。
日本の歌手でしたらやはり和製ピアフと呼ばれ
た美空ひばりさんですかね
日本の歌手ならロックポップスよりも演歌歌手
のがこのヴォーチェ・ディ・フィンティに近い
発声の人が多い印象
ちなみに海外のロックヘヴィメタルのシンガ
ーも抜群に上手い歌手はこの声に近い人が多
いです。
すぐ思いつくのはマイケルジャクソンとか
ですかね。
英語圏の一流の歌手に共通するのは前歯の共鳴
を中心に鼻腔も共振させて必要以上に体全体に
共鳴を広げない。
狭く鋭く硬い母音をマイクに突き刺すようにし
て声を練り出すこと。
ヘヴィメタルを歌う際もこれが基本になると思
います。
では今回は以上です。
お読みいただきありがとうございました。






