毎日が退屈だ。仕事に出て、帰宅して、適当に子供の面倒を見て、寝て、また仕事に行く。週末も家族中心の生活になりつつある。まだ小さい子供がいる父親なので、それもまた仕方がないことなのだが、私が10代の頃思い描いていた30代とは全く違う。というか、こうはなりたくなかった30代の生活を突っ走っている。子供がいるとこうも自由がきかない生活になるとは。。今こそ私は叫びたい。ちょっと酒飲んで気が大きくなって、気持ちよくなっちゃっても、出す前にもう一度考えろ!!とはいえ、子供が可愛いのは紛れもない事実。この辺がなんだか難しい1/3の純情な感情。
こうも家族中心の生活になると、確実に老け込む。家で過ごす事も多いし、家族を連れて行くところといえば、ファミリー向け施設ばかり。生活は朝方になり、夜は早く寝る。何より決定的な違いは、ノリノリ(死語なのか?)な気分が極端に少ない。私が若い頃は、ほぼ毎日ノリノリだった。そして、私の友人たちもノリノリだった。
先日、高校時代の友人Aと久々に会った。Aも2歳の娘がいて、もうすぐ第2子が誕生予定。彼は、数いる高校友人の中でもトップクラスのノリノリ男で、若い頃はいろいろと笑わせてくれた。今では、マイホームを購入し、私同様家族中心生活を送っている。案の定、話をしていても全くおもしろくない。なんというか、パワーがない。これもやはり老いなのだろう。Aの実家はエリート農家で、家は立派な日本建築で豪邸。Aの部屋は1階の陽の当たらない角部屋で、玄関を通らなくても、後ろから回れば勝手に入れる部屋だった。親に挨拶もせずに部屋に侵入できたので、我々の最高の溜まり場となった。高校時代、テスト期間中に集まり、夜遅くまで麻雀をしていると、Aのおかんが乱入してきて『はんにゃら~ほんにゃら~もーーっつつう』って叫びながら、卓をひっくり返し、Aの頭をポカポカ殴り出した。私達は怖くなって足早に退散したのだが、あの時は怖かった。
高校卒業後のとある日には、友人DとHと3人でAの部屋に遊びに行った。この日もいつも同様アポなしで突撃したのだが、あいにくAは不在だった。不在でも部屋の窓は鍵がかかってないので、そこはもちろん上がりこんでAを待つことにする。プレステとか適当にやりながら暇を潰していたのだが、Aは帰ってこない。我々は部屋を物色し、暇つぶしアイテムを探す。すると、なんだかとてもいやらしそうなビデオが出てきた。エロビデオはみんなで共有するように貸し借りが行われていたのだが、このビデオは見たことなかった。すかさず変態Dが再生し、我々3人はコタツに入り、上映会が始まった。隣がおばあちゃんの部屋だったので、おばあちゃんが興奮しないようボリュームをしぼり、しばらくはおとなしく鑑賞していたのだが、このビデオがなかなかの良作で、変態Hがなんだがモゾモゾしだした。Hは『とりあえず、電気消そうぜ』と言い出した。私は困ったな。このシチュエーションの3Pはきついな。と思ったのだが、変態2人は完全に戦闘モードに入った。各々寝転がりながら、ことに及び、伝説の早漏と評判のDが『ヤバイ、ティッシュがない』と言い出した。私はすかさず、これ使え。と近くにあった新聞折込チラシを破り、Dに渡した。チラシは1枚しかなく、さらに2等分してHにも渡した。私は一人じゃないと集中力を発揮できないタイプなので、完全に2人に遅れをとった。2人の集中力、パワーに圧倒されつつ、鑑賞会は終了し、電気をつけた。2人のすがすがしい顔はとても可愛かった。それから、15分後くらいにAが帰ってきた。帰ってくるなり、何かに気づいたAは『おい!おまえら今何やってたんだよー』と大声で我々に言った。適当にはぐらかしていたのだが、エロビデオが散らかった現状や、ゴミ箱を確認して、『おい、ふざけんなよー』とキレ出した。我々3人は下を向いて笑いをこらえつつ、謝ろうと思っていた矢先、Aが『ここの会社面接受けようと思ったのにー』と言い出し、すかさず我々は『そこー!?キレる所そこー!?』と突っ込んだ。2人が爆弾処理に使用したチラシはAが来週面接に行こうとしていた求人広告だったらしく、ゴミ箱から取り出したそれはくちゃくちゃに丸められ、ベタベタした感じの無残なモノになっていた。かすかに見えた赤いマジックのマークの跡は我々に涙を誘った。我々はこの会社は縁がないからやめとけ。とAを説得し、なぜかAも納得した。みんながアホだ。
ちなみにAは卒業後進学した専門学校を2ヶ月で辞め、この日は工事現場の旗振りバイトをしてきたらしい。
こんな若き日の思い出は、やはりノリノリなゆえに起こりえる事だろう。アホな思い出は数え切れないほどある。いかに当時の友達がアホで変態だったか。そんな彼らも今では立派な大人になり、私同様、昔を懐かしむ生活を送っているのである。ただ、学校に雑誌「薔薇族」を持参し、元サッカー日本代表北沢豪の事を『キーちゃん』と呼んで愛し、彼がグンゼのCMに出てからグンゼのブリーフを愛用し、部屋に遊びに行くとピンクローターが転がっていて、ある日はコタツから2本足が出ていたので、誰かいるのか?と聞くと、『あー、友達だよ。』といい、コタツからダッチワイフが出てきた衝撃的な変態Sが何をしてるのかが気になる。ヤツとは全く音信不通だ。