先般厚生労働省から発表があり、このブログでも以前取り上げたことのある「初診日の特例」について、時限措置(といいつつ昭和60年に導入されて以降、何度も延長が繰り返されて、40年近くも経過した現在に至っているわけですが・・・)の延長の方針が固まったようです。

 

もう一度おさらいしておくと、以下のようになります。

 

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること

 

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

 

上記のうち(1)が原則で、特例である(2)の方は今回延長されなければ令和8年3月末でなくなってしまうところでした。

 

年金部会の会合では「適正に保険料を納めている人(原則である(1)の要件を満たしている人)との不公平を生ずる恐れがあるのではないか」と延長に対する慎重な意見もあったようですが、最終的には「事故の多くは突発的なものでコントロールしがたい」などとして、賛成多数に至った模様です。

 

相談者の方の中には原則では要件を満たしていなくて、特例で救済される方も一定数いらっしゃることから、今回延長の方針が固まったことについては、こころの病の障害年金をサポートしている社会保険労務士の立場で言えば、歓迎するところです。

 

この会合における議論の言葉を借りるならば、こころの病も「突発的」に起こり得るものと言えます。

 

一方で、この特例による救済措置で十分かと言えば、実はそうではないとも思っています。

 

最も分かりやすい例として挙げられるのが、20歳になったばかりの学生です。

 

納付書が届いてすぐに納付するか、学生納付特例を申請しておけば何ら問題がないのですが、「そのうち納付(または免除の申請)をすればいい」と放置してしまうと、あっという間に2~3ヵ月、そして半年と時間が経ってしまいます。

 

この期間というのは分母(20歳から初診日の前々月までの期間)が小さい分、僅かな未納が大きな痛手となってしまうケースがあるのです。

 

この未納の間に初診日が入ってしまうとどうなるかというと、あえて酷な言い方をすれば「どうにもならない」ということになります。

 

その後症状が治まって就職し、何ら支障なく一定期間を経過したあとに再発した際に社会的治癒を主張する方法や、役所の不手際なのか、そもそも保険料の納付書が届いていなかったため保険料を払いたくとも払えなかった方が裁判を起こし勝訴したといった事例もあるのですが、これらは極めて例外的なものであると考えるべきでしょう。

 

そう、20歳になったばかりの方が自身の年金に関心を持たないまま、何となく病院にかかるというのは、障害年金の制度を理解していれば「とてもリスクのあること」と考えられるのですが、一般の方々にはそこまでの対応を求める方に無理があるのかもしれません。

 

そうした状況を単に「自己責任」で片づけてしまってよいものなのかと、いつも感じています。

 

たった一人の社労士としてできることには限界があることは承知の上ですが、これからも保険料の納付や、納付が難しいようであれば学生納付特例や申請免除(猶予)の手続きをすることの重要性を発信していきたいと考えています。

 

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こころの障害年金サポートテラス

社会保険労務士 荻島 真二

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