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『タイタンの戦い』は大義なき戦い。『ブレイブ・ハート』を見習え!


早大生のポイント映画感想文-タイタンの戦い


『タイタンの戦い』は古今稀に観るつまんなさでした!


ストーリーは、

「人間界に災害ばかりを巻き起こす神々にしびれをきらした人間が宣戦布告をし、人間たちと神々の戦いが始まる」というもの。


神と人間のあいの子・ペルセウス 役にはサム・ワーシントン。『アバター』に主演し一躍スターダムに躍り出たワーシントン君ですが、すっかり3D俳優としておなじみになりましたね。


どうしてタイタンはこんなにつまんなかったのか? 答えは無限にあると思いますが、おそらくこれが大きいと思います。




→ ペルセウスの戦う理由が伝わらないから、感情移入ができない。


面白い戦争映画というものには、必ず戦う理由が明確に存在するものです。

『タイタンの戦い』は、その理由が明確に提示されておらず、CG技術&3D技術でお茶を濁しています。



一応、作中にはペルセウスが神々に戦いを挑む理由が軽くは表現されています。「育ての親が神々に殺された恨み」がかろうじて汲み取れるペルセウスなりの大義名分でしょう。


しかし、育ての親は登場してものの5分で死にます。


これでは、どんなに「殺された両親のために戦う!」と言われても説得力ゼロです。感情移入が全くできません。



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話は変わりますが、メル・ギブソン監督&主演の『ブレイブ・ハート』は戦争の大義名分という部分を見事に描き切っています。『タイタンの戦い』は見習え!


スコットランド独立戦争を描いた本作ですが、主人公のウィリアム・ウォレス が圧倒的な軍事力を誇るイングランドを敵に回すに至ったかが丁寧かつ残虐に描かれています。


幼少期は父がイングランド軍に敗れて殺され、大人になってからもイングランド軍が故郷に街を荒らされまくり、ついにはイングランド兵に最愛の妻を目の前で虐殺されます。


つまり、イングランドを徹底的に悪者に描くことでスコットランド独立戦争の大義名分を映画の中できちんと形づくったわけですね。


こうなりゃ観てる側も、スコットランドに肩入れし、イングランドが負けることがカタルシスとなります。


ナチ映画で、ナチが負けるたびにスカッとなる構図ですね。



やはり、主人公に感情移入するという意味で、戦う者には戦う理由がなくてはならないというのが今日のまとめです。

『スター・ウォーズ』はエピソード2に限る

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最近になって『スター・ウォーズ』シリーズを製作年代順に一気観しましたが、やっぱりエピソード2(5作目)が一番おもしろかったです。


後のダースベイダーことアナキンが大人になる今作ですが、大人アナキン役のヘイデン・クリンセンがゴールデンラズベリー賞・最低助演男優賞を獲るなど(ちなみに最低脚本賞も受賞しているよ)SWシリーズ屈指の汚名を浴びています。


それでも、かくも僕の心を掴んで離さなかったエピソード2……


なにゆえこんなに面白いかはこれしかありません。




→ ジェダイがいっぱい出てきて戦う


製作年代順にSWを観ると案外「ジェダイ=選ばれし戦士」的なイメージがある人は多いのではないでしょうか!?


じっさい「エピソード4→5→6→1」と観ていくとライトセーバーをぶんぶん振り回すたくましいジェダイは3人しか出てきません。それもそのはず、エピソード4~6では「オーダー66」というジェダイ虐殺があったために、ジェダイはルーク・スカイウォーカー&オビ・ワン&ヨーダしかいなかったのです。


しかし、エピソード2では「ジェダイ=選ばれし戦士」という思い込みが一気に瓦解します。


ジェダイが50ジェダイくらい出てきて戦うのです。

(人間族じゃないジェダイも出てくるので50人ではなく50ジェダイとしました)


特に、一つの画面に50本のライトセーバーがぶおんぶおんとうなるシーンは圧巻の一言!!


さらにエピソード2の見どころは「ジェダイが有象無象の敵キャラにあっけなく殺される」ところ。50ジェダイもいればそりゃ弱いジェダイもいるのも考えてみれば当たり前ですわな。




このように『スター・ウォーズ エピソード2』は、改めてシリーズの世界観というか大河ドラマ観を再認識できるという点で最高に面白いと思います。



『息もできない』は2010年観たなかの最高傑作






いままでは『アバター』が1位だったのですが、韓国のバイオレンス映画『息もできない』を1位に勝手にしました。これはもう5000円払っても観るべき映画です。

『アバター』は初見はTOHOシネマズ六本木、2回目はシネマサンシャイン池袋と2度見たのですが、3Dはスクリーンの大きさがすべてだという結論に至りました。IMAXとかの形式以前に、結局はデカさだろうと。サンシャインのしょぼさったらありゃしませんでした…

さて、『息もできない』はヤン・イクチュンという人が一人で監督やら主演やら製作やらを塚本晋也ばりに様々こなして作った力作です。

ストーリはというと、深刻な家庭問題を抱え常に暴力と隣り合わせで生きる男女、借金取り立て屋のサンフンと女子高生ヨニが、ひょんなことから出逢い心を通わせていく(性的な意味は一切ないよ)というものです。

なぜ『息もできない』がこんなにも良かったのかはこれだと思います。



→ 観客だけが知る2人の闇

取り立て屋のサンフンと女子高生ヨニには共通するのは、現在進行形の家庭問題と暴力にまみれた生活です。

(サンフンは、母と妹を死なせ刑務所に行っていた父と暮らしています。職業は、殴るや蹴るの借金取り立てやです。ヨニは、ベトナム戦争で完全に精神を病んだ父と金をせびり続けるダメな弟と暮らしています。母親は殺されていません。)

話の流れとしては2人の交流がメインで、サイドストーリー的にサンフンとヨニのそれぞれの家庭問題とそれぞれの生活も映し出され、サイドストーリーを通じて観客は2人の家族について知ります。

そして、ここがこの映画のすごいところなんですが、2人はそれぞれの家庭問題と暴力まみれの生活についてお互いに一切しゃべりません。それなのにも関わらず、2人でいるときだけ共感のような感情を以って接し、笑顔を見せ涙を流すのです。お互いに深い闇を抱えているのを知っているのは唯一私たち観客だけなのです。

2人が心を通わせ合えるようになった要因は、お互いが無意識的な直感で共通項(暴力)を見抜いたからなのでしょうか!?

いずれにしても、

①2人の関係はとてつもなく深く、そして特殊なもの(形容しがたい!)
②唯一心を許す相手にすら言えないほど、2人の家庭問題は彼らにとって深刻なもの


ということがひしひし伝わりました。


私たち観客は、2人の闇を知りつつ、互いにそのことを知らずに打ちとけあっていく2人の暴力まみれの人生を観賞するわけです……。



この映画に映し出される家族と暴力は、ヤン・イクチュン監督曰く、決して映画の中だけのことでは無いとのことです。現実におこっている韓国の闇の側面とのことです。だから観客は、スクリーンに映し出される圧倒的暴力に眼をそらしてはいけないと思うんです

『第9地区』の決定的な突っ込みどころを考える


キャスト無名、監督無名なのに、いきなり作品賞含むオスカー4部門ノミネート、さらに大ヒットで話題の第9地区。


どうやら監督のニール・ブロムカンプは指輪物語のピーター・ジャクソンの弟子みたいです。彼は南アのヨハネスブルク出身で、第9地区の舞台もヨハネスブルクです。


さて、28年前に突如現れ隔離された宇宙人と人間との抗争を描いた今作は、舞台が南アということもあって巷じゃ「SFアパルトヘイト映画」なんて言われて絶賛されまくっていますが、少し引っかかる点もありました。



その引っかかった点はこれです。




→ 人間とエイリアンが普通に英語で会話しとる


『第9地区』では人間は英語、エイリアンは観客には全く聞き取れない極端にモゴモゴした英語らしき言語をしゃべります。そのためエイリアンの台詞には日本語字幕に加え英語字幕が入ります。


なんていうかインコよりも英語の発音が悪いです。


それなのにも関わらず、彼らは普通にコミュニケーションをとります。


たとえば『アバター』ではこの「異星人間コミュニケーション問題」を、ナヴィ族に英語を教育したとか、人間がナヴィ語を習得するとかでクリアしてますが、『第9地区』では一切そのような説明がありません。


観客側は知らない映画の裏設定で、エイリアンがやってきてからの28年の間でこの問題をクリアしたのかもしれませんが、観ていて気になって仕方ありませんでした。


そこで、

①人間の英語の発音はクリア

人間は翻訳的な機械を装着していない

という映画的事実と

③エイリアンは28年の間で英語はある程度習得した

という僕の推測を併せて考えるに


人間の耳がエイリアン英語に慣れたとしか考えられません。少し無理がある気が…





あんまり細かいこと考えてると映画を気軽に楽しめなくなるのは重々承知なのだけれども…


『てぃだかんかん』のつまんなさの根源



『てぃだかんかん』という意味不明なタイトルも、映画のポスターを見れば「沖縄の方言か」とすぐ察しがつきますね。

作中の台詞をたよりに推測するに快晴の空という意味のようなのですが、今作のストーリーはというとサンゴの養殖に命を捧げる男が、家族の支えを受けて困難を乗り越えていくストーリー。


つまり、海の話であって、てぃだかんかん(快晴)というタイトルは明らかにストーリーと乖離していますね。きっと「なんかキャッチーじゃね!?」という軽いノリで決められたんでしょう。


さて、本作の中身はというと、たまたまテレビをつけて2時間ドラマでやってたら、ちょっと面白いもの見れたなと思うレベルです。つまり、1800円も払って観る価値は限りなくゼロでした。


なんでこんなに面白くなかったのかは以下の一点に集約されると思います。





→ サンゴのこととか、もうどうでもよくなってる中盤


「サンゴの養殖は世界でも前例がないことだ!」と謳っているわりには、

「そもそもサンゴってどんな生物なの?」という本質的なことがほとんど説明されない。


養殖を成功させるためにはどんな処置をサンゴに施せばいいかなど、主人公が試行錯誤する描写が皆無に近いです。


ひたすら、岡村隆が金策や行政上の問題に直面し、そのたびに妻役の松雪泰子に励まされるの繰り返し。


つまり、この映画におけるサンゴの養殖の困難さの描き方は、

【金銭・行政などの制度的問題>>>>サンゴの生態的問題】

として描かれているわけですね。


金と行政の力で解決できることを解決したところで、

世界的偉業を成し遂げたと言われても、しっくりはこねぇよ……。




その他にも


・お粗末すぎる子役の演技

・芸人主演の吉本資本なのに、笑いの要素ゼロ

長澤まさみの謎のカメオ出演

・古臭すぎる感動演出


など、つまんない要素盛りだくさんの映画でしたが、それでも唯一良かったのは

渡部篤郎のナイスキャラっぷりです。


琉球国際大学のオタク海洋学者役でしたが、妙にはまっていました。


最近は『コトバのない冬』で監督デビューも果たしたアツロウ。稀代の映画馬鹿としての彼の今後の活躍がものすんごく楽しみです。


なので最後に、僕の大好きなアツロウ映画をのっけときます。

『静かな生活』では大江健三郎の原作で、アツロウは障害を抱えているものの音楽の才能あふれる青年を圧倒的心理描写で演じています。

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