八ヶ月半かかった。
書き始めた当初は、そこまで長くなるとは思っていなかった。
想定外の長丁場だった。
もうやめようかな……。
途中でそう思い悩むこともあった。
あと何話か書けば最終話、そんな終盤を迎えたある日。
僕は手が完全に止まってしまった。
一文字も書けなくなってしまった。
何も思い浮かばない。
一時間。
二時間。
パソコンと睨めっこしたまま、時間だけが過ぎていく。
こんなことをしていて、何になるのか。
三時間。
四時間。
やっと字が進み始めて、書き終えたのは四時間半が経過したときだった。
僕は一体何をしているんだろう。
意味のないことに時間を費やしてしまった気がする。
好きでやっていることなのに、こんなのバカげてる。
そんな暗い気持ちで落ち込んでいても、日々の生活は続く。
もうこんな時間だ、買い物に行かなくちゃ。
急かされるように自転車に乗って、日用品の買い物に出かけた。
外はよく晴れていた。
風が心地よかった。
外の空気を吸って、気分も晴れてきた。
ああ、気持ちいいな——。
そのとき、思った。
書くということをしていなかったら、この気分は味わえなかった。
こんな晴々とした気持ちにはなれなかった。
書かない自分よりも、書いている自分のほうが、ずっといい。
書けるって、尊いことだな。
書ける自分は、きっと尊い存在なんだ。
そう思えた。
書ける自分で、よかった。
書くのをやめなくて、よかった。
自分という存在で、よかった。
どんどん気分が良くなった。
自主軟禁状態から解放されたから、というのもあっただろうけれど。
だからきっと、これからも、僕は書くだろう。
ただ、しばらくお休みをします。
八ヶ月半、やり切ったけど、とても長かった。
書くことに時間を割き過ぎたというのも事実だ。
他にもやりたいことはある。
それらを犠牲にして書いていたという現実もある。
書くのはしばらく休んで、他のことをしよう。
また書きたくなったら、そのときに書こう。
きっと誰かが読んでくれる。
この長編小説がそうだったように。
たとえ一日一人でも、一週間に一人でも、
読んでもらえた、そのことがわかる瞬間は、何にも変えがたいほど嬉しい。
その一つ一つが励みになったからこそ、書き続けられた。
『ライズ・オクトーバー・ライズ』を読んでくれた、「いいね」をしてくれた、
全ての皆さんに心から感謝します。
本当にありがとうございます。とても励みになりました。
これからも、書くことを楽しみに、
どこかの誰かが読んでくれることを楽しみに、
またいつか小説を書こうと思います。
ありがとうございました。
K
小説『ライズ・オクトーバー・ライズ』
あいつらと一緒なんて、死んだほうがマシだ——。
いじめから逃げるように、東京から地方の高校へ進学したタケル。
郷土芸能やダンスを通して出会った仲間たちとともに、
たくましく成長していく青春ストーリー。
郷土芸能、ダンス、どちらもクライマックスを迎える十月、
タケルたちの運命が大きく動き出す。
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(※物語は全てフィクションです。小説に登場する人物等は全て架空であり、実在の人物や団体等とは関係ありません。)
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