第42回九州口腔衛生学会総会

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当日の参加証明書は,接続記録を確認させて頂き,送付しますので

11月までにご連絡下さい

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総会資料(常任幹事会後修正版)はこちら

大会長:齋藤 俊行(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 口腔保健学分野)
後援:長崎県歯科医師会

ご挨拶

 4月に福岡市で予定されていた、日本口腔衛生学会が中止となり、オリンピックが延期、緊急事態宣言が発令されました。九州口腔衛生学会も一時は中止を考えましたが、山下日本口腔衛生学会理事長に相談しましたところ、オンラインでの開催を勧められました。そこで初めての試みですが、オンラインでライブ開催させて頂くことになりました。

 我々はもう完全に元の世界に戻ることはできない。そう言われるようになった時、戻れないのなら新しい未知の道を行くしかない、と思い始めました。口とこころについて、西の果てから新しい情報を発信できることに、喜びと期待を感じております。どうか暖かく見守りください。

 

学会のテーマについて

 口の健康と体の健康は繋がっている。どこかで聞いたような台詞ですが、口とこころもどうやら繋がっているようです。2017年、口腔衛生学会雑誌に、「認知症に対する口腔保健の予防的役割」という政策声明が発表されました。高齢者が急増の真っ只中にある日本では、待ったなしの重要な課題です。認知症は主に記憶の障害です。私達は毎朝目覚めます。睡眠は死の擬似体験とも言われています。意識が目覚めると、外界からの刺激や情報がなだれ込んできます。取捨選択の後、必要な情報は記憶されていきますが、記憶の必要ない情報は何処に行くのでしょうか。外界からの刺激に反応して感情が生まれますが、感情も次々に記憶されていきます。では、覚えている必要もない感情は何処に行くのでしょうか。その一部がストレスとしてたまっていくのでしょうか。記憶と感情がこころの健康に重要だとは思いますが、それが口とどう繋がっているのでしょうか。

 口はこころがぽっかりとあけた窓です。口から食べ物が入ってきます。呼吸をし、言葉が出てきます。私達は意識があります。意識はこころの言葉の塊りです。意識をこころの中で言葉にし、確認することで記憶につながります。記憶は忘れたり、思い出したり、勘違いしたり、さまざまな過程を経てたまっていきます。ですから、記憶があるからといって、正しいとは限りません。意識はこころの言葉があふれて、漏れ出したもののほんの一部だと思います。ですから口とこころは繋がっていると思います。

 なんだか分からなくなってきましたが、ひとりでは到底分かりそうもありません。最新の研究成果には、そのヒントがあるような気がしています。本シンポジウムでは、4人の先生方をお招きしていますので、活発な議論がなされることを期待しています。学会のテーマとして皆さんと一緒に考えていけたら、何か糸口が見つかるかもしれないと期待して止みません。

 

日時:令和2年9月6日(日) 常任幹事会 9時30分-10時30分
                 幹事会 11時15分-12時15分

                 総会 13時15分-13時45分

シンポジウム「口とこころ~口腔と精神保健」 14時-16時

 座長:俣野 正仁 先生(長崎県歯科医師会), 永田 康浩 先生(長崎大学)

    http://www.matano-dc.com/staff/index.html

 1. 地域包括ケアを支える「口腔」と「こころ」の健康~これまでとこれから~
  永田 康浩 先生(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 地域包括ケア教育センター)

 2. 口腔からアルツハイマー型認知症を考える
  武 洲 先生(九州大学大学院歯学研究院 口腔機能分子科学・OBT研究センター)

 3. 口腔保健から考える認知症予防
  竹内 研時 先生(名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学分野)

ご案内のはがき

(開催済)ご案内のはがき

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1. 地域包括ケアを支える「口腔」と「こころ」の健康〜これまでとこれから〜
  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 地域包括ケア教育センター
  永田 康浩

 口腔の健康は、WHOによる健康の定義を受けて国際歯科連盟により「多面的であり、話す、笑う、香りを感じる、味わう、触れる、噛む、飲み込む能力と、自信のある表情を通した感情を伝える能力を含み、しかも頭蓋顔面領域の疾患、疼痛、不快感がない状態である。」とされている。そしてその更なる特性として、「健康および身体的・精神的な幸福(well-being)の基本的な要素であり、そしてそれは個人とコミュニティーの価値や態度によって持続的に影響を受けながら存在している。」とつづいている。すなわち、生理的、社会的、心理的価値を反映し、QOLの維持に必須の要素であることから、個人の経験、知覚、期待および環境への適応能力によって影響されるものであり、これはまさに地域包括ケアの根底にある本人の自立に基づく健康の概念に通じるものである。すでに、口腔と精神衛生の関係について多くのエビデンスが示され、これらに基づいた様々な活動が地域で展開されている。多職種が連携してこそ成り立っているこれらの活動を紹介しつつ見えてくる課題と今後の地域包括ケアの展望について述べたい。

プロフィール
1980年 東京都立西高等学校 卒業
1986年 長崎大学医学部 卒業
1986年 長崎大学第二外科
1998年 Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
2001年 長崎大学病院移植・消化器外科
2007年 国立病院機構長崎医療センター 医長
2013年 長崎大学地域包括ケア教育センター 教授
2020年 長崎大学地域医療学 教授
リンク先
http://www.mdp.nagasaki-u.ac.jp/tsunagu/staff_01.html

2. 口腔からアルツハイマー型認知症を考える
  九州大学大学院歯学研究院 口腔機能分子科学・OBT研究センター
  武 洲

 高齢化が進む我が国では認知症患者が増え続け、高齢者の5人に1人を占める「認知症」は国の財政と社会の安泰を脅かしている。認知症の7割を占めるアルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease, AD)は20数年の長いスパンで進行するが、歯周病はADを増悪するという仮説が多くの臨床エビデンスで支持されている。近年P. gingivalis LPSとgingipainがAD脳にも検出され、歯周病のADへの関与が注目されている。
 AD脳病態にはアミロイドβ(Aβ)を主成分とする老人班と神経原線維変性に加え、ミクログリアに依存した脳炎症がある。全身炎症が脳炎症を誘発し、慢性化させる。私たちは歯周病を慢性炎症と捉え、解明したP. gingivalisのADへの関与メカニズムを日本から発信し続けている。これまでP. gingivalisが 1)脳病態を誘発し促進する、2)全身炎症を増大させる、3)全身でAβ産生を誘導する、4)全身のAβを脳内輸入させると多方向的にADの誘発と進行に関与することが明らかになっている。
 本シンポジウムではP. gingivalisのADに関与について、私たちが得られた知見を解説し、口腔ブレインサイエンス理念を紹介する。ADに対する根本的な治療法がない現状の中、その発症と進行を遅らせる現実的なアプローチとして、口腔衛生学から健康口腔の創出に大いに期待される。

プロフィール
吉林師範大学付属高校(中国)、吉林大学医学部(中国) 卒業
吉林大学医学部修士課程(医学修士)、九州大学歯学府博士課程(歯学博士)
1985年 吉林大学第三臨床医学院(中国)総合歯科 助教
1990年 吉林大学第三臨床医学院(中国)総合歯科 講師
2002年 日本学術振興会 特別研究員
2005年 九州大学歯学研究院 加齢口腔科学 助教
2010年 九州大学歯学研究院 口腔機能分子科学 准教授
2016年 九州大学歯学研究院 OBT研究センター 准教授(兼任)
     プリンシパルインベスティゲーター(PI)
2013年- 吉林大学歯学医学院 客員教授
2016年- 中国医科大学歯学医学院 客員教授
Journal of Alzheimer's Disease 編集委員
リンク先
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/university/professor/take.html
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/37543/19_11_14_01.pdf

3. 口腔保健から考える認知症予防
  名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学分野
  竹内 研時

 国際アルツハイマー病協会の2018年の報告によると、認知症は全世界で約5,000万人が患っており、2050年には約3倍の1.5億人に達すると推計されている世界的な健康問題である。日本においても、過去20年間で高齢化率が約2倍に増加したことに伴い、認知症高齢者数は急増しており、厚生労働省の2015年の推計によると、認知症高齢者は2025年には約700万人(65歳以上の約5人に1人)に達するとされている。認知症の成因は、アルツハイマー病を中心にその多くが未だ解明されておらず、認知症の危険因子・防御因子を明らかにすることは公衆衛生上の重要な課題である。
 近年、高齢者の認知症発症や認知機能低下に対し、歯の数や歯周病、噛み合わせといった口腔の健康状態が関連するという報告が国内外で増えている。そこで本シンポジウムでは、演者がかかわってきた久山町研究(福岡県久山町の地域住民を対象としたわが国における代表的なコホート研究の一つ)の一環で行われた口腔保健と認知症との関連についての調査研究を中心に、近年の研究成果を概説する。また、認知症の発症は高齢期に集中するものの、口腔保健の影響はライフコースの中で蓄積されていくという視点を踏まえ、今後の認知症予防に向けた口腔保健からのアプローチとその展望について触れたいと考えている。

プロフィール
愛知県愛知高校、東北大学歯学部 卒業
2013年 東北大学大学院歯学研究科博士課程 修了
     九州大学大学院歯学研究院 口腔予防医学分野 助教
2019年 名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学分野 准教授
2014年 第36回九州口腔衛生学会総会 優秀発表賞
2016年 The 94th IADR General Session & Exhibition. The J. Morita Post-doctoral Award for Junior Investigators for Geriatric Oral Research (First Prize)
2019年 日本口腔衛生学会 学術賞LION AWARD
リンク先
https://researchmap.jp/k-takeuchi64/
http://www.asahi.com/area/aichi/articles/MTW20200630241370001.html