春の暖かい兆しが降り注ぐ4月上旬。
「今年も満開だな」
俺は並木通りの満開な桜を見ながら微笑む。
そしてあの日を思い返していた。
「…あれからもう10年か」
毎年この時期になると特に強く思い出す。
"彼女"に出逢ったあの日のことを。
「ふっ…相変わらず女々しい奴。こんなんじゃお前に心配されても仕方ないよな」
ギュッと握り締めていた左手を開いて視線を落とす。
そこには自分の左手の薬指にはめられた指輪ともう一つ、掌に置かれたジンバーの指輪。
「………桜咲」
指輪を見つめながらボソッと愛しい人の名前を声に出す。
「俺は…」
プルルルル…
静かな空間に甲高い音が響いた。電話だった。
「げっ…由樹だ」
電話に出ず切った。
指輪をそっとキスをしてポッケにしまう。
「さて、会社に戻るか!」
俺は来た並木通りを戻り、歩き始める。
そして一旦足を止め桜並木を振り返る。
「桜咲、俺はちゃんと幸せだよ」
そう小さく呟いてまた歩き始めた。
ーーー…
これは、朝比奈 桜咲と俺、一ノ宮 亜樹の
長年に渡る恋物語である。