「差別や偏見のない社会に」
耳障りの良い言葉だけれど、それらが存在しなければ『変身』は生まれなかったのだと思う。
または『変身』を読んで、後味の悪さや言葉にできない罪悪感を抱く事もなかったのだろうと。
『変身』はある日突然、毒虫になってしまった主人公・ザムザの話だ。
初見では後味の悪いファンタジー小説、ぐらいの感想しか抱かなかったのだけど、
大学の講義で、この作品は移民であった彼が受けた差別や偏見を元に描かれている……と教わってから印象はガラリと変わった。
我ながら白々しいなと思う。
さっきまで毒虫になってしまった主人公を気味悪く感じていたくせに、
周囲がザムザに向ける冷ややかな態度に対して「仕方ないよね」なんて思っていたくせに。
それが差別や偏見を元にしたものだと知った途端に、彼に同情したりして。
グロテスクな描写はないはずなのに、ゾクリとさせられる。
自分の浅はかさとか、未熟さを自覚させられる。そういうのも読書の楽しさかなと思ったり。