2月18日から劇場公開しているアニメ作品「グッバイ、ドン・グリーズ!」を見ました。
昨年から予告でずっと気になっていた作品で、見に行けてよかったです。
「よりもい」の脚本家さんのアニメオリジナル作品、予告のビジュアルも綺麗、キャストが花江夏樹・梶裕貴・村瀬歩と少年声の人気・演技ともに定評のある役者さんで、楽しみにしていました。
予告で見るときは非常にワクワクしたんですが、文章であらすじを読むとそんなにキャッチーさがないんですよね。あまりヒットを感じていない理由は、そういうところで「声や脚本家に惹かれる」人以外を引き付けることができなかったのかな?と思います。映像も話もよかったんですけどね・・・。
公式のあらすじ(サイトより引用)
東京から少し離れた田舎町に暮らす少年・ロウマ。
周囲と上手く馴染むことができないロウマは、
同じように浮いた存在であったトトと二人だけのチーム"ドン・グリーズ"を結成する。
その関係はトトが東京の高校に進学して、離れ離れになっても変わらないはずだった。
「ねえ、世界を見下ろしてみたいと思わない?」
高校1年生の夏休み。それは新たに"ドン・グリーズ"に加わったドロップの何気ない一言から始まった。
ドロップの言葉にのせられた結果、山火事の犯人に仕立て上げられてしまったロウマたちは、
無実の証拠を求めて、空の彼方へと消えていったドローンを探しに行く羽目に。
ひと夏の小さな冒険は、やがて少年たちの“LIFE”を一変させる大冒険へと発展していく
映画「グッバイ、ドン・グリーズ!」公式サイト (donglees.com)
自分的なあらすじ(ネタバレなし)
高校一年生、農家の息子のロウマは、クラスでも浮いている存在。
クラスメイトの女子や男子にからかわれ、仲間外れにされている。
町のみんなが隣町の花火大会に行く日、ロウマは同じあぶれ物の幼馴染のトトと秘密基地で手持ち花火をするのが恒例行事。
2人で「ドン・グリーズ」というチームを名乗っていたが、トトは医学部を目指し、東京の高校に進学してロウマとは離れ離れになってしまっている。
トトが花火大会の日に戻ってくる。今年の夏は、新たに「ドングリーズ」の一員となったドロップも一緒に「打ち上げ花火」をやることに。
ドロップの提案で、トトに馬鹿にされながらもロウマは税財産を叩いてドローンを購入し、3人は花火を上から撮影することに挑戦する。
しかし、ほこりをかぶった田舎の商店で買った打ち上げ花火は点火せず、ドローンはあらぬ方向へとんでいってしまう。その夜、山火事が発生し、クラスメイト達に「ロウマが犯人だ」と疑われ、SNSで拡散されてしまう。
3人は疑いを晴らすためにドローンのビデオデータを求め、冒険に出る。
ネタバレなしの感想と、見てほしい層
アニメ特有のコミカルや奇跡的な表現と、リアルな日常と感情に主軸に置いたような作品でした。
「いやいやw」と突っ込みたくなるようなフィクションみのあふれる馬鹿げたシーンと、ところどころにちりばめられた心情を吐露する言葉たちと。
迷いながら生きる高校生の、無鉄砲さがまぶしい作品でした。
高校生・大学生に見てほしい。大学生がみたら今すぐどこかに何かしに行っちゃうんじゃないかと思います。
そのくらいのまぶしさがありました。私もどこかに行きたい。
この下、ネタバレあります
ネタバレありの大枠ストーリーと来場特典小説の話
作品はロウマとトトがチャリで空港に向かうシーンから始まります。最初は何のことか全然わからないです。
ところどころロウマが語り部になって「あの頃僕たちは~」みたいな回想のような語りが入ります。
ドングリーズの3人は、ドローンを取りに「トトの家に泊まりに行く」ということにして、ドローンの落下地点(ドローン操作アプリから特定済み)にチャリで向かう。
しかし、先日の山火事の影響で、当初進むはずの道が通行止めに。仕方なく山道を超えていくことにするが、途中でクマに遭遇し、がむしゃらに走って逃げているうちに山で迷子になる。
だんだん日が暮れ、いら立ってくるトト。本来なら彼は翌日に塾の模試があったのだ。
「なんであの時引き返さずに進むんだよ!」と、トトはいら立ちをドロップにぶつける。
ドロップも「だったら来なかったらいいじゃないか!来るのを決めたのはトトだ!」と言い合いに。
その中でトトは「だいたい高校生にもなってドングリーズってなんだよ!」と付き合いごと「ダセェ」と吐き捨ててしまう。
それに傷ついたロウマは頭を冷やすためにいったんその場を離れる。
残されたトトは、ドロップに「本当は塾に行きたくなかったのかもしれない。医学部に行きたいのかもわからない」と心情を吐露し始める。トトは田舎では優等生で、ロウマはそれを尊敬している。だから彼の前では言えないけど、「東京に出たら自分なんて大したことなくて、やってもやっても追いつかない」とぐしゃぐしゃに泣き出すトト。トトの抱えた気持ちが、ここで少しほぐれる。
ドロップは中学までアイスランドにいて、「冒険」をしていた。
「大きな滝の近くに、運命の電話ボックスがあって、滝に虹がかかるときに電話が鳴る、その電話がつながると自分の宝物を手に入れるためのことを教えてくれるんだ」と楽しそうに話すドロップ。
ファンタジーかよ~と怪訝な目で見るトトとロウマ。
ドロップはことあるごとに、「道がなくても進まなくちゃ」など、生き急いでいる雰囲気がある。迷った時も「もうドローンはあきらめて帰ろう、またあとでにしよう」と話すロウマに、「僕の最後の冒険を止めないで」と話され、トトとロウマはドロップの身に何が起こっているかをうっすら察する。
長い髪は、伸ばして寄付をするためだと話すドロップ。
トトとロウマは「こんなに元気なのに」「こんなに元気だから、気が付かないんだ」と会話をしながら、ドロップの最後の冒険に最後まで付き合う覚悟を決める。
ロウマは、トトに東京に誘われても町を出ず、実家の農業の手伝いもそんなに乗り気ではない。あまりやりたいことや、今後のことは考えず過ごしていた。
中学の時スマホを持っていないため、遠足に一眼レフをもっていったのがきっかけで、クラスメイトの浦安チボリに話しかけられる。チボリの撮った作品は素敵で、彼女の言った「写真はもう二度と来ることのない瞬間を写すことができる」という言葉が胸に残したまま、チボリはアイルランドへ転校していってしまった。彼女の転校後、トトが無理やりチボリに国際電話を掛け「15歳の雄姿を見せてみろ!」とロウマへ鼓舞するが、ロウマは通話を切ってしまう。
その後も行動はせずに、インスタでチボリが楽しそうにしているのを見ては、フォロー申請もできず「すごいなぁ」と思っている。
ドローン探しの夜、3人は流星群に遭遇する。思わず写真を撮るロウマだったが、ブレブレの写真ができる。チボリの写真にくらべて大したことないと自虐するロウマに、ドロップは「良い写真」とほめる。
「今にも降ってきそうな、僕たちが見たあの星空だ」と。
翌日、ドローンの位置情報に到達した3人だったが、道の先はダムに沈んでいた。
「詰んだー!!!!」と嘆き、帰ることにする3人だったが、ドロップが脇道でドローンを発見する。
喜ぶその瞬間を、切り取るかのように写真に撮るトト。
結局、3人の無実の証明はフラフラのドローンには録画されておらず、隣町の花火大会の花火の様子が大迫力で保存されていただけだった。
その後、各々の場所で髪を伸ばしながら暮らすトトとロウマだったが、ドロップの訃報が告げられる。
荒れるロウマは秘密基地をばらばらに解体し、トトと二人で燃やすことにする。
ドロップが残していったコーラを飲むと、そこにはマジックで絵と★、「宝の地図」が。
曖昧過ぎる手がかりをもとに、彼らは「自分たちで宝を探しに行く」ことを決意する。
その後、髪を切って寄付をした2人は、アイスランドへ向かう。(冒頭の飛行場へ向かうシーンとつながる)
アイスランドで目的の場所にたどり着いた二人。滝に虹がかかるとき、例の電話ボックスが現れ、鳴り始めた。
急いで走るふたりだったが、電話は切れてしまう。しかし、そこで以前かけたチボリへの国際電話の、アイスランドとアイルランドの番号を間違えていたことに気が付く。
そして、そこで「一緒に宝探しをする友達ができますように」とかかれたドロップのメッセージを発見する。
あの日ドロップがとった電話は、トトとロウマからのチボリへの間違い電話だった。
死期を悟っているドロップに、トトのロウマへの鼓舞「15歳の雄姿をみせろ」というメッセージが響いて、だから彼は日本で最後の冒険をすることに決める。
すべてが明らかになって、泣くロウマとトト。彼ら二人は、いろんな場所をドローンと共に旅をする。
それぞれ「農業」「医学部」へのやる気を深めながら。
EDは[ALEXANDROS]の「Rock The World」
「泣きたくなるほどなるほどに 僕らはちょっと強くなれる」という歌詞がエンドロールに響く。
来場者特典の小説は、トトとロウマがアイスランドに行った後の話。
アイスランドには高校3年の夏休みに行き、その後トトが医学部に受かり、ロウマは東京の農学部に進学が決まった。
あの夏の冒険や、後日いったプールのことを思い出しながら、思い出話に花を咲かせる。
「卒業式」として、3本のコーラと共に。
ネタバレありの感想
ドロップが死ぬことは言葉の端々から感じていました。
ロウマのナレーションからも察することができましたし。
ただ、そこがメインに据えられていたかというと、あっさりで。
この作品は「人が人に影響を与える関係性」を描いていると感じました。
トトとロウマの間違い電話に影響を受けたドロップ。
そのドロップの行動と言葉に影響を受けたトトとロウマ。
高校生の男の子が、髪を伸ばしてヘアドネーションをするのも覚悟と影響を感じてよかったです。
出来事としては、1日山で遭難しただけの話です。
そういうところで「大きなこと」を求めている人には盛り上がりに欠けるかもしれないと思いました。
最近のアニメ映画って、世界と彼女を救いがちなので。
ただ、こういう人間と人間のかかわりで人生が前に進んでいくような話が大好きなので、私は「映画館でみてよかった!!!」って感じでした。
映像がとにかく綺麗。森の中の木漏れ日、滝のしずく、花火・・・いわゆるエモーショナルな映像美があります。
光と緑の描写がとても綺麗だった。
それに加えて、映画館ならではの重低音。アイスランドの滝のシーンでは、滝の「ドドドドドド」という低温が常に響いていて、臨場感がありました。
良い映画ですが、男の子しか出てこないこと、無鉄砲なコミカルさがあることから、寒さを感じるところもありました。
ヒロインや美少女がいないとダメなひとには向かないと思います。
長文の感想を書きたくなるほどには、心に響いた作品でした。
見てる人少ない感じするので、見てほしいです。