「自然とは何か?」と人々に聞いてみると、まず次のような答えが返ってくるであろう。「自然とは人の手を加えない、ありのままの状態」と。果たしてこの見解は正しいのだろうか。少なくとも私はこの意見には賛同しない。
そもそも「自然」の定義は非常に難しい。大多数の人間は、鉄筋コンクリートで形成されたオフィスビルを「自然」とは呼ばないだろう。しかし、彼らは森林で野生のリスが作った巣を「自然」と呼ぶに違いない。人間が作った建築物と、リスが作った巣という名の建築物にどのような差異があるのだろうか。人間もリスも動物なのだから、人間の住宅やビルはリスの巣と何ら変わらない。
それでは何が「自然」で何が「自然」ではないのだろうか。ここで国語辞書を使い「自然」を引くと次のように出る。
1) 人の手を加えない、物のありのままの状態。
2) この世のあらゆるものの総称。
イ)人間の社会から離れた立場で考えた(ありのままの)天地万物。
ロ)人間を含めて因果的必然の世界。物体界。
(岩波 国語辞書より)
つまり「自然」は個々の捉え方によって意味が大きく変わってくるのである。最初に述べた「自然とは人の手を加えない、ありのままの状態」という一般的な見解が、間違ってはいない事が分かる。しかし完全な正解でもないようだ。
私の捉える「自然」は、「人間を含めたこの世のあらゆるもの」である。人間を含めずに「自然」を考える人間は、傲慢ではないだろうか。人間は自然界の中に置かれている存在の一つにすぎない。他の生物がいるからこそ、人間は生存する事が出来るのである。万物の霊長などと馬鹿げた事を言わずに謙虚になるべきである。
以上のように、「自然」とは個々人によって大きく意味が変わってくる。固定概念を鵜吞みにせず、自分なりの「自然」を考えていくべきではないだろうか。