今日は人事制度のお話を書いてみます。
私は企業における人事制度設計はプロでは無いのですが、
昨今バズワードとなっている「ジョブ型雇用」については、個人のキャリア形成上、
とても重要なファクターですので、少しずつ勉強しています。
著名な柴田彰氏の書籍や、最近はネットの記事やセミナーで頻繁に話題と
なっていますので、インプットの機会は多いです。
人事のみなさんも、既に研究済の方も多いかと存じます。
実態はどうなのでしょう?
パーソル総研さんが20年末~21年初頭に調査されています。
・57.6%がジョブ型制度を「導入済み」または「導入検討中(導入予定含む)」と回答
・「導入検討中」の企業に導入目的を聞くと、「従業員の成果に合わせて処遇の差をつけたい」が最も多く65.7%
とあります。
ほとんどの企業さんは多大な時間と労力をかけて人事評価を行っているはず。
そこでは、形態は様々でも、何らかの”成果”を問うているはず。
にも関わらず多くの方が、「従業員の成果に合わせて処遇の差をつけたい」と回答。
どういうことでしょう。
原因として考えられそうなのは
・成果の定義があいまいか、不十分と感じているのか
・(上記と表裏ですが)評価者で評価がブレるからか
・評価結果を処遇に反映させていない or 制度がないのか
・原資がないのか etc。。。
4番目の「原資がない」資源配分の問題は、別の話題として別途取り上げたいと思います。
2番目、3番目は運用上の問題ですね。これも以後語っていきたいと思います。
今回はジョブ型の考察として、1番目にフォーカスしてみます。
成果の定義があいまい、不十分という仮説ですが、
これを考える時、お腹に重たい記憶が蘇ってきます。
「成果主義」という言葉です。
90年代のバブル崩壊の頃、人件費負担を軽減する手段として検討・採用が進んだ成果主義。
上手に採用して、年功序列から脱却できた企業さんも多くあろう中で
城繁幸さんが書かれた富士通の実態を記述した著書は、当時、衝撃でした。
著書を読むと、成果主義そのものが悪なのではなく、運用の問題だと分かります。
しかし当時は年功序列での賃金制度がまだ主流。
富士通さんに限らず、成果主義とは何か、から議論が始まり、
経営者はいかに人件費を下げるかの視点で制度設計をしていたように思います。
ジョブ型雇用を考える時、この歴史を忘れないようにしたいです。
人件費負担を下げることが経営上、必須だとしても、それがゴールではなく
成果を上げている社員を公正に評価し、何らかの報酬で報いたい、
そのための手段として、ジョブ型評価・ジョブ型雇用が検討されている、
その結果が先の「従業員の成果に合わせて処遇の差をつけたい」との回答と見ています。
企業と社員が双方ハッピーでないと組織が崩壊することは、
富士通さんの過去の歴史が物語っています。
当たり前のことですが、人件費削減ありきではなく、企業と社員の良い関係を保つために
上手に設計していただきたいと思います。