思ってたより不味かった -2ページ目

ずっと好きだった人から、好きですと真っ直ぐな目で言われ手紙をもらった。

好きですって書いてあった。

彼は素面だったという。わたしはそのとき酔っぱらっていて、でもその目をしっかり覚えてるし頭から離れなくて何度も反芻してしまう。やっぱり人にいちばん響くのってシンプルで真っ直ぐな言葉だと思う。


嬉しかった。そりゃ何年も思い続けた人だから、このまま執着しつづけ一生好きだと確信した人だから、嬉しくなるのも当然だ。

しかし、今わたしは彼のことが好きなのかわからない。わたしのことを好きな彼と好きでなかった彼は別の人間だからだ。

わたしは彼のことを猛烈に好きだった。どこが好きだったかというと、顔、声、わたしと話すことが面倒くさそうなところ、呆れた顔、こちらに何も求めてこないところ、思わせぶりなことをするのに付き合ってくれないところ。


彼がわたしを好きになってしまうと、もうなんか違う。態度も目つきも褒め言葉も、会いたいと駄々をこねたりするところも、何もかも昔の彼とは違う。


こうなるとわたしが本当に彼のことを好きだったのか怪しくなってくる。

わたしは彼が好きだったのか、彼に恋愛感情をぶつけることでストレス発散していたのか、大事にされないことで安心していたのか、いや、ラスボスだったのかもしれない。

倒してしまった。ならゲームクリアだ。もう目標がない。


最悪だ。

本気にならないでほしかった。こんなこと思ってしまって最悪だ。

彼はわたしの人生における最難関のラスボスだった。なんにも分かってなかった、あのとき諦めていれば彼の存在が一生わたしの希望でいてくれたのに、目標達成してしまった。


随分と身勝手だけど、彼に愛されることではなくて彼を一方的に愛することがわたしの生きがいだったから、愛されては意味がない。

わたしが必死で騒いでも無関心な彼が好きだった。

どれだけ好きだと言っても、俺も好き なんて返さない彼が好きだった。

きっとわたしは彼のことをひとつも愛してなかったのだ。