突然、医師が畳の部屋に入って来た!



家族は一斉に立ち上がり、医師の側に駆けよろうとしたが、それを待たずに医師は話し始めた。



『出血はありませんでした。取り敢えず手術はしないでこのまま様子を見ます。』



家族は皆、安堵した表情を浮かべた。



(よかった!!)



それぞれの心の中で、この言葉がこだました。



医師は
『どうぞ皆さん、今夜はお帰り下さい。』



っと言った。



『えっ!・・・』



『誰か残らないで、大丈夫でしょうか!?』



家族の誰かが尋ねた…!?



一同、同じように思った。


『そう遠くないし
何かあれば電話しますから…
どうぞお帰り下さい。』



今夜は帰れないつもりだったので、拍子抜けした。



両親は義妹の車で…



私たち夫婦も今夜はどちらも残らずに長男と一緒に帰った。



自宅に着くと、どっと猛烈な疲れが押し寄せて来た。


軽くカクテルグラスで休憩して、そのままベッドに横になった。



電気を消して軽く目を閉じると突然、強い不安が頭をよぎった。



今日、畳の部屋の片隅で文庫本を開いて座り込んでいた父親のように



このまま、我が子が目を覚ます事なく、ICUで酸素マスクしたまま…



あの
「ピッ!ピッ!ピッ!」っと云う音のする器械に繋がれたままだったら…!!



とか



このまま一生車椅子椅子の息子を押して暮らして行く事になったら…!!



体力の自信がないダウン



あれこれ考え出すと不安で押し潰されそうになる!



そして、やっと
「うとうと・・・」
浅い眠りについた頃…



枕元に置いておいた電話の子機が鳴った!



『ドキッ』っと
して子機を握りしめて耳にあてた!



『もしもし…○総合病院のICUの看護師ですが…』



時計星空深夜2時だった。




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