長男の涙を拭き、鼻をかみ終えると一緒にレントゲン室前の椅子に移動した。



土曜日の午後で外来は閉まっていて、院内は薄暗く誰1人いない。



閑散として怖く、次第に心細くなる。



長男がまた
ぽろぽろしょぼん涙を流す。



『大丈夫よ!
     大丈夫よ!』


と長男の肩を抱く。




レントゲンが終わると処置室に2人で移動する。



長男をまた、処置室の前の長椅子に座らせ



私は処置室に入る。



救急隊員の『おじさん』はまだ帰らなかった。




次男はまた処置ベッドに寝かせられ、熟年の医師が何やら手当てしている。



私は次男を見つめ



ふと、上を見た。



何か奇妙な物が見えた。



それは、蛍光灯のような


白い光の中に浮きあがって見えた。



まあるい形の中に、少し太めの線がくっきりと入っている。



まあるい形の右側の真上部分から線は下に向かって伸びている。



[スイカの縞模様と
     そっくりだ!]


 ?  ?  ?



数秒間見つめた後


それは次男の頭じゃないか!?


っと気がついた。



もしかして、これって
「レントゲン?」



『これは、次男の頭!!』



【し・ん・じ・ら・れ・な・い】



何か不思議な物を見た気がした。



そして数秒後・・・


レントゲン…。
『我が子の頭だ!』
と思えた。




命に関係するなんて事考えてもみなかったが



私の口が、隣で医師の手伝いをしている

若い白衣の医師に問いかけた。



『あのぅ~命に別状はないんでしょうね』



若い医師が、処置をしている身体をねじりながら

顔だけ上に向けて答えた。


『おかあさん!
 一番難しい場所なんですよ…』



若い医師の声は震え
今にも泣き出しそうな顔だった。




一部始終を見ていたおじさんは



本当の棒のように

■…呆然…■

と立ち尽くし青ざめた声で



『それでは、戻ります。』


と熟年医師に向かって告げると



医師は
『頭蓋骨骨折!!


と投げ捨てるように…

怒っているような声で答えた。




私は
『ありがとうございました。』


『お世話になりました』



っと隊員に

はっきりとした口調で礼を言い頭を下げた。



隊員は来た時とは全く別人のように



■…あ然…■


とした顔で神妙な面持ちで戻って行った。




処置が終わったようだ。



医師は立ち上がり


隊員の置いて行った紙を手に取ると


『どこの隊の者だ!
何にも書いてない!!』



っと少々怒鳴り気味に声を出した。



私は


『あのぉ~

エダニシ!?

とか言ってました。』



熟年医師は


『ふぅ~っ』
とため息をついた。



検査室に移動するらしい。


廊下の長椅子で長男がまた


ぐしゃぐしゃになって泣いていたしょぼん



私はまた処置室に入り

多めにティッシュをもらい手渡しながら



『大丈夫だから!
     大丈夫だから!』



っと長男の肩にパーを乗せた。



他の急患の患者はこの廊下にいたのだろうか?



私には、薄暗い廊下で

独りで座っている長男しか目に入らなかった。



誰1人いない廊下に見えた。




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