つまり僕は狼で 大方君は可愛らしい羊なんだろう。
 偏見に満ちた交差点と点滅した信号機が酸素を吸収、
 二酸化炭素が僕に冷たいのと同様に 朝は低血圧を嫌ったのだと分析する。

  悪いのは僕じゃない。

  穴だらけなのはむしろ心臓です、羊さん。
 この世界は僕には合わない。

  食物連鎖の頂から慈愛と平等を説いた
 その瞬間に滅びるべきだった。理想論と現実に一貫性を
 要求するその思想が僕にはとても受け入れられないし、
 ひどく不快だとも感じる。しかし当然一方的な少数派を
 世界は好まないのが事実で。

  だから今日も爆音の中、生存中。


 「狼さん」
 「なんですか羊さん」
 「網膜が痛いです」
 「そうですか、それはどのくらいの痛みですか?」
 「....狼さん」
 「何でしょう羊さん」
 「網膜が痛いです」
 「さっきも伺いましたよ」
 「心臓も」
 「羊さん、」
 「狼さんと居ると、身体中が痛くなります。」



  痛くなるんですともう一度だけ羊さんは儚く頷いて、
 僕を見やる。星が墜落する感情。


 「愛してしまったかも知れません」


  ノイズで揺れる鼓膜は正しい。横断歩道を見失った。
 迷子の逃走で乱されたクラクション。右手に隠した
 疑惑と辛辣が無に変わる。


   ああ、心臓に噛み付きたい。


 












 知らない 知らないよ



 愛してるとかそういう
 意味のない数字の羅列みたいな


 そんなことより

 取り返したい言葉があるんだ


 
 あなたの声は死にたくなる



 間違えた言い訳を








  滲んだ。捕食された手首は熱を帯びて、
 鮮やかな色彩と欲情した君。染まる染まる
 染まる染まる、染まれ、あああ。
 
 ゆるやかな堕落は至極非生産的な行為で、
 君は泣いていた。

 ねえ、この世界に正しいことなんて なかった。
 互いを貪るようにしか愛せない。殺した
 くて殺されたい。僕と君の世界にはそれ
 以外、なにもないから。だからもう
 誰もいらない。



 「すき」


  奥まで入り込んで融解してしまいたい。
 そのままふたりをひとりにしてほしい。
 転がり落ちた林檎は、ひどく美しかった
 と言う。だから絶頂を迎えるまで、赤は
 流れを止めない。
  噛みちぎってせめて飲み干して、もう
 疲れた。あしたはきのうで僕と君はいつ
 までも違う個だから繰り返すだけ。
 それしか、わからないだけ。


 「すきすきすきすき」


 
  世界が崩れたって構わない。君が壊れ
 たら食べるからって言ったら、君は嬉し
 そうにわらった。やさしくない世界なん
 てもう飽きた。
  無数の点が隠された。エゴの抱擁、ア
 イロニーを含んだ接吻、ああ。僕と君は
 だあれにも理解されない。それくらいが
 呼吸しやすい。肯定も否定もない世界で
 求め合うだけでいい。


  君は僕を愛してるし、僕は君を愛して
 る。きれいな定理。単純で合理的な本能
 を強要した。



 「すきすきすきすきすきすきすき」




 だからつまりそれが、