新年のご挨拶
謹啓新年あけましておめでとうございます。 旧年中は格別なご高配を賜り、篤く御礼申し上げます。元号は平成から令和に変わり、文字通り日本が大きく発展する時代を迎えました。皆様にとって新しい年がより良き年となるよう心より祈念いたしております。私は、2017 年 11 月、安倍内閣総理大臣より内閣官房参与を命ぜられ、職務としては、農林水産行政及び各国との経済連携等について、政府と自由民主党との調整に日々当たっております。このたび、その活動の一部をとりまとめましたので別添資料のとおりご報告いたします。昨年は異常気象による大型台風が日本各地に被害をもたらしました。この調査のため、昨年 12 月 20 日、自由民主党・二階俊博幹事長が忙しい中、「さくら市」「鹿沼市」の災害現場を視察しました。災害復旧の御支援に心から感謝申し上げます。さて、我が国の人口は約1億 2,700 万人(2017 年)から 2050 年には 1億 190 万人まで減少すると推計されており、高齢化の進行とも相まって、将来的に国内市場の規模は縮小する可能性が高いと考えられます。一方、世界の人口は 74 億人(2015 年)から 2050 年には 97 億人になると推計されています。この状況に鑑みれば、我が国農林水産業の成長産業化を目指す上では、国内の1億人だけを相手にする産業ではなく、世界の 100億人を相手にする産業に転換するために大きく舵を切るべき時に来ていると考えております。海外に目を向けた場合、当面、どの国・地域をターゲットとすべきでしょうか。私はその筆頭候補は約 14 億人の人口を抱える中華人民共和国だと思います。中国は今でも毎年5%を超える経済成長率を持続し、国内消費も大変旺盛であり、農産物輸入は毎年 100 億ドル(1.1 兆円)増加している食料輸入大国です。このような中、中国政府は、2011 年の福島第一原子力発電所事故以降、栃木県を含む1都9県(福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、長野、新潟)産の食品に対して輸入停止措置を講じています。福島第一原発事故発生後、日本産食品に対して輸入規制措置を講じた国・地域は中国だけではありませんが、日本政府が科学的根拠をもって日本産食品の安全性を対外的に訴えてきた結果、ヨーロッパ 28 カ国など大多数の国・地域は既に輸入規制を緩和・撤廃しています。私どもの活発な働きかけの中、中国政府は昨年 11 月に新潟県産精米の輸入停止措置を解除したのみであり、依然として厳しい措置が続いています。ここで、参考までにコメの関係について申し上げます。我が国の令和2年産コメの生産目標は 727 万トンですが、中国の年間コメ消費量は1億数千万トンに及びます。中国は 532 万トンの輸入枠(低関税)を設けて近隣諸国からコメを 300 万トン(2018 年)輸入しています。我が国から中国に精米を輸出するためには、中国が指定する工場・倉庫で精米・くん蒸しなければなりません。昨年5月の日中首脳会談の結果、精米工場・くん蒸施設が追加指定されましたが、中国向け精米の輸出量は 524 トン(2018 年)と低迷しており、この状態を早急に打開したいのです。牛肉については、最近前向きな動きがありました。我が国では 2001 年9月のBSE(牛海綿状脳症)発生以来、牛肉の対中輸出は停止され、2010 年4月の口蹄疫発生以来、牛肉・豚肉等の対中輸出が停止されていますが、昨年 11 月 25 日、輸出再開手続を進める上で必要な「日中動物衛生検疫協定」が両国外相の間で署名されました。さらに、昨年 12 月 19 日付で、中国政府の海関総署と農業農村部がBSE・口蹄疫に関する「解禁令」を公告しました。実際に輸出するための残りの手続として、中国による我が国食品安全システムの評価、家畜衛生条件の設定、輸出施設の認定・登録があります。最近、中国政府高官との意見交換で次のように言われたことが印象に残っております。「西川さん、中国人全員が日本産牛肉を食べるようになったら、日本国内で牛肉が足りなくなりますよ(笑)」と。冗談のようにも聞こえますが、もし 14 億人を抱える中国に対して障壁なくコメを含めて日本産食品を売り込めるようになれば、日本の農村風景が一変するだけのインパクトがあると私は考えております。私はこれらの問題の解決のために、2015 年以降9度中国を訪問し、関係部署と協議を重ねて参りました。今年の桜の咲く頃には「習近平国家主席」の国賓待遇としての来日が予定されていますので、それまでにこれらの問題が解決されるよう粉骨砕身取り組んで参る所存です。東京では総理官邸向かいの中央合同庁舎8号館 10 階 1012 号室で執務しておりますので、お近くにおいでの際はお気軽においでください。また、私にできることがありましたら、お力になりたいと存じますので、何なりとご連絡いただければ幸いです。 敬具 令和二年一月 内閣官房参与 西川 公也