1)今回のお悩みは…


あなたは「メールの宛先を間違えた」
というミスをしてしまった。
 
すぐに削除依頼までできて、
実害は最小限に止めた。
 

それでも上司からは
「ありえない」
「仕事をなめている」
「普通は起こらない」
「最近ミスが多すぎる」
と強い言葉で叱責された。
 
 

あなた自身も「ミスは良くない」

と理解している。

 

だからこそ、

今は仕事全体に自信がなくなり、

疑心暗鬼になっている。

 


さらに前提として、

あなたは適応障害を発症し、

時短勤務を続けながら働いている。

 

 

休めたのはたった2週間。

代わりがいない小さな会社で、

治療と仕事を同時に回し続けてきた。

 

 

ここで起きているのは、

ミスそのものよりも、
ミスをきっかけに

「心が折れやすい構造」に入ってしまったことです。

 


言い換えると、

あなたの意志の弱さではなく、

仕事の設計があなたに過負荷を

かけ続けている可能性があります。

 

 


2)【ターゲット明示】

 

この記事は、次のような方に向けて書きます。

 

 

  • ミスをした後、頭の中が「全否定」に傾く人

  • 上司の強い言葉で、仕事全体の自信が崩れる人

  • 体調不良やメンタル不調を抱えながら、代わりのいない仕事をしている人

  • 管理者側として「叱責は必要」と思いながらも、職場が不安定になっていることに気づいている人

 

 

あなたが壊れているのではありません。
壊れやすいのは、

その職場の設計図の方かもしれません。

 

 


 

 

3)現象整理(事実)

 

ここは誤解されやすいので、

感情と評価をいったん横に置きます。

 

 

  • あなたはメールの宛先を間違えた

  • 送信先に連絡し削除してもらい、大事にはならなかった

  • 上司に報告したところ強い叱責が返ってきた

  • あなたは適応障害の治療をしながら、時短勤務で1年半働いている

  • 休職は2週間しか取れず、代替要員もいない

  • その日は午前中に集中作業があり、疲弊があった

  • これまでもミスを減らす工夫をしていて、だからこそ「すぐ気づけた」

  • ただ今回を機に「何をしても間違っている気がする」状態になった

  • 頼れる場所がなく、掲示板に助けを求めた

 

この時点でのポイントはひとつ。
あなたは「対策していたのにミスが出た」ことで、

自己評価が一気に崩れたということです。

 


そして、それを加速させたのが、

上司の言葉の強さです。

放置するとどうなるか。

 


「確認しすぎて遅くなる」

→「遅いと怒られる」

→「急ぐ」

→「またミス」

 


このループが回り始めます。

これは能力ではなく、構造の問題です。

 

 


4)【点検パート】チェックリスト(□形式)

 

ここで一度、現場の“設計不良”が起きていないか点検します。
当てはまるものにチェックを入れてください。

 

 

□ 代わりがいない(休むと仕事が止まる)
□ 体調不良でも最低限以上の稼働が求められる
□ ミスの原因より「人格・姿勢」を責める叱り方が多い
□ 叱責の基準が曖昧で、その日の機嫌で強度が変わる
□ 「最近ミスが多い」など、具体がないまとめ叱責が起きる
□ 報告すると安心より恐怖が増える
□ ミスが起きた後、改善より“萎縮”が残る
□ 確認工程が個人任せで、仕組みとして守られていない
□ 集中作業が続き、回復の余白(休憩・交代)がない
□ 正しさより「責められないこと」が目的になりやすい

 

 

チェックが複数つくなら、あなたの問題というより、
ミスが起きやすく、心が折れやすい設計になっています。

 

 


5)レイヤー分解(組織構造)

 

ここから少しだけ視点を上げます。

 


「あなたが気をつければいい」

で終わる話は、だいたい再発します。

 

なぜなら、

原因が個人の注意力に置かれた瞬間、

構造が固定されるからです。

レイヤーで見ると、こうなりやすい。

 

レイヤー1:作業レベル(現場の手順)

 

宛先間違いは、

誰でも起こしうる“ヒューマンエラー”です。

 


特に集中作業の後半や疲労時は、

最後の確認だけ抜けることが起きやすい。

 


あなたは工夫していたから

「すぐ気づけた」。ここはむしろ、

対策が効いていた部分です。

 

 

レイヤー2:運用レベル(確認工程の設計)

 

宛先確認が「個人の注意」

に依存している職場だと、
調子の波がある人ほど事故が起きやすい。

 


本来は、

送信手順そのものに

“止まる仕掛け”が必要です。

 

 

レイヤー3:人員設計(代替の不在)

 

代わりがいない。

休めない。これが長期化すると、

 


「治療しながら働く」ではなく

「治療が進まないまま働く」になります。

 


疲弊が抜けない状態で

注意力だけ求めるのは、構造として無理が出ます。

 

 

レイヤー4:評価設計(叱責文化)

 

叱責が「行動」ではなく

「人格」に向かうと、
人は改善より防衛に入ります。

 


防衛に入ると視野が狭くなり、

ミスが増えやすい。

これは心理の仕組みです。

 

 

レイヤー5:安全設計(再発防止の文化)

 

ミスを減らす文化は

「叱ること」ではなく、
「ミスが起きても被害が出ない仕組み」を作ることです。

 


あなたが削除依頼までできたのは、

ここに近い動きです。

 


ただ、職場側がその価値を拾えず、

恐怖だけが残ってしまっている。

 

 


6)内側の整理|意思決定の方程式

 

ここは、

あなたの心の中で

何が起きているかを式で可視化します。

少し冷静に眺めるための道具です。

 

 

(悩み × 解決策 × 未来価値)>(不安+コスト)
※信頼が土台

 

 

今回の「悩み」はこうです。

 

 

  • ミスをした

  • 叱責された

  • 仕事全体が怖くなった

  • 自分の判断が信じられない

 

 

ここで人は、

解決策を選べなくなります。

なぜなら、右側が膨らむからです。

 

 

  • 不安:また怒られる、信用を失う、仕事を続けられないかもしれない

  • コスト:確認に時間がかかる、判断が遅くなる、疲れる、怖い

 

そして土台の「信頼」が揺れる。
上司への信頼、自分への信頼、職場への信頼。

 


信頼が揺れると、

左側(解決策や未来価値)が

機能しにくくなります。

 

 

だから今のあなたは、こうなりやすい。
「次は絶対ミスしない」ではなく、
「何をしても間違っている気がする」
この状態は意志では止まりません。

仕組みで止める必要があります。

 

 


7)真因(構造ズレ)

 

ここで結論を急がずに言い切ります。
今回の真因は「宛先ミス」ではありません。

 

 

“治療しながら働く人”に対して、

代替も余白もないまま、注意力だけを要求する設計

 


ここがズレています。

さらに追い打ちをかけたのが、叱責の質です。

 


「ありえない」「仕事をなめている」という言葉は、
改善に必要な情報をほとんど含んでいません。

 


含んでいるのは“恐怖”です。

恐怖は短期的には人を動かします。

 


でも長期的には、

萎縮と疑心暗鬼を作り、ミスを増やします。
つまり、職場としては安全性が下がります。

管理者側にも損が出ます。

 

 


8)外側の再設計|構造再設計の方程式

 

ここからが本題です。
「気をつける」ではなく、

「仕組みを変える」へ移ります。

 

 

{(現象 ÷ レイヤー)→ 因果 → 仮説} ÷ 構造 = 新しい構造

 

  • 現象:宛先ミスと叱責で、自信が崩れた

  • レイヤー:作業、運用、人員、評価、安全

  • 因果:疲弊と余白不足、個人依存の確認工程、叱責文化で防衛反応が起きる

  • 仮説:ミスは個人の問題ではなく、工程と余白を設計すれば減る

  • 構造:具体的な手順、チェック、権限、運用ルールに落とし込む

  • 新しい構造:ミスが起きにくく、起きても致命傷にならない状態

 

 

ここで仮説は2つまでに絞ります。
比べて、今回どちらを採用するかを見せます。

 

 

A案:個人強化型(気合いと注意で乗り切る)

 
  • 比較:短期は見た目の改善が出る

  • でも:疲弊が抜けない限り、どこかで再発しやすい

  • 放置すると:確認過剰→遅い→怒られる→急ぐ→ミス、のループ

 

B案:工程設計型(仕組みで止める)

 
  • 比較:最初は手間が増えたように見える

  • でも:一度定着すると再発率が落ち、心理負荷も下がる

  • さらに:治療中の人でも回せる“再現性”が残る

 

 

今回採用するのは B案です。
理由は単純で、

あなたはすでに1年半、

治療と仕事を同時に回している。

 


ここでさらに個人強化を選ぶと、

あなたの中の燃料が先に尽きやすいからです。

 

 


9)再設計(三層構造)


再設計は
「あなたの内側」「現場の手順」「職場の合意」の三層で組みます。
 
 

第一層:あなたの内側(疑心暗鬼を止める設計)

 

  • 論点:自信が崩れた状態で判断すると、ミスが増える

  • 因果:防衛反応で視野が狭くなり、確認の質が落ちる

  • 具体像:メールを送る直前に手が止まり、逆に焦って押す

  • 放置すると:仕事全体が怖くなり、回復が遅れる

  • どう変えるか:

    1. 「今は疑心暗鬼モードだ」とラベルを貼る(事実化する)

    2. 送信前に30秒だけ固定ルーティンを入れる(深呼吸+読み上げ)

    3. “完璧”ではなく“工程を守れた”で評価する

 

第二層:現場の手順(宛先ミスを仕組みで潰す)

 

 

  • 論点:宛先確認を個人の注意に預けない

  • 因果:疲労時ほど最後の確認が抜けやすい

  • 具体像:CC/BCC、返信先、過去スレッドの宛先が残る

  • 放置すると:再発し、次は実害が出る可能性もある

  • どう変えるか(具体策):

    • 宛先は最後に入れる運用に統一(本文作成中は空欄)

    • 送信前のチェック項目を固定化(宛先、添付、機密、スレッド)

    • 可能なら「下書き保存→5分後に送信」運用(時間差で気づける)

    • 宛先候補はグループ化して誤送信を減らす(似た名前対策)

 

 

あなたは既に

「送信方法を工夫していたからすぐ気づけた」と言っています。

 


つまり、ここは伸ばせます。

あなたの努力を“仕組み”に昇格させるだけです。

 

 

第三層:職場の合意(叱責より安全設計へ)

 

  • 論点:再発防止は叱責ではなく、工程の設計でやる

  • 因果:人格否定型の叱責は防衛反応を生み、事故率が上がる

  • 具体像:「ありえない」で終わり、改善の会話が残らない

  • 放置すると:あなたも職場も疲弊し、人が辞め、さらに代替がいなくなる

  • どう変えるか:

    • 報告の型を作る(事実→影響→再発防止→提案)

    • 上司に求めるのは“許し”ではなく“運用の承認”

    • 「治療中の稼働前提」を明文化し、優先順位を合意する

 
 

10)行動指針

 

ここは、明日から使える形にします。
やることは3つで十分です。

増やしすぎると続きません。

 

 

  1. 報告テンプレで“提案”まで出す
    「宛先は最後に入れる運用に統一したい」
    「送信前チェックを固定化したい」
    叱責の場を、改善の場に変える導線を作ります。

  2. 送信工程に“止まる仕組み”を入れる
    30秒ルーティン、下書き→時間差送信、チェック固定。
    注意力ではなく、工程で守る。

  3. あなたの回復前提を崩さない
    時短勤務が続いているのは、怠けではなく治療のプロセスです。
    「代わりがいない」は会社の設計の問題。
    あなたが背負い続ける前提ではありません。

 
 

11)まとめ

今回の出来事は、あなたの能力が低い証拠ではありません。
むしろ、あなたは工夫していたから被害を最小化できた。

問題は、

 

  • 代替がいない

  • 余白がない

  • 個人の注意に依存している

  • 叱責が恐怖を残す
    この“職場の設計”が、ミスと疑心暗鬼を増幅させている点です。

 

あなたの課題は「もっと強くなる」ではなく、
仕組みを作って守ることです。

 

 


12)締め

 

最後に、静かに言い切ります。
あなたは壊れていません。

 

 

壊れているのは、
「治療中の人が休めない」
「代替がいない」
「注意力だけを要求する」
この設計図の方です。

 

 

あなたが今すべきことは、

罪悪感で自分を追い詰めることではなく、
ミスが起きても致命傷にならない構造へ、

少しずつ移すことです。

 

 

その一歩目はもう見えています。
あなたが既にやっている工夫を、

職場の“標準手順”に変えていきましょう。