「このままでは赤ちゃんも可哀想だし、
何より母体に影響が出てしまいます。
なので、赤ちゃんを出してあげましょうね」
先生の声が、すごく遠くでしゃべっているように聞こえました。
たんたんが、出産の時のリスクや、
今のあたしの体のことを質問していた気がしますが、
なんだか他人事に感じられ、何も言わずに座っていました。
「出産の日にちは、ちゃちゃさんご夫婦で決めて下さい。
一旦それまで家に帰られてもいいですし」
…出産。
まだまだ先だと思っていた。
まだ心も体も何も準備できていないのに…。
「先生、月曜日と火曜日は旦那が休みなんです。
旦那がいる時に…」
ここまで喋ると、涙が一気に流れてきて
話を続けることができませんでした。
「良いですよ。じゃあ、月曜日に出してあげましょうね。」
そう言うと先生は席を立ち、
「今は沢山泣いて下さい。旦那さんもそばで支えてあげて下さいね。」
と言って部屋から出ていかれました。
そこからは嗚咽まじり泣き、たんたんはそんなあたしを
強く抱きしめていました。
１５分程泣いたでしょうか。
帰り道は覚えていませんが、たんたんに支えられて
病室に戻ったと思います。
この間、たんたんは一粒の涙をこぼすことなく
あたしの横にいてくれました。