それにしても今回は、よくしゃべるカウンセラーだ。

悩みを話にきたのだが何を相談しにきたのかも忘れるくらいだ。

暗闇をあてもなく進んでいる気持ちは一向に消えやしない。

カウンセラーの基本姿勢って傾聴だったんじゃないか?

そんな疑問は、カウンセリングジプシーをしているとどうでも良い事だと感じ始めている。

それは時間制の、ある程度品の良い綺麗なお姉様がいるスナックに行けばお酒を飲みながら沢山話を聴いてもらえる上に合理的で一石二鳥でもある。


それでも一瞬楽になるくらいで悩みの解決にはならない。


傾聴も良いし、マシンガントークの説教でも良い、

ただ止むことのないこの心の雨を晴らしてくれるカウンセラーに出会えるのなら、

これだ!

と思うまでひたすら探し続けるまでだ。


気がついたら沖縄から岩手までたどり着いていた。


これまで何百と言うカウンセラーに出会い、数多くのセッションを繰り返してきたけれど、

理詰めで頭でっかちになってみたり、

踊り狂ってみたりして感情解放もしてきたけれど、

どれも根本的解決にはつながらなかった。

今はその体験からカウンセリングのスキルが身に付いてきているくらいだ。

下手な心理士よりマシだと自負している。



ただ一つ自分自身の事に気づいた事は、主張下手である。と言う事だ。

いつも、自分の意見を二の次にしてきた私は、本心を置き忘れてきたのかもしれない。

そう思えばこの旅は本心を探しにきた旅とも言えるのかもしれない。

旅の途中、東京の路地裏で中国人の気功師に出会った時、

『あなたは優しい人間だ。それがプラスにもなればマイナスに働く事もある。なので自分を守り、無理をしない事。それが己の幸福、次いでは他の幸福につながって行くのだ』

と言う言葉は、妙に脳裏に残っている。

現代社会は、主張し、ある程度くちが上手くなければ損をする仕組みがあるって事は痛いほどこれまでの経験でわかっていたから尚更だった。



自分を守り、無理をしない。。。



今はこの岩手の温泉地で、疲れた身体と心を休めている、壮大な山々の景色を眺めながらの温泉は癒やしそのものである。

温泉からあがり爽快な気持ちで、土産ショップを歩いていると、棚に並べられた6対のこけしがこちらを見て微笑んでくる。

30センチくらいだろうか?たくましくもあり、優しい雰囲気を醸し出している。

気の温もりが伝わってくる。

さっそく手にしてレジへ持っていく。

レジのお姉さんは愛想良くプチプチでこけしを包みながら鼻歌を歌っている。

私は10年ぶりにこのレジの娘に恋心を持ってしまった。

財布から五千円札を取り出して渡し、お釣りはチップだからとっておくようにと言って、断る娘から半ば逃げる形で旅館の方向へ足早に歩いて行った。

いつぶりだろう?高校生の時に好きな子に告白して返事を聞かずに立ち去った青臭い思い出が蘇ってきた。

旅館の部屋についてから、箱からこけしを取り出してプチプチを破いて、こけしを手にして顔を眺めていたら、

なんだかレジの娘に顔が似て見えてきて、犯罪を犯している気持ちになりドキドキしていた。

腰の高さより少し低い棚の上にそのこけしを置いた、

こけしはこちらを優しい眼差しで見つめてくれる。

そして、お茶を飲みながら楽しい時間を過ごした。

私は今、ただお茶を飲んでいるだけなのに、こんなに幸せな気持ちでいられるのが嘘みたいであった。

静かな時間が流れていく。

そーしていると、コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえてきた、床をギィギィと音を立てながらドアに向かいドアを開けてみると、なんとさっきのレジの娘が立っている。

私は、どうかしましたか?としか言葉に出来なかった。

娘は、恥ずかしげに私にこう言ってきた。

『おじさん、私、実は副業でカウンセリングもしているだ、おじさん、なんかスゴい悩みありそうだから、どうかな?って思って。今はキャンペーン中だから通常価格1時間1万円の所、五千円で受けれますよ』


先程チップをはずんだからお金持ってるカモと思われたのか?


はた又、副業ではあるが本物のカウンセラーなのか?

私は、混乱した。

『じゃ、じゃあ、とりあえずキャンペーン価格で、お、おさわりは?』って意味のわからない返答をしてしまった。

カウンセリングを受ける事を決めて先払いでお金を渡し、部屋に入ってもらうように促すと、娘は旅館のラウンジ的な場所で待っているから準備して来るように言われた。



私は、急いで浴衣に着替えていると、棚の上に置いているこけしがこちらを見つめ笑っているように思えた。





こけしは、口ほどにカウンセラー以上に物を言う。