小学生の時、秘密基地作りにはまったことがある。

始まりは「傘」だった。

 

近所の友達と広場で遊んでいたときのこと。雨が降りそうな日だったのか小雨が止んだ隙だったのか、皆傘を持ってきていた。開いたままの傘を二つ三つ重なっておいてみると、その下には傘に守られたような空間が出来る。部屋みたいだね、というと誰かがレジャーシートを持ってきて、その上に傘部屋を作った。靴を脱いであがればなんだかウキウキする。追加で大人の傘を家から持ちより、大所帯を作っていった。

 

ほとんど人が行かない学校の裏手に、大量の古い机や椅子の山があった。木製の二人用の机から、スチールパイプでできた一人用の机に変わった頃なんだと思う。傘ハウスを知らない学校の友達とふたりで、その廃材置き場の二人用の机や椅子を組み合わせると、「傘ハウス」などとは比べ物にならない立派な隠れ家が出来た。

 

傘は「柄」が邪魔だ。体育座りでじっとしているのが関の山だが、机ハウスは中腰で入って、中を二人が移動できる。給食のパンをちょっと残して、放課後そこで食べたりした。本は薄暗くて読みづらかったが、あやとりくらいなら出来た。子供心に、用務員のおじさんに見つかったら叱られるかな、と考えて基地が発見されるかどうか調べるため、遠くから角度を変えて念入りに眺めたりした。

 

その頃、家の近くの遊び場に「ファンシーケース」がすててあるのを発見した。簡易洋服ダンスのようなものでハンガーラックにビニール製のカバーがかかっているものだ。雨からしっかり守ってくれそうだし、チャック(ファスナー)で閉じれば外から完全に見えないじゃん!・・・隠れ家に凝っていたわたしは部屋になりそうなその物件に一瞬ときめいたが、実際に入ってみると縦長であるため、くつろぐのには向いていないと気付きがっかりした。

 

同級生の家に遊びに行った時、その子の部屋があるにも関わらず、階段の下のスペースに手作りの机を配置して勉強部屋にしていた。灯りもバッチリついて、色々な工夫があった。本人よりそれを作ったお父さんがやたら嬉しそうに、自分の娘の友人であるわたしに自慢していたのを思いだす。めちゃくちゃ嬉しそうだった。おじさん、ほんとは自分の部屋願望があるんじゃないのかな、とか思った。