熱闘!後楽園 -78ページ目

5.15 全日本プロレス「RISE UP TOUR」開幕戦 by チャン・マメルトン

まずはアップが遅くなったことをお詫びしたい。参加者みなプロのプロレス記者ではないゆえ、ご容赦を…。

さて、どのくらいぶりだろうか、全日本プロレスの興行に足を運ぶのは? 確かジャイアント馬場さんの「引退」記念興行として東京ドームで行われた時以来だから、丸12年ぶりだ。

このドーム大会以降、全日本は分裂してノアが旗揚げ。一方、当時盟主だった新日本プロレスはアントニオ猪木に振り回され続け、そこから武藤敬司が電撃離脱。まさかの全日本プロレスの社長に就任し、後に一興行全体で試合を構成する「パッケージ・プロレス」を展開することで、一時は危機的状態だった団体を何とか存続させ続けている。武藤の新日本離脱に歩調を合わせて全日本に闘いの場を移した小島・カシンの姿は既になく、またシリーズ毎に“パッチワーク”の如く継ぎ接ぎでしのいでいた参加選手も、いつの間にか武藤全日本で生まれ育った選手たちが充実してきた。つまり、事実上の初観戦。名前は同じ全日本プロレスでも、目の前で展開される光景はほぼ初物づくしとなる。

「RISE UP TOUR」開幕戦。12時試合開始の少し前に会場に着き、当日券で入場券を買う。既に最も安いB指定:4000円席は完売で、残る席種は特別席の7000円とA指定の5000円。迷うことなくA指定を買って席に座る。ところがこの席が後ろから4列目。一列後ろからはB指定席。やはり前売りで押さえれば良かった。かなり悔しさが残る。

客入りは北・東・西は満席で、南は8割程度。北側真ん中最後列を潰して、スクリーンを設置。公式発表は1900人の満員。どの程度の利益が出たのか推計してみる。出場選手の多さを考えればある程度の収益が必要なんだろうが、果たしてそれに見合う試合やタレントを見せてくれるのか?


12時ちょうどに音楽が鳴り、黄色い派手なタイツを履いたマッチョが入場。大和タケシ、初めて見る。ご挨拶の後、各方向の客席毎に「ゼンニッポン・イヤァー」の掛け声。割と多くの観客が呼応している。“新生全日本”のファンは、ちゃんと定着しているようだ。

その途中でまたも音楽が鳴り、ブードゥー・マーダーズ(VM)の入場。メンバー全員でリング上を占拠し、総帥:TARUがマイクアピール。とは言え、特別派手なアジテーションを披露するわけでもなく、自軍のメンバー紹介とベルトのあるなし、ヘビーかジュニアかなど、初心者にもとてもわかり易い選手紹介。パッケージの中の、いわゆる「目次」なんだろう。このやり取りを見ながら、megane1964さんが5.4 DDTの項で書いていた『「団体、ユニット抗争」「ベビーとヒールの対立」に明け暮れるどこかの(どことは言わないけど)団体』は、ここではないかと思ったりする。でも、TARUってヒール役なんだけど、どうみても“良い人”が滲み出ているんだよなぁ。マイクでのしゃべりは、完全に話が上手い人の良い関西のおっちゃんである。出入りの激しい全日本マットにおいて、レギュラーの座を手離さないのは、このキャラゆえだろう。

次に当日のカード発表と各試合の見所を映像で見せてくれたのだが、やはり名は全日本でも隔世の感。こういう演出を許してもらえなかったのも、故三沢光晴が当時の全日本を離脱した理由のひとつになっているが、それでもここまで必要なのかな?という印象。


以下、各試合の簡単な印象を。

第一試合、登場したのはいきなり曙と浜亮太。何の説明も必要なく、ただデカい。これだけで見る価値がある。一方「王道トリオ」と紹介された対戦チームは、大森・太陽ケア・渕。相変わらず渕は白かった。つかみとしては十分だ。曙・浜はいるだけで説得力があり、渕も悪役商会時代の良い味を存分に残している。この辺に馬場さん時代の幻想を抱くのは、やはり全日本という名に由来しているのか。この中においてBUSHIと大森は余計だったと思う。hitomaro-exさんではないが、大森が気合を入れるほど、空回り感と寂しさを感じてしまうのはなぜなんだろう?

第二試合はジュニアタッグ。一転、反対側に来たようなマッチメイクだ。しかし、この試合が始まったのがすでに12時45分。最近の興行にしては長く、故にだるい。

第三試合は、VM・TARU組と鈴木みのる組。ヒールと世界一性格の悪い男と言われる、二人の盛り上げ上手による賑やかしタッグマッチ。TARUはすかさず観戦していた宮根誠司氏に突っかかり、負けじと宮根氏も応戦。勝負論はなかったものの、十分に楽しめた試合。

第四試合は、アジアタッグを巡る全日本対大日本の対抗戦。ワタクシ、最近のメインリングは大日本なので、他団体に出場した関本・岡林の試合内容や、客の反応などに大いに興味があった。見れば、客は二人に対し熱烈な声援やブーイングを送ることもなく、この点は4.28の大日本のリングにあがった征矢・浜組に対するものと明らかな温度差を感じた。大日本では「ストロングBJ」という看板でも、全日本では若手の範疇という価値基準のズレ故なのか? 
それ以上にアウェーのリングだというのを実感したのは、関本が新人・中之上の技をきちんと受けていることだ。大日本のリングであれば、そんなことはまずない。大介、ちゃんと仕事しているじゃないか! 試合は意地と意地、肉体と肉体のぶつけ合い。プロレスが持つすごさ、わかりやすさを最も表現する内容だった。個人的にはこの日のベストバウト。


休憩を挟んだ3試合は、6.21両国大会へのプロローグ。そのストーリーの始まりである。簡単に言えば、VMとKENSO・そしてグレートムタによる「ファンタジープロレス」。カズ・ハヤシとKAIによるJr.ヘビー級王座挑戦権をかけた、ジュニアに似つかわしくないゴツゴツした試合。そして、チャンピオン・カーニバル優勝者・永田裕志と三冠王者・諏訪魔による三冠ベルトを巡る闘いに、全日本と新日本の対抗戦要素を入れたタッグマッチ。

ここで最も印象に残ったのは、三冠王者・諏訪魔のふがいなさ。と言うよりは役不足感か。彼が団体の看板で良いのだろうかという物足りなさである。端的に表せば、弱い、説得力や存在感=信頼感がない、客の想像を超える粘りやファイトがない。比するなら「善戦マン」と言われた頃のジャンボ鶴田のほうが、遥かに良い。ここに今の全日本の弱点があると感じた。つまり数は揃っても、本当に託せる人材が育っていないのである。それを無理やり三冠王者に仕立て上げているのは、見ていてもねぇ。

一方で、永田・中西は相変わらず元気だ。主戦場・新日本は棚橋・中邑・後藤など、30代前半の選手をメインに展開。そこからあぶれて全日本のリングに上がる永田・中西。野球評論家・野村克也氏が監督を務めていた当時“野村再生工場”と言われたが、彼らにとって全日本が再生工場のようだ。


この文章同様、興行もとても長くなり、終了したのは午後3時10分。一興行だけ見て「パッケージ・プロレス」が何たるかわかったとは思わないが、各試合に意味を持たせ、バリエーションを持ってマッチメークし、各選手が役割を全うすることは分かった。でも、やはり最後にどれだけ満足させるのかが、一番大切なことではないだろうか? 諏訪魔の責任は大きい。その意味で「画竜点睛を欠」いた印象が残った。
両国へと続く第一歩であることは分かる。しかし、次の一歩を期待させられなければ、その歩みを先に進めようとは思えない。この日の興行を見たどれだけの人が、果たして両国まで歩を進めようと思ったのだろうか? 


それ以前に、これだけの選手数は必要ないから、その分もう少し入場券を安くしてくれないものかねぇ。選手構成がシンプルになれば、もっと面白くなると思うんだが…




試合結果はこちら。
http://www.all-japan.co.jp/schedule/tour03.php?taikai_id=140

DRAGON GATE No.1 CHAMPIONSHIP 2011 by megane1964


熱闘!後楽園-megane1964 ドラゲーは劇団四季に似ている、と思うのです。


劇団四季は、ご存じ、あの年間ステージ数が3000を超す、国内きっての巨大劇団です。「キャッツ」や「ライオンキング」など、海外ミュージカルの「輸入版」とで有名だが、日本の演劇界の中で、いくつかほかにない特徴を持っています。


 ①俳優の技量が高い

 四季に入団するには、「歌」の役者なら音楽大学の声楽科卒業、「踊り」の役者ならバレエ歴10年以上、に相当する技量が必要と言われる。


 ②独自の観客層を開拓している

 「四季の会」というファン組織を持ち、数多くのリピーターを地方にまで獲得している。「他の劇団は見なくても、四季は必ず見る」という人も多い。


 ③独自のスタイルを確立している

 自前の劇場を持ったうえで、ミュージカルを中心にしたロングランシステムを確立させた。また、ロングランを行うために、特定のスターに頼らない興行形態も確立させた。


 ④基本的には、役者、スタッフは自前で養成している

 一部例外はあるが、四季の俳優は、大学などを卒業後、ここでプロになった人が多い。したがって、演技、歌、踊りなどの共通理解が高く、舞台に高い統一感がある


 どうです? ドラゲーもそうだと思いませんか?


 もともとプロレスラー養成学校「闘龍門」の出身者中心の団体だから、④はその通りですよね。ルチャ・リブレを基本にしたスピーディーで立体的なスタイル、という意味では③、神戸に拠点を置き、女性を中心に独自のファン層を開拓している、って意味では②。 ①もそうでしょう。ドラゲーの選手たちは、みんな高い運動能力を持っています。しかも、それを表現するために肉体を磨きあげている。劇団四季をある種の演劇エリート(というかミュージカルエリート)の集団とするならば、ドラゲーはプロレス界のある種フィジカル・エリートの集団なのです。


 ドラゲーナンバー1を決める「KING OF GATE」トーナメントの初日にあたるこの日、そのフィジカルエリートぶりを見せつけたのが、セミの六人タッグマッチとメーンの望月成晃対鷹木信悟戦でした。


 CIMA、土井成樹、リコシェ組とB×Bハルク、横須賀亨、スペル・シーサー組が対戦したセミは、「これぞルチャの真髄」ともいうべき空中戦。CIMAがシーサーを目の敵にしていた理由はナゾですが、素早いタッチワーク、全員の技術を誇示するようなスピーディーな飛び技で20分を超す試合をあっという間に見せました。ドラゲーの飛び技はすごいですよ。トップロープからのダイビングヘッドは2回転、3回転しているし、ドロップキックもスピアーもハイスピードの上に、異常に切れがある。丸めこみの技も多彩で、とにかく展開が早くて目まぐるしい。土井対ハルク、リコシェ対横須賀、CIMA対シーサーと次々と対戦相手が入れ替わり、終盤はシーサーがオリジナルの丸め技(ヨシタニックというのだそうで)を連発するのですが、一瞬の隙をついてリコシェがフォールを奪う。ルチャにはあまり知識のないワタクシでも、思わず拍手、拍手です。


 メーン出場の望月は、現在のオープン・ザ・ドリームゲート選手権保持者で、ベテランの人気選手。空手出身だけに、蹴りが得意。もちろん、空中殺法もです。一方の鷹木は、この団体には珍しく、アニマル浜口ジム出身とか。スマートで細マッチョなレスラーが多い中で、筋肉ムキムキの体は異彩を放っている。ジュニアヘビーではありますが、パワーファイトが得意なんだろうな、と思います。


 試合はその鷹木のラリアットと望月のハイキック、ふたりが得意技をぶつけあう展開になりました。何と言いましょうか、ジュニア時代の長州(力)さんと若いころの金本(浩二)アニキが戦ったらこんな感じになったかな、という試合。望月は鷹木の腕を責めつつ、あらゆる角度から蹴りを入れる。ラリアット(バンビングボンバーという名前だそうです)で応戦する鷹木は望月の三角蹴りを阻止しつつ、腕十字固めに来た望月をそのまま持ち上げるなどのパワーを披露する。最後は蹴りとラリアットでダブルノックダウンのすえ、10カウントまじかに望月が何とか立ち上がってKO勝利。18分を超す試合を終えたのでした。ま、そのあとは、CIMAら「ブラッド・ウォーリアーズ」の面々が乱入。次回、後楽園大会のカードを決める、というマイクパフォーマンスとなったのですけどね。携帯で撮った写真なので、分かりにくいかもしれないけでど、マイクパフォーマンスの様子も貼っときますね。


で、劇団四季に戻りますが、実はこの巨大劇団にも欠点がいくつかある、
熱闘!後楽園-ドラゲーマイク

と思うのです。①レベルは高いけど、個々の俳優の個性に乏しい②独自のスタイルを築いたがために、他の劇団との交流があまりない――。


 こんなところもドラゲーに似ているとおもうのですよ。アスリート性は高いけど、例えば全日本プロレスの浜ちゃんみたいな、ある種「規格外」の選手はいないのです。それに、望月選手以外に、他団体に出ている選手はあまり思いつきませんよね。鈴木みのる先生が、今週の「週プロ」に書いてますが、ドラゲーのファンには、ドラゲーしか見ていなくて、天龍源一郎先生が参戦した時に、このプロレス界のレジェンドを知らなかった人も多かったのだとか。そんなファン気質も、ちょっと四季に似ている気がします。


 そういうところ、実はワタクシは少し不満があるんですよ。芝居だってプロレスだって、ワタクシは舞台やリングの上に「異形の者」を見たくて通っているわけです。常識人がフツーの人にできることをしていても、ゼニを払う気にはならない。ここでしか見られないスーパーな人が、常識を超えた技を披露するからこそ、高い金を払う気になるのです。もちろん、四季やドラゲーにはスーパーな技はあるのですから、「個人的な好みだろ」と言われれば、おしまいなんですけどね。


 ドラゲーの公式ページに結果がアップされていないので、「スポーツナビ」を参考に見てくださいね。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/other/live/2011/2011051202/index.html


すごい、すごい by megane1964




熱闘!後楽園
えー、怒涛の3日間5大会開催も終わりまして、12日まで、ホールでの大会がない。大会がないと、更新ができない。では、さびしいので、雑談を。ワタクシだけでなく、他のメンバーもいろんなネタを、時に応じて出していく(はず)でございます。


 五月に新規開店した当ブログですが、実は3月ころから準備してまして、この3か月、ホールに通いづめだったのですよ、ワタクシは。今更、なので、3月、4月の大会レビューを書くのはよしにしますが、一人だけ、「あ、これ、書き落とすのはもったいない」と思ったレスラーがいる。


 4月28日、大日本プロレス興行で見たビッグバン・ウォルターです。


 身長195センチ、体重150キロの超ヘビー級。関本大介のWXW遠征の映像でちらっと見たことはあったのですが、実物を見るとこれがデカイでかい。


 28日の相手は河上隆一だったんですが、180センチ、92キロと、決して小さい方ではない河上が全然、小さく見えたほど。また、このデカイ体で、やることがハンパでない。


 ラリアット一発で、河上が吹っ飛ばされてしまうパワー。パワーボム一発でリングが揺れる揺れる。しかも、ちゃんとロックアップしてからのレスリングができる。顔なんか、まだお子ちゃまテイストも残っていて、どう見ても20歳そこそこ、なんですが、いやこれは本当にスゴイ。逸材、だと思いました。


 なにしろワタクシ、1990年代後半にWWEにどっぷりつかり、中でもお気に入りがミック・フォーリーで、あの例の伝説の「6メートルダイブ」をちゃんと見た(テレビでですけどね)人間なので、そこからの流れでインディー、特に大日本プロレスを愛好しているわけですが、もともとはアントニオ猪木先生の「金曜夜8時新日本」でプロレスの洗礼を受けたもの。バチバチのパワーファイトは大好きなのであります。いやあ、そんな人間だから、こんなモノ見せられるとねえ…。一気にビッグバン・ウォルター、お気に入り登録でございますよ。


 まあ、そう思ったのはワタクシだけではないようで、この日一緒に見ていたチャン・マメルトン氏と落語家の鈴々舎馬るこ氏は、5月2日の新木場にしっかり行ってました。関本からWXWのベルトを奪還したそうですが、「すごい、いい試合だった」とのこと。仕事でいけなかったわが身を恨みましたですよ。


 サムライの中継で須山浩継さんが「他の団体に取られないように、どんどん呼びましょう」と言ってましたが、まあ、メジャーに行っちゃうでしょうね,

いずれは。ただ、どうせ行っちゃうなら、関本とタッグを組ませて、…関本が岡ちゃん(岡林裕二)とのタッグを最優先にするなら石川(晋也)あたりと組ませて…全日本とか新日本を荒らしまわる、みたいなことを考えてほしいですね、大日本のフロントには。6月に関本がドイツでまた試合をするそうですが、会社休んでついて行こうか。なんてことを思う次第でございます。


 で、いろいろ検索してたら、このビッグバン・ウォルター、ゼロワンの練習生だったんですねえ。Gha‐cha‐pingって名前でガチャピンっぽいマスクかぶってデビューもしているんですねえ、2007年に。全然、覚えてない。当時の印象がある人がいたら、ぜひ教えてください。