【N o . 30】 ある国の経済が、
Y=C+I+G+X-M
Y=C+S+T
Y:国民所得、C:民間消費、I:民間投資
G:政府支出、X:輸出、M:輸入
S:民間貯蓄、T:租税
で示されるとき、ISバランス・アプローチにおける、この国の民間部門の貯蓄超
過、経常収支の黒字及び政府部門の黒字に関する記述として、妥当なのはどれか。
1 経常収支が黒字で、民間部門において投資が貯蓄を上回るならば、政府部門は赤字である。
2 政府部門が黒字で、民間部門において貯蓄が投資を上回るならば、経常収支は赤字である。
3 民間部門において貯蓄と投資が等しく、政府部門が赤字ならば、経常収支は黒字である。
4 政府部門の収支が均衡し、民間部門において投資が貯蓄を上回るならば、経常収支は黒字である。
5 経常収支が均衡し、民間部門において貯蓄が投資を上回るならば、政府部門は赤字である。
この問題では、微分とか意味の分からない計算を使って解説する方が多いようだが、本校では次のように解説している。
Y=C+I+G+X-M …①
Y=C+S+T …②
で、①ー②でYとCを消去すると
0=(I+G+X-M)ー(S+T)
⇒ I+G+X-M=S+T …③
となる。あとは不等式の計算だけ。
1 × 「経常収支が黒字 (X-M>0)」なら、③より
X-M=(S+T)-(I+G)=(S-I)+(TーG)>0 …④
ここで「投資が貯蓄を上回る(S<I)」 なら S-I<0 となり、④から TーG>0 となる。
∴ 政府部門は黒字になるので間違い。
2 × 「政府部門が黒字(GーT<0)」なら、 ③より
GーT=S-(I+XーM) ⇒ (SーI)ー(XーM)<0 ⇒ (SーI)<(XーM)
ここで「貯蓄が投資を上回る(SーI>0)」なら、
0<(SーI)<(XーM) ⇒ 0<X-M
となる。したがって、経常収支は黒字なので間違い。
3 × 「貯蓄と投資が等しい(S=I)」なら、 ③より
G+X-M=T ⇒ X-M=T-G
ここで「政府部門が赤字(T-G<0)」なら、
X-M=T-G<0 ⇒ X-M<0
となる。したがって、経常収支は赤字なので間違い。
4 × 「政府部門の収支が均衡(G=T)」なら、 ③より
I+X-M=S ⇒ X-M=SーI
ここで「投資が貯蓄を上回る(SーI<0)」なら、
X-M=SーI<0 ⇒ X-M<0
となる。したがって、経常収支は赤字なので間違い。
5〇 「経常収支が均衡(X-M=0)」なら、 ③より
I+G=S+T ⇒ G-T=S-I
ここで「貯蓄が投資を上回る(SーI>0)」なら、
G-T=S-I>0 ⇒ G-T>0
となる。したがって、政府部門は赤字(T-G<0)なので正しい