未曾有の出来事が起きました。今回の大震災で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された方への支援が行き届くことを願っています。

 みどり病院で義捐金を集めていたので、私も多くの額ではありませんが入れさせていただきました。

 また、岐阜民医連として、被災地にある宮城民医連に支援隊を出しています。
 延べ人数として、医師3名を含む12名が支援に出かけました。現在も支援隊が出かけています。
 全国の民医連からも続々と支援が入っています。

 被害の規模は大きく、支援は長期にわたって必要になることが予想されます。支援隊を入れ替えながら、岐阜民医連は今後も支援を続けていく予定です。長期間は難しいと思いますが勤務を調整して、私もいずれ支援隊に入れさせていただこうと考えています。


 さて、今回で2010年度の更新は最後になります。
 今まで通りの月2回の更新は難しいと感じています。
 更新は不定期になってしまうと思いますが、月1回は更新していくつもりでいます。
 今後ともよろしくお願いいたします。


 2月19日から20日にかけて行われた「若手医師のための家庭医療学冬期セミナー」に参加してきたので報告します。

 私が参加したワークショップは以下の通りです。
・一歩進んだポートフォリオ作成とその支援
・家族志向のプライマリ・ケア「実践編」
・家庭医療“超”入門
・BPSモデル(生物心理社会モデル:biopsychosocial model)とシステム理論
 
 ワークショップの内容と感想

●一歩進んだポートフォリオ作成とその支援
 ポートフォリオの定義は「ある領域における学習者の作業や進歩、達成を表現する学習者の仕事を目的意識的に集めたもの。これは、ポートフォリオの内容の選択、選択基準、判定基準、学習者の省察に、学習者自身が関わらなければならない」とあります。このワークショップの講師である藤沼先生はもうひとつの定義として、「家庭医療専門医に必要な知識・技術・態度・価値観を評価するためのパフォーマンス課題の達成を集めたもの」をあげていました。
 よいポートフォリオとは、必要な力を示すパフォーマンス課題に取り組んでいること、適切な症例や事例であること。
 パフォーマンス課題とは「リアルな文脈の中で、様々な知識やスキルを応用・統合しつつ何らかの実践を行なうことを求める課題」と説明がありました。
前置きが長くなりましたが、よいポートフォリオを作るために必要なパフォーマンス課題を参加者自身で(班に分かれて)作って見ましょうと言う事が今回の企画でした。

 私の参加した班の課題は幼少期・思春期でした。
 家庭医として、幼少期思春期の患者さんにどのようにアプローチできるようになれば一人前と言えるのか?小児科医との相違は?短い話し合いの時間で、結論は出ませんでした。
3つ課題を挙げることから始め、①ワクチン予防接種が出来る、②思春期の教育が出来る、③親とコミュニケーションがとれるが出されました(この3つが出来るようになって一人前なのかという疑問もあります)。
 更に一つについては、具体的な目標を立てることをしました。
 選んだ課題は①予防接種。
ゴールはワクチンを200本打つ(レジデンシー・東京でこれが一つの目標になっているそうです。ただし根拠なし)。
期間は、小児科・診療所をローテーション中の後期研修医の期間。
結果は、打った人の記録やワクチン接種のスケジュール立てた3例

 課題作り、課題をどのように達成するかについて共に難しさを感じるワークショップでした。藤沼先生曰く、これらのエントリー領域作りが知恵を絞る所と。

●家族志向のプライマリ・ケア「実践編」
 家庭医の特徴付ける3本の柱は、①患者中心の医療、②家族志向のケア、③地域包括医療。
 家族志向のケアは、個人だけの診療から家族への診療、生物・心理・社会モデルの展開をする。
 このワークショップの主は、ロールプレイを通じて対個人から家族図を作り状況を把握すること(個人だけの診療から家族への診療をイメージする)でした。
 患者シナリオは、20歳男性の腹痛。大学通学のためにアパートで暮らしている状況。
 医師役は、本人の状況をさらに聞きだす事(実は勉強が上手く行っていなくて留年寸前)、両親を事故で無くしている事、10歳離れた兄が隣町に住んでいる事(兄は弟のことをかなり心配しているが、心配が過ぎている様子あり)などを患者さんから聞いて腹痛の原因を理解できるかどうか(腹痛は過敏性腸症候群)でした。過敏性腸症候群で薬を出しているだけではいけませんよと言うメッセージ。

●家庭医療“超”入門
 タイトルが気になったので参加しました。
 内容は、今までに聞いたことのあるものがほとんどでした。
 受診した理由はもれなく聞く事は大切。外来診察の時間がかかってしまうのではないかとの疑問が出ますが、ほとんどの患者さんは60秒以内で話を終えたそうです(アメリカでの研究)。

●BPSモデル(生物心理社会モデル:biopsychosocial model)とシステム理論
 システム理論は未知の領域で、理解が及ばない所あり。
 システムとは?
 一般システム理論によれば、システムとは以下のようなものである。
 ・システムは互いに作用している要素からなるものである
 ・システムは部分に還元することが出来ない
 ・システムは目的に向かって動いている
 ・ひとつのシステムの中には独特の構造を持った複数の下位システムが存在する
 ・下位システムは相互作用しあいながら調和し、全体としてまとまった存在をなしている

 システムは互いに作用しているので、昨日の「解決策」から今日の問題が発生することがある。
解決のツボは問題から一見遠くにあることもある。レバレッジ・ポイント(小さな力で大きく構造を変えられる介入点)

 BPSモデルの利用レベル(ワークショップ講師の岡田先生の定義)
 1.患者の問題を生物、心理、社会とそれぞれの要素をまんべんなく考慮して臨床をやろうとするレベル
 2.生物、心理、社会などの要素が複雑に影響しあっていることを意識し、システム的にアプローチしようとするレベル(時系列パターンや構造を意識し、レバレッジ・ポイントを見出そうとする)
 3.医師自らも患者の問題の構造の一部であることを意識し、医師と患者の相互作用も考慮した診療が出来る
  






 今回はThe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEのFEBRUARY 3, 2011から、Weighing the Benefits and Costs of HPV Vaccination of Young Menを読んでみたいと思います。

 Weighing the Benefits and Costs of HPV Vaccination of Young Men(若年男性のHPVワクチン接種による利益と費用を秤にかける)

 性行為でのヒトパピローマウイルス(HPV)感染は、毎年アメリカにおけるおおよそ20000件の浸潤癌の一因となっています。約50%が子宮頸癌、残りが膣、外陰、ペニス、肛門、口腔内、口腔咽頭部の癌です。HPV関連癌の少なくとも25%が男性に起きています。しかしながら、男性と性行為を持つ男性のようなサブグループは、明らかに肛門癌のようなHPV関連病の明らかに高い割合を持ちます。HPVの腫瘍発生タイプは、ほぼ全ての子宮頸癌、肛門癌のケースの90%、残りの癌の僅かな割合で、原因となります。これらの癌の大部分は、2つのタイプ、HPV-16と18であるとされています。非腫瘍発生タイプ、HPV-6と11は、毎年アメリカでおおよそ性器いぼ340000件を発生させます。
 HPV-16と18をターゲットとした高い効果を持つ2つの予防ワクチンが利用可能です。1つはHPV-6と11にもターゲットを持つ四価ワクチンです。この点でのHPVワクチンの有用性を考えるエビデンスは少女と女性のHPV感染と疾患の予防の焦点ではありますが、このジャーナルの号(ページ401-411)でGiulianoらによって出されたデータは、少年と男性のHPV関連疾患を予防するHPVワクチンの可能性を肯定しています。調査者は、16歳から26歳の若年男性において、外性器病変や性器いぼはもちろんのこととして、ワクチンに含まれるHPVタイプの感染を予防する四価HPVワクチンの効果を報告します。
 これらのデータはアメリカの若年男性の性器いぼの予防に対する四価ワクチンの食品医薬品局(FDA)によって2009年の承認を導き、the Advisory Committee on Immunization Practices(予防接種実践における諮問委員会?)(ACIP)からのその後の推奨を導きました。ACIPは9歳から26歳までの少年と若年男性のワクチン使用の許可に対して連邦防疫センター(CDC)に助言を与えました。11歳から12歳(そして9歳と言う早い時期)の少女の定期予防接種は2007年以来推奨されているけれど、ACIPは青年期の少年のサポートする定期のHPV予防接種を思いとどまりました。しかしながら、委員会は資格ある18歳以下の少年の子供プログラムに対してCDCワクチンによって財政的な運用を推奨しています。これらの決定が作られて以来、四価HPVワクチンが男性の特に男性と性行為を持つ男性の肛門癌の前癌病変や肛門上皮内癌の予防に有効という最新のデータが示されました。この新しいエビデンスに基づいて、FDAは最近両性と性行為を持つ人達への肛門部病変、肛門癌の予防を含めて四価ワクチンの拡大使用を認可しました。決定は若年男性への定期HPV予防接種の枠を超えて、議論を再点火しています。
 このような定期予防接種に対する議論は、当然ながら性特異的なものから性中立性の予防接種信念へ移行することで達成するさらなる健康利益へ広がっていきます。少年や男性の予防接種は少女や女性の健康利益を強め促進するだけではなく(すなわち、男性のHPVの流行を減らし、それゆえ彼らの性パートナーへの感染が減る)、今や少年や男性自身へ直接的な利益があるという明らかなエビデンスがあります。若年男性の定期予防接種に賛成する別のポイントとしては、性に公平な背景から、男性女性ともの予防を得る負担の分配の点から、望ましい状況を含みます。なぜなら、男性女性ともHPV移行の責任を持ちます。ハイリスクサブグループ、すなわち男性と性行為を持つ男性は若年層でターゲットにされない(ワクチンの能力が期待される最大値とした時)と言う懸念はそれゆえ全ての青年期男性のワクチン接種と言う信念で守られることがベストかもしれない。そして少年と男性の予防接種は実際に少女や女性間のワクチン接種を増加させるかもしれないと言う可能性-ACIPと定期予防接種を推奨しているAmerican Cancer Society(米国癌学会?)のような専門機関からのガイダンスにも関わらず、アメリカでの青年期少女の接種は低かったです。
 大切なポイントはありますが、別の考慮する問題はより注意したアプローチを支持します。第一の点として、女性におけるHPV関連の癌より、男性のそのような癌の(そしてワクチンの効果の)自然経過について知られていません。第二の点として、片方の性別の人の接種がどのようにもう一方の性の人に影響を与えるかについては言うまでも無く、若年男性間のワクチン接種が何たるかを予想する事は困難です。第三の点として、HPVに以前に曝露された人のワクチンは減弱した効果にも関わらず、男性と性行為を持った年を取った年代(26歳以上)の男性のワクチン接種は、的を絞った戦略がより実行できそうな時、肛門癌の発生率は依然として減少し、費用に対してよい効果を与えたという最近の分析が示されました。最後の点として、若年男性の定期予防接種は、若年女性の定期予防接種より対費用効果が低いと言うエビデンスがあります。
 ACIPは複数の考慮する問題に基づき、青年期男性の定期予防接種の推奨を決めていません。それの1つは、対費用効果の魅力が低いと言う概略があります。いくつかの対費用効果分析は、少女だけのワクチン接種と比較した時、質調整生存年(QALY)あたり10万ドル(1つの見積もりのよると、QALYあたり100万ドル)以上の費用がかかり男女共のHPVワクチンは対費用効果がないと示しています。しかしながら、これらの分析は、若年女性の接種率が低い時、若年女性のHPV予防接種プログラム内で若年男性を含む価値は高いと示しています。米国での少女と女性の接種が期待より低い(2009年CDCによると青年期女性13歳から17歳で44.3%が少なくとも一回はワクチン接種して、26.7%が全ての3回の接種をした)ので、少年と男性のHPVワクチン接種はこの時点で対費用効果があるかもしれません。しかしながら、2007年に推奨が出されて以来毎年、少女と女性での接種が増加するならば、私達は少年と男性のワクチン接種の対費用効果は時間と共に減っていくと予想します。
 対費用効果分析はお金に対して最も価値を生み出す介入を確認するために使われます。公衆衛生ポリシーを知らせるために対費用効果分析を使うことによって、資源は無限ではないことやドルを消費する機会費用があることを認めます。1シリーズにおおよそ$400最近の価格(ワクチンの中でも最も価格の高い1つ)での少年と男性にHPVワクチン接種を投資する事によって、私達はよりすばらしい健康利益を獲得することの出来る基金の使い道を見逃してしまうかもしれません。それゆえ、基金のこの使用は同じ疾患に対しての別の介入の使用(例えば肛門の細胞スクリーニングや治療改善)と比較されるべきです。他の疾患の介入に対しても同様です。今後の分析は、HPV関連疾患予防に対して公衆衛生のお金の最良の使用を決めるために、HPVワクチンを単独か複合するか、別の戦略の相対的な利益や費用を評価する必要があります。
 Giulianoらの報告は、女性と男性の両方の健康を改善するためのHPVワクチンに対しすばらしい能力を賞賛する理由を私達に与えてくれます。そして、一般的な予防接種に対する熱意は、最初にはワクチンの安全性や効果、予防期間(接種の受容性や費用も同様)についての不確実な点から和らぎますが、要因の多くは、将来に良好に変わる事が出来ます。例えば、もし有用性のエビデンスが蓄積したならば、ワクチンの価格が低下したならば、または少女や女性の接種率が低いままであったなら、若年男性の定期予防接種の対費用効果プロフィールは改善します。
 健康サービスと介入から集団への健康の利益を最大限化するために、私達は可能な限り効果的に資源を使う責任があります。加えて、米国での比較効果分析の最近の優先順位を強調するのと同様に、ヘルスケアへの投資の見返りを改善する事は21世紀での不可欠な義務です。影響ある新しいデータや新しい技術が利用可能になっていく中で、それらは疑いなくHPV関連疾患の予防とコントロールの点で利用可能になっていく中で、ポリシー決定に立ち返る事の責任は同様に大切です。

 
本文約は以上です。
 つくづく自分自身の英語力のなさを感じています。
上手く訳せていない所があります。申し訳ありません。

 読んでみての感想。
日本では、「子宮頸がん予防ワクチン」と名前がついていますが、男性にも効果があるようです。
特に男性と性交渉を持つ男性は、ワクチン接種の効果が期待できそうです。
残念ながら、男性に対して定期予防接種にするほどの対費用効果はなかったようです。

日本で使用されている「子宮頸がん予防ワクチン(=サーバリックス)」は2価(HPV-16と18)のワクチンです。したがって、性器いぼの原因となるHPV-6と11はカバーしません。
そもそも、日本でサーバリックスは男性には適応がないため、重篤な副反応が起きたとしても補償がありません。

男性が子宮頸がんワクチンを打ったほうが良いかどうかは、今後の経過によるようです。


 the Advisory Committee on Immunization Practices(予防接種実践における諮問委員会?)(ACIP)やAmerican Cancer Society(米国癌学会?)は、少女のHPVワクチン接種を推奨しています。

 岐阜市では、今年2月から子宮頸がんワクチン接種に対しての補助が始まりました。

「子宮頸がん予防(HPV)、小児用肺炎球菌、ヒブ(インフルエンザ菌b型)ワクチンの無料接種について」実施期間 平成23年2月1日~平成24年3月31日
 小児用肺炎球菌、ヒブワクチンも補助があります。こちらは男児も対象です。

 是非受けていただけるとよいと考えます。