ウインドサーフィンは自分自身
自分という人間を語るときには必ずウインドサーフィンが関係する
そして海を通じた様々な思いは必ず材木座海岸の丘から始まっていた・・・





色とりどりのセールが置かれる材木座海岸
小さな丘の上から海岸全体を見下ろす

太陽がぎらつく暖かい日
セールが太陽を反射し、私を照らす
私は目を細めてそれを眺める



ウインドサーフィンを始めた頃はドキドキの連続だった
鎌倉駅からバスに乗り、「飯島」で降りる
降りたら海岸まで小走りをした


今日はどんなことをしようかな
今日の海はどんな感じかな



頭がウインドサーフィンだけになっていた
楽しくてしかたなかったあの頃
丘から見渡す海の景色はレジャーパークだった

あの頃は毎日海に行けばそれで満足だった




だが時間が経つにつれ、徐々にウインドサーフィンとの向き合い方が変わっていった・・・



チームに所属している以上、意識は外部に移行していくものだ

ウインドサーフィンを楽しんでいる自分に疑問を抱くことが増えた
ウインドサーフィンをすることが苦痛に思えてくることも増えた

答えはわかっていた
でもそれをウインドサーフィンを楽しめない理由にしたくはなかった
心の中で何度も言い訳をする
丘の上から海を眺めた
海と分かり合えていない自分に気付いた
でも気付いたところで私は何も変わらなかった


それから月日が経ち、私はチームの代表としてウインドサーフィンをしていた

代表になってからは意識が格段と上がっていてやる気が体を追いつかなくするくらい夢中になって練習した

目標もあった
「インカレ出場」
勝つこと以外考えられなかったし考えたくなかった

でもその気持ちで丘から景色を眺めても
あの始めたばかりの興奮が生まれない
こんなに熱くなっているのになぜこみ上げてこないのだろうか
そう対話していたら決定的な言葉が浮かんだ

私はチームのためにウインドサーフィンをしている

自分のためではなかった
自分のチームのために練習していたのだ
だからどこかむなしさがあった


チームを去る日がきた
私は丘に立つ
景色を眺める

記憶の地になっていた

走馬灯のように景色からこぼれだす数々の思い・・・
私はこの丘からたくさんのことを学んでいた
それに気が付いた




私は再び丘に行くだろう
そのとき、丘の景色はどんな風に見えるのだろうか
テーマパークだろうか
海とわかりあえていないのだろうか
色あせたものだろうか

それとも・・・