米軍基地の奥様の英語教室だったので、
基地の入り口を抜けたら、まさにそこはアメリカだった。

綺麗な街並み、広い道路、大きな家が立ち並び、まさに日本の中のアメリカがそこにはあった。

英語を勉強するというより、アメリカの生活を体験するという方が正しいかもしれない。

ある日、先生の家でチョコチップクッキーを焼いていたら旦那さんが軍の制服を着てキッチンに手をかけて斜めに立っていた。
「わぁ映画みたい」とその光景が焼き付いている。

帰宅したところで、つまみ食いをいっぱいして、先生がジョークを言って、皆んなで笑って、なんだかアメリカのホームドラマの中に自分が入ったようなわくわくした感覚だった。

その頃はまだインターネットも普及していなし、今ほど外国人もいなかったので、本当の異文化を肌で感じることが出来た貴重な体験だったと思う。

そういう意味では、言葉を覚えるという部分ではないけれど、大きな役割があったと言える。

広い家に、見た事のないお菓子に飲み物、映画に出てくる様なインテリア、玄関から一歩踏み入れた瞬間に感じる蒸せ返るような香水の匂い。

今のように輸入食品も少ない時代、初めて口にするお菓子にも強烈な印象を抱いた。

小学生だった私はますます、外国と言うものに憧れを抱き、英語を話したいと思ったのでした。

つづく