こんにちは☀

冬の寒さの底のような毎日ですね。

皆さまお元気ですか。

心の旅の列車の車中より、スポット記事をアップさせていただきます。

先日、キネマ旬報シアターで濱口竜介脚本・監督の映画「PASSION」を観てきました。

こちらは2008年、濱口監督の東京藝術大学大学院映像研究科在学時の卒業製作の

作品になります。

卒業製作っといってもレベルの高い完成度があって、下手な商業映画よりずっとずっと観ごたえのある作品でした。

製作は東京藝術大学になります。

画像はすべて、キネマ旬報シアターさんのTwitterからお借りしました。

ヒロインは、映画「偶然と想像」の第三話「もう一度」に主婦役で登場した河井青葉さんです。

卒業製作といってもプロの役者さんたちに出演してもらって撮られるのですね。

「偶然と想像」でこの女優さんを観た時、石田ゆり子さんに似ているなって想いました。

「偶然と想像」の製作からさかのぼること、約10年前の河井青葉さんは、同棲する男と結婚することを決めた、29歳の進学校の私立中学校3年生を担任する教師の果歩役を演じられました。

登場人物は29歳前後で、結婚、出産など人生の岐路に立つ大学時代の同級生を中心にした男女たちの群像劇です。

濱口監督がこの映画を撮られた大学院時代のご年齢と重なります。

濱口監督は大学ご卒業後、一度映画や映像の製作現場の世界に入られて、社会経験をされたあとに、再度、東京藝術大学大学院映像研究科に入学されて、映画づくりを学ばれたこと、プロフで拝見しました。

濱口監督の作品は、「偶然と想像」、「ドライブ・マイ・カー」、「ハッピーアワー」、「親密さ」と、昨年暮れから観てきましたが、この「PASSION」も今まで観てきた4本にひけをとらない、心に響く作品でした。

真実を見極めようと苦悶する若い登場人物たちのPASSIONが半端なくつたわりました。響きました。

特に私は、河井青葉さん演じる、進学校の私立中学校3年生の教師、果歩が、いじめで自殺したらしい男子生徒への暴力を教室で生徒たちに問う場面が強烈に心に残りました。

か弱く、可憐で華奢な教師の果歩が、黒板に筆圧強くチョークで書きながら、暴力について生徒たちと対峙して、内からの暴力、外からの暴力を弁証法のように強い口調のロジックで問いただします。

この果歩の問い詰めに、自殺した男子生徒へ暴力を加えたことのある男女の生徒たちが、次々と席から立ちあがってゆくシーンは、どうにもならない戦慄感を感じました。

前日、果歩が同棲している婚約者の男が、果歩には内緒で他の女のもとへ遊びに行って、何も知らずに夜明けまで男を待ち続けて一睡もしていなかった果歩、という伏線がありました。

不眠の果歩が、2月期最後の授業のホームワークで、意を決して捨て身で暴力を生徒たちに問いただす、果歩の心の内なる叫びのシーンは圧巻でした。

「頭と心と体が、全部バラバラ」。

現実の前に打ちひしがれて、途方にくれて、家のリビングのソファで婚約者の肩に寄り添い、か細くささやく果歩の言葉が心に刺さりました。

「PASSION」はシナリオ作家協会が選んだ2008年の「年鑑代表シナリオ集」の10本の中に選ばれていました、

早速図書館で借りてきました。

「PASSION」のシナリオが読めます。

濱口竜介監督の卒業製作の脚本が、商業映画でもなく、観られる、読まれる機会も少なかっただろうに、選ばれたシナリオ作家協会のシナリオ集編纂委員の方たちはすごいです。

14年後、こんなにご活躍される濱口監督へのエールになりましたね。

キャスト表も貼らせていただきます。

「偶然と想像」に出演されている役者さんが、河井青葉さんのほかに、占部房子さん、渋川清彦さんの計3名もいらっしゃいます。

占部房子さんは「偶然と想像」の第三話「もう一度」の河井青葉さんの相手役、渋川清彦さんは第二話「扉は開けたままで」の大学教授役でした。

濱口監督の映画は、人と人が向き合うことで、人の心の奥底に眠る心の言葉、真実の言葉、苦悶する言葉が、ふと零れ落ちてくる、炙り出されてくる、脚本、演出が素晴らしいです。

映画「ハッピーアワー」のシナリオが掲載されていて、「ハッピーアワー」がいかにつくられていったか、濱口監督の映画づくりのメソッドが記されている貴重な本、『カメラの前で　演じること』(左右社)も図書館にありましたので借りてきました。

「ハッピーアワー」も含めて、「PASSION」まで、濱口竜介・脚本監督の5作品は、それぞれに観ごたえがあって、どれもよかったです。

今は図書館にDVDがあった「寝ても覚めても」を予約しています。

今公開中の「偶然と想像」と「ドライブ・マイ・カー」、もう一度観てみたくなりました。

あっ、濱口監督の映画は、いろんな音が、船の汽笛や、遠くから風に運ばれてくる駅のアナウンス音などが映画の中に集音されているので、やっぱり映画館で観たいですね。

「PASSION」の予告編、貼らせていただきます。

こちらの作品は映画館で上映された時観るか、東京藝術大学が出版・発行している「2008年映像研究科卒業作品集」のDVDの中に収録されているそうです。

私はENBUゼミナールが製作した「親密さ」ももう一度観てみたいです。

130分の劇中劇も、また観たいです。

それではまた、心の旅に出かけます。

皆さま、お元気で。オミクロンにはお互い気をつけましょう。