今日は蘭亭序を臨書しました。




王羲之と『蘭亭序』 〜書の神様とよばれた人〜


書道の歴史を語る上で、避けて通れない人物がいます。
その名は王羲之(おうぎし)。
中国・東晋時代(4世紀)を代表する書家であり、「書聖(しょせい)」――書の聖人とも呼ばれる存在です。

王羲之の筆づかいは、しなやかで流れるような美しさと、内に秘めた力強さをあわせ持ちます。楷書・行書・草書など、あらゆる書体を高いレベルで極めた彼の書は、千年以上の時を経てもなお、多くの書家たちにとって臨書すべき“原点”とされています。

『蘭亭序』とは?

その王羲之が残したとされる最高傑作――それが**『蘭亭序(らんていじょ)』**です。

これは、西暦353年、春の麗らかな日、仲間たちと蘭亭という場所に集まって行われた「曲水の宴(きょくすいのえん)」で詠まれた詩をまとめた詩集の序文として、王羲之がその場で筆をとって書いたものです。

この文章には、「人生の儚さ」や「自然の美しさ」、「人との出会いと別れ」がしみじみと語られ、美しい行書の筆跡とともに読む人の心に深く響く内容になっています。

幻の原本

実は、この『蘭亭序』の原本は現存していません。
しかし、王羲之の息子・王献之や、唐の太宗皇帝などがこぞって模写したことで数々の「拓本(たくほん)」「臨書」が残り、今に伝わっています。

現在私たちが目にする蘭亭序の多くは、唐時代の忠実な臨書や拓本で、書の美しさはもちろん、王羲之の人間味や時代背景までもが伝わってくるかのようです。

書道家にとっての『蘭亭序』

『蘭亭序』は、「美しい」だけではありません。
その筆の動き、線のリズム、字形の変化――どれをとっても、「書の基礎」であり「理想」です。行書を学ぶ者の誰もが、一度は臨書するべき、まさに永遠の教科書です。

王羲之がこの序文をどんな気持ちで書いたのか。
それを想像しながら筆を動かすと、自分の中にも「書」と向き合う深い静けさが生まれてくるのを感じます。


さて話は変わって、ここからが今日の本題です。

飾る場所がない?書のある暮らしはもっと自由でいい。

「書の作品、好きなんだけど……飾る場所がないんです。」

作品展やイベント、また書の通販サイトなどで本当によく聞く声です。
「床の間がないから」「畳の部屋じゃないから」「なんだか難しそうで…」
でも、書道作品を飾るのに、特別な和室や床の間なんて必要ありません。

たとえば、
● ダイニングの一角の白い壁に
● 玄関のちょっとしたスペースに
● 寝室の照明の影にふわりと浮かぶように
● トイレや廊下に小さな作品をさりげなく

暮らしの中で「ここに何か飾りたいな」と思う場所こそ、書のある風景が最も美しく映える場所かもしれません。
作品サイズは“場所に合わせて”選ぶだけ

「うちは狭いから…」と思われた方もご安心ください。
大きな作品ばかりが書道ではありません。
はがきサイズ、短冊、豆色紙など、小さくても存在感のある作品はたくさんあります。
ほんの15cmの壁があれば、世界観を生み出すことができるんです。

もし壁が埋まっているなら、少しだけ空間を整理して。
あるいは季節ごとに作品を入れ替えて、今の気分にピッタリに楽しむのも一つの方法です。

自分で書いて飾るのも◎

最近では「自分で書いたものを、額に入れて飾ってみた」という声も増えてきました。
たとえ完璧でなくても、その日の気持ちを込めた一枚は、自分だけの特別な作品です。
気負わずに、自由に楽しんでみてくださいね。

最後に大切なことをひとつ

作品の飾り方にルールはありませんが、ただ一つだけ忘れないでほしいことがあります。
それは、作品には「敬意」を払うということ。

それが誰かの手によって、時間をかけて、思いを込めて生み出されたものなら、
どんな飾り方であれ、丁寧に向き合ってあげたいですね。
あなたの暮らしと心を、書がふんわりと包み込んでくれるはずです。