「じゃぁ始めよっか。」
スタッフのセットが完了したのを見て、松本がおもむろにバスローブを脱ぎ出す。
下はボクサー。
俺らは何もつけてねーのに!!
「皆も脱いでねー。」
風間がカメラの奥からのんびり声を出す。
雅紀とニノは躊躇いなく脱ぐ。
間で揺れるものも気にせずに……。
ほんとすげえな!アイツら!!
次に俺、最後に…戸惑ってる智くん。
「智、恥ずかしいの?脱がせてあげよっか?」
松本の言葉にイラッ!!として、
「智くん、おいで。」
「う、ん…。」
引き寄せてそっと脱がせる。
肩が見えた時、ドキッとした。
いやいや。
水着姿も、何ならブツも見てんのに何で肩位で。
全部脱がせると、そそくさとベッドに乗ってシーツを手繰り寄せる。
「翔くん」
不安げなまま呼ばれ、隣へ移動し、同じようにシーツを被せる。
「はは、いいね。恥じらいは大事だよ。これからもっともっと恥ずかしいことになるけど…。」
松本がニヤリと笑うから、ゾッとする。
だから、そのオーラ!やめろ!!
俺らが男役……なんだよな?
そう言ったもんな?!
「んむっ…?!」
「へっ?!」
隣から聞こえた雅紀とニノの声に視線を移すと、
生田とかいう奴が雅紀に濃厚なキスぶちかましてるところで。
「あっ…ん、ふぅっ……!」
ねっとりと、そして性急に 舌 が蠢いてるのが隣のベッドで見ててもわかる。
雅紀のがムク ムクと 大きくなってくる。
ニノ、呆然。
は?いや、そりゃね?
キス位するだろうけど、え、マジで???
つーかやっぱ…プロはすげぇの??
ぎゅっ…と突然手を握られる。
智くんが不安げに雅紀を見つめている。
「そんなビビんなくても」
からかうような松本の声に思わず身構える。
「あ、当たり前だろ!さっき会ったんだし、いきなりあんな濃厚な…!」
俺の反論に、松本がクスッと笑う。
「じゃぁ、2人がまずしてみなよ。キス。」
「はっ?」
「えっ?」
智くんと思わずハモる。
「だって、会ったばっかがダメなんでしょ?まず俺にされるのとオトモダチ同士でお互いがするの…どっちがいい?」
そ、そんなん……
智くんの方が…いい、のか…?
友達とキスって…
見知らぬ男とのキスのがまだ気兼ねなく出来る…?
あー、わっかんねぇ!
ちらりと智くんの反応を見る。
猫背の智くんが俺を少し下から眉を下げて見つめる。
その目は…どっち?
俺じゃ嫌?
それとも……。
「そんな見つめあってないで(笑)ほら、向こうは二宮くんに移ったよ?」
見ると、確かに生田が二宮の口内 を犯 している。
その隣では雅紀がぐったりと骨抜きにされていて。。
おい、雅紀!
情けねえなお前は!!
「俺も早くやりてぇよー。早く決めてくんないと、もう無理矢理 キスしちゃうよ?(笑)」
「いや、それは!」
でも、だからといって智くんといきなりキス?!
ハードル高くね~?!?
決めかねて頭を抱えていると、
「翔くん…が……いい……。」
消え入りそうな声で智くんが呟く。
え?
「俺…で、いい…の?」
なんかよくわかんねぇ聞き方になったけど…
バクバク早鐘を打つ心臓を悟られないように、そっと尋ねる。
「翔くんが良ければ……。」
ぼそぼそと言う智くんの言葉に、何故だかめちゃくちゃ嬉しくなって。
「俺は…全然……。」
すげぇ照れながら答えてしまった……。
キスごときで……。
「じゃ早くしてよー。進まないと、どんどん撮影時間延びるよ?皆待たせてるからね!」
松本の言葉にぐうの音も出ない。
深呼吸をして、智くんの方を向き、肩を持つ。
智くんがピクっと身体を縮こまらせたけど、覚悟を決めたのか、顎を少しあげて目をきゅっと瞑る。
「………。」
え、キスってどうやってしてたっけ?
こんなん、意識せずに挨拶がわりに出来てたのに。
男にするってだけで頭真っ白なんですケド。
あ、やべぇ。
マジで緊張してきた。
「…?翔くん?」
なかなか動かない俺に、智くんの目がパチッと開く。
「あ、ご、ごめん…その…」
緊張して…なんて、言えねえ!!
雅紀と女百人斬りを目指してたこの俺が!
たかだかキスひとつに、指ひとつ動かせないだなんて!!!!
あーーーくそっ!
不安がってる智くんをリードするべきなのに、何やってんだ俺!!!
「だ、大丈夫。する、するから。」
「…嫌だったら…」
「嫌じゃねぇから!!!」
食い気味に大声を上げると、智くんがふにゃりと笑う。
「良かった。」
ああ、神様!
智くんってこんな可愛かったっけ?
それともこんな見知らぬ男に囲まれた特殊過ぎる状況に身を置く俺の精神的オアシスと化した智くんの見せる幻影か??
スッと目を閉じ直す智くんに、また心臓がドッドッドッと過活動を始める。
つーか、可愛いって何だよ!
智くんは同い歳の男、だろ?
ノリだ、櫻井翔!
ノリでむちゅっとぶちかませ!!
よく考えたら、俺、合コンの王様ゲームで滝沢とキスしたことあんじゃん!
何をそんなに躊躇ってるんだ?
よし!
ノリで、ちゅっ!と!!
ノリで……!
「…………………。」
だ、ダメだーーーーーー!
出来ねぇーーーーーーーー!!!( ;∀;)
え?マジで何で?
意味わかんねぇ、何でだろう?
智くんが可愛いから?
…やっぱ見られてるから?
そうに決まってる。うん。そう!!
ぜってぇそう!!!
「翔くん、、ヘタレだねぇ。」
ククッと松本が笑う。
カーッと顔に熱が集まる。
そうだ、こいつの存在忘れてた…!
「5秒以内にしないと俺がしちゃうからねー。はい、5、4、」
「は、はぁ?!」
「3、2、」
や、やべえ、早くしないと…!
でも呪いにかかったかのように硬直して動けない俺の身体。
「1、」
ダメだ、ダメだって!!
智くんとキスするのは……
「……ゼロ。」
俺なんだよ───っ!!!!!
ふにっ。
……え?
俺、動いてない。
のに、柔らかい感触。
驚いて目の前の光景を確認する。
過去最大に近付いた、智くんのアップで……。
「…ごめん。おいら翔くんが良かったから…待てなかった。」
どこかバツの悪そうな智くんに、内臓がきゅうーーーっと締め付けられる。
いや、分かってるんだ。
俺が良かったっつーのは、松本が嫌だったってことだろ?
分かってるのに。
何でこんな気持ちになるんだろう。
「っ!」
またちゅっと当てに行く。
驚く智くんの顔を見て、いたたまれない気持ちになる。
「んふふ…何か、照れくさいな。」
だけど…
「しょ、…んっ!」
タガが外れたように、智くんの唇 に 噛み付くような キスをした。
一回したら、もう簡単だ。
後は本能に身を任せるだけ──。
背後で、スプリングがギシッと鳴った。