イエローペアン6 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


これを電車の中(隣おじさん、おばさん)でアップする私を誰か褒めて下さい←











大野の震える指がひとつ、またひとつとボタンを外す。


松本は口角を上げ、下目使いでそれを眺める。


「…俺を見ながら脱 げって。」


松本の声に、大野の手は止まる。


「誰のために脱 いでんのか、ちゃんとその目に焼き付けてよ。」


「……最低ですね。」


大野は嫌な顔を隠さずに松本を睨む。


「ん、イイ顔。折角可愛い顔してんだから、もったいぶらずに相手に見せるべきだと思うけど。ソソ るよ、その反抗的な目も…。」


松本がゆっくりと近付き、大野の顎を持つ。


クイッと上に向けられる間も、大野はじっと松本の顔を見つめていた。


──いいだろう。


大野は覚悟を決める。


何か一つでも、弱味を見つけるのだと。


そのために、どんな些細なことも見逃さない…。


(お前の挑発、受けてやる。)


松本が大野の真剣な目に、クッと笑う。


「キスする時にガン見するタイプ?まぁ、いいけど。そんな余裕無くしてやっからさ。」


「っ…」


大野は迫る影に反射的にぎゅっと目を瞑る。


(櫻井さんっ……!)


松本の半開きの口が大野のそれに当たる直前。



コンコン。



扉の音がぴたりと2人の動きを止める。


驚く大野に、松本は大丈夫だと視線を送る。



「今、忙しいから後にしてくれるかな。」


松本がそちらに向かい声をかけると、


「……俺です。」


低い二宮の声が扉越しに響く。


「ああ…」


ちらりと大野を見て少し考え、松本は溜息をつく。


そして、着ろ、と小さく呟いた。


大野は慌ててボタンを戻す。



「入れ。」


松本が服が戻ったのを確認し、面白くなさそうに言うと、すぐにカチャッと扉が開く。


「何の用かな。忙しいんだけど。」


松本はストンと椅子に座る。


二宮がちらっと大野の…胸あたりを見る。


ボタンがかけ違っていたのかと慌てて確認する大野を尻目に、二宮の視線はすぐに松本へ向く。


「皆川のバアサン、スナイプ手術を受けるとの噂を耳にしたもんで。」


二宮は感情のない目で、深く座る松本を見る。


『懐かない猫』。


先程そう表現した通り、二宮は今にも噛み付きそうな雰囲気だ。


「ふん。アイツら言うのがはえぇんだよ…」


「…松本教授。まさか、俺を差し置いてお楽しみ予定でしたか…?」


ニッと妖艶な笑みを浮かべる二宮に、大野はギョッとする。


二宮のそれで、一瞬で部屋の空気が変わる。


「…だとしたら?」


松本が薄く笑う。


「……別に?でも……」


松本に歩み寄り、その膝にゆっくり跨るように二宮が座る。


ギッと二人分の体重を受け止める椅子の音。


大野はその光景に息を呑む。


「オモチャの斡旋業者より、アナタの悦 ぶこと…俺の方が出来ると思いますよ…?」


ぐりっと 腰を 押し付ける二宮に、松本が嬉しそうに笑って髪を梳く。


「妬くんだ、お前も。」


「まさか。」


そう言い、二宮は松本の唇 に噛み付いた。



「んっ…ぅ、…っぁ…」


目の前で始まる痴態に大野が呆然としていると、二宮が視線で扉を指す。


ハッと我に返り、大野は「し、失礼します!」と教授室を後にした。





「何を考えてる?」


「…何がでしょう?」


二宮が服装を整えながら無表情に視線だけ松本へ向ける。


「何でアイツを助けた?」


「助けた?……ああ、あの斡旋業者ですか。」


二宮がやっと思い出したかのようにクスッと笑う。


「助けたつもりはありませんよ。ただ…俺は自分の居場所へ戻ってきただけです。」


『居場所』などという甘い言葉に松本が気を良くして、腕を広げる。


抱 きしめてやろうということだと簡単に理解出来たが、二宮はふっと笑う。


「黄金の腕、ちゃんと労わって下さいよ。火遊びは控えてもらわないと。教授のオペを待ちわびる患者は山程いるんだから。」


二宮は何事も無かったかのように、身を翻して出ていった。



「…懐かないねぇ…。」


松本は喉で笑い、床に落とした白衣を羽織った。


デスクの上では、真っ黒なペアンが飾られている。


松本のみが使うことを許される漆黒のペアン。


『ペアンを使う』ということは、手術の成功を意味する。


松本にとっての、象徴だ。


「…二宮、悪いな…。」


松本は苦しげな表情でブラックペアンを撫でる。



「俺は、お前の息子を……。それでも、この秘密は絶対に守るから……。」







「二宮先生、あの…。」


「んだよ?」


二宮が住み着いている仮眠室で待ち伏せをしていた大野は、声をかけておいて戸惑った表情を浮かべる。


二宮は露骨に眉を顰める。


「その…さっきは…」


「ああ。別にアンタのためじゃないから。」


二宮が大野の脇を通り抜け、どすんとソファに腰掛ける。


「…いつから?」


「…お前に関係ねぇだろ。」


「そうですけど…」


大野が拳をぎゅっと握る。


「…好き、なんですか?松本教授のこと。」


「はぁ?まさか。真逆だよ。」


真逆。


その意味を理解しないまま、大野は口を開く。


「……なら、逃げて下さい。ここを辞めたら良いだけの話でしょう?」


「お前に関係ねぇだろ。つーかさっさとあのオモチャ持ってここから出てけ。邪魔。」


二宮が近くにあった服を手繰り寄せ、顔に載せる。


これ以上喋りかけるなというボーダーラインを嫌という程感じた大野は、小さく


「とにかく…ありがとうございました。」


と頭を下げ、仮眠室を後にした。



「…俺の獲物だ。復讐が終わる前に部外者に横取りされてたまるかよ。」



二宮の消え入るような独り言は、空の仮眠室に吸い込まれた。