ニノが視界から消えると、翔ちゃんは小さい声で、「ごめんね」って呟いた。
「本当に嫌なら言って。いつでも止めるから。」
「翔ちゃん……。」
申し訳なさそうな顔に胸奥がきゅって掴まれる。
「じゃ今すぐヤメロ。」
「それは無理だけど。」
瞬殺。
また軽くキスされる。
キス魔か。
そしてそれを嫌と思ってない俺がいる。
いやそーじゃなくて、じゃぁそんなこと言うなよ!!
アメとムチの配分おかしいんだよ!!!
ガチャ。
ドアの開く音に翔ちゃんも俺も驚く。
「こちら、追加のタオルと加湿器でございます。」
あれ、本当にホテルの人?
声だけしか聞こえないからわからないけど、少なくとも俺の知ってる声ではない。
てゆーかよく聞きゃ女の人だ。
「あ、あぁ、ありが…」
「ありがとうね。」
ニノの戸惑う声に被さって聞こえたその声は。
「…松本?」
翔ちゃんの眉が歪む。
そう!まさに俺の救世主!!
「じゅ、潤くん、なん……」
「いやー撮影予定より早く終わったからさ。もう打ち合わせ始まってる?どう?あ、お姉さんありがとね俺が預かるよ。悪いね急にフロントから頼んじゃって。」
「あ、いえ、とんでもございません…!」
慌てて高揚した声のホテルの人が帰っていく気配。
松潤が頭でも撫でたのかな?
パタンとドアが閉まる。
「…アテは外れてないんじゃないの?」
今度は俺がニヤリと笑ってやる。
すると翔ちゃんは肩を落とした。
「やれやれ。智くんは一番面倒なハイエナくんに騙されたみたいだね。」
「は?」
「リーダー!大丈夫?!」
松潤が慌てて駆け寄る。
俺の状況を見て目を見開いている。
で…ですよね?
慌てて俺は足をサッと体操座りにして大切なところを隠す。
柔らかい手錠がまた俺の手の不自由さを痛感させる。
「た、助けて。松潤の言う通りだった。」
半泣きでそう言うと、松潤は顔を歪ませる。
「…最後までヤ ラれたの?」
「まだだよ!」
松潤が翔ちゃんを見る。
翔ちゃんは両手を顔の横まで挙げて身の潔白をアピールする。
「よかった…」
ほっと胸を撫で下ろす松潤。
あぁ、何て優しいんだろうこの男は。
さながら砂漠のオアシスだ。
俺の乾いた心に水を与えてくれる心の拠り所。
あの時声をかけられて、「部屋番号メール来たら転送しといて、ずっと返信なければ最悪助けに行くから」って言われてて。
助けにってそんな大袈裟なと笑いながらも一応転送しておいて本当に良かった。
これだよこれ。
付き合うって、こーゆー人を選ぶもんだろ?
何かもうめっちゃ好き。
愛してる松潤!←
「松潤……俺……」
「大体ぬるいんだよ翔くんもニノも。」
「…………は?」
「展開おせぇよ。俺が本当に助けに来てたらどーするつもり?まぁそのおかげで間に合ったけど。」
「え、本当に助けに…?な、何の話……?」
松潤の後ろからニノがため息をつく。
「潤くんはリーダー狙いじゃないでしょうよ。」
「俺は面白そうなことしてんのに誘えよって怒ってんだよ。でも狙ってないわけじゃないよ。リーダーのこと可愛いってずっと思ってたし。」
にっこり笑って俺の頭を撫でる松潤を呆然と見つめる。
「別に俺ら面白がってやってないのよ?本気で求愛合戦してんだけど。」
「リーダーが選んでくれたら付き合えるんでしょ?選ばれたらラッキー位の熱量だけど、楽しそうだから俺も混ぜろ!」
俺は開いた口が塞がらない状態。
「だから言ったでしょ。一番面倒なハイエナって。」
翔ちゃんがそんな俺に耳打ちした。
ま…待て待て待て。
つまり何だ?
この状況は、結局?
ライオンとチーターと、追加でハイエナに囲まれた鳥籠の中のオウム?
「…………絶体絶命?」
引きつった顔で三人の顔を見渡す。
「いや、大野さんにとっちゃボーナスイベント発生みたいなもんですよ。やったね!」
「そーそー、逆ハーレムじゃん。俺結構上手いと思うよ?」
「モテモテで困るなぁうちの姫は。」
姫じゃねぇし。
女でもねぇし。
ボーナスイベントでもねぇ!!!!
今すぐリセットボタン押させろー!!!!!
※メッセージで感想を送ってくださったS様、
「ハイエナ」って言葉がJにピッタリだったので
早速宣言通り使わせて頂きました♡
ありがとうございます~♡