「はぁぁ~~~。」
「でっっっかいため息だなぁ!」
「翔ちゃーん、苦しいよー」
「お前、人を急に家に呼んどいて何でそんな酔ってんだよ?!」
だってさ、だってさ?
飲まずにはいられないでしょ?
彼女には平手打ち喰らってフラれたし…
いや、そう持ってったのは俺だけどさぁ…
「何、またニノ?」
「またって何だよぉー!」
「何かある度電話やら呼び出しやらしてんのお前だろ!そりゃまたって出るわ!」
「翔ちゃん冷たい~」
「むしろあったかいだろ!今23時だぞ?!俺優しい~天使ぃ~」
「うぅ…ニノぉ」
「聞けよ!つーか俺が泣かせてるみたいじゃん!」
「そんな怒鳴んなくてもぉ~!」
名ばかりの彼女を追い出して、ついでにフラれて、ぽつんと家にいたらいたたまれなくなって翔ちゃんに電話しちゃった。
優しいんだよね、翔ちゃん。
毎回文句言いながらちゃんと聞いてくれるし。
頭いいからアドバイスしてくれるの。
でも言い回しが難しいし半分くらい聞いてないんだけどね。
こんな気持ち、翔ちゃんにしか言えないんだ。
だって…
俺ら、同志だから。
「ね、翔ちゃんはどう?…大ちゃん。」
「まぁ…相変わらずよ?」
何となく酔った勢いで翔ちゃんに言ってしまった俺の気持ち。
メンバーの将来について話してて、その流れで、ニノもいつか結婚しちゃうのかなぁって。
しかも半泣きで。
慌てて言い訳しようとしたら、翔ちゃんもポツリと「…智くんも…だよね…」って。
お互いあれ?ってなって、腹割って話して、良き相談相手になったってわけ。
俺ばっか相談してるけどね!
もっと泣き言とか言ってきてほしいよほんと!(何も出来ないけど)
「そんなに辛いなら、彼女作んなきゃいいのに。」
「でも…急に結婚とか言われたら俺、耐えられないよ。」
「だからって…今も耐えられてねーじゃん。」
翔ちゃんが苦笑いして缶ビールを飲んだ。
耐えられて…ないよね。
こんなの慣れないよ。
だって、仕方ないよね?
手に入らないのに、めっちゃ近くにいるんだもん。
すっごい好きなんだもん。
どうしようもないんだもん。
わかってくれるでしょ?
「…やっぱ…1回、ちゃんと伝えてみたら?」
翔ちゃんは毎回言う。
伝えるべきだって。
撒かない種は咲かないって言うの。
わかるんだけどね?
でも、咲いたってさ、刈られたり踏まれたりする可能性もあるんだよ?
俺はそれが怖い。
咲かなきゃ良かったって。
だって、太陽を知ったら、もう太陽なしでは生きられないでしょ?
土から出なきゃいいんだ。
そう思うんだよ。
恋焦がれてるだけで充分だって、そう言い聞かせるの。
それが一番平和で安心でしょ?
「…翔ちゃんこそ。言わないの?」
「俺は……無理だよ。でも雅紀とニノはなんか、大丈夫だと思うんだよな。」
「ずるいよ、翔ちゃん!」
「ですよねぇ~」
「…やっぱ、飲も!もっと!」
「バカっ!もう飲むな!禁止!!没収!!」
「俺の酒なのに~!!」
2人で笑う。
まだこんな風に笑ってたい。
5人で。
ニノと2人で。
これからもずっと。
彼女は、別れたら終わるから。
友達は、きっと終わらないから。