ある休日のことだ。

私は夫・息子と、伊丹空港近くの

伊丹スカイパークという公園に来ていた。


この公園は、伊丹空港のすぐ横にあり、

飛行機の離発着を間近で見ることができる。

空港の滑走路に寄り添った、細長い形の公園だ。


公園の中央部分には、噴水が設置されていた。

地面から直接水が噴き出るタイプの噴水で、

小さな子どもでも安全に遊べる。

まだ4月だが、たくさんの子供達が

びしょ濡れになって遊んでいた。

息子は鼻風邪をひいている。

びしょ濡れになられるのは困るが、

多少しぶきがかかるぐらいならいいだろう。

私はサンダルを取り出して、息子の足元にしゃがみ込んだ。


息子は噴き出る水に夢中で、なかなか足を上げようとしない。

靴の履き替えに手間取っていると、私のお尻に

「さわさわ」となにかが触れる感覚がした。


「雑草でも生えているのだろう」と思い、一旦無視した。

が、段々とお尻に冷たい感覚が加わってきた。

「おや?」と思うと同時に、夫が叫んだ。


「コウちゃん、水が!」


この噴水、近くに数箇所、マンホールのようなものがある。

マンホールといっても、

「マンホールだよ〜」みたいな見た目ではなく、

周囲と同じデザインの床材を使っているため

ぱっと見はマンホールには見えない。

そのマンホールには縦10センチ程の

楕円形の穴が空いており、

その穴から、噴水の水量調節で余ったか何かした水が

噴き出る仕様になっているようだ。


そこそこ広大な噴水広場に、

ごく稀に起こるイレギュラーな排水。

私は、たまたま、その上にしゃがみ込んでしまったわけだ。

慌てて飛び退いたが、時すでに遅し。

妖怪 尻濡れババアの爆誕である。


濡れる気なんてさらさらなく、

もちろん着替えは持っていない。

黒のジーンズを着ていたため、

濡れが目立たないということが不幸中の幸いだった。

夫に爆笑されながらも、濡れた尻をそのままに、

息子の公園遊びに付き合うしかなかった。


とはいえ、天気が良く、気温も高いと

意外とすぐ乾くもので、

家に帰る頃には、尻に排水が直撃したことなど

すっかり忘れていた。


そのまま晩ご飯を食べ、風呂に入る。

掛け湯をした時だ。尻に鋭い痛みが走った。

慌てて夫に尻の様子を見てもらうと

「尻の一部の皮がめくれている」と言われた。

自分でも確認すると

確かに、一部の皮が丸くめくれている。

初めは全く原因がわからなかった。

何かにぶつけた?

自分で掻いた?

可能性はいろいろあるが、思い当たる節がない。

今日一日の行動を振り返って、

尻へのなんらかのダメージがなかったかを探るうちに

ようやく、尻に排水が直撃した記憶を思い出した。


おそらく、濡れたズボンとパンツをそのままにして

歩き回っていたせいで

皮膚がふやけ、布との摩擦で皮がむけてしまったのだろう。

合点がいくと共に、自分の情けなさに

笑いが止まらなくなった。