『犬たちの神話と伝説』 | 手当たり次第の本棚

『犬たちの神話と伝説』

このタイトルから、どんな本を想像するだろうか。
犬族にまつわる神話とか伝説を集めた本?
たとえば、クーフーリンやル・ガルー、フェンリルにマナガルム、アヌビス神や、人間の皇女を花嫁にした「ばんこ」、などなど。

しかし、上に上げたような名前は、本書にはほとんど出てこない。

え。
犬の神話とかじゃないの?

うん、ちょっと違うんだ。
まあ、そういうものも収められてはいる。
しかし、本書のスタンスは、犬の品種ごとに、その血統や歴史、イギリスまたはアメリカでいかにその血統が認められたか、どんな犬なのかという事が主体であり、その品種の犬について伝えられている逸話、あるいは、その品種がいた(またはそこから来たと思われている)土地に伝わる神話や伝説に登場する犬が、「その品種ではないか」という推測がプラスされる。

言い伝えについては、いささか牽強付会なところもあるし、秋田犬の項目を見ると日本人なら誰しも「む?」と首をかしげたくなるような記述があるとおり、全て額面通りに受け取るのはちょっと危険に思える。

しかし、著者は、何よりもまず、動物行動学者だ。
従って、そういう逸話などは、「おはなし」として楽しみつつ、それぞれの品種について楽しく読むというのが、この本の最も良い使い方であろうと思う。
また、どの品種の犬が、人間とどうかかわろうとするかについても書かれているから、もしかすると、犬を飼う前に参考に出来るかも?


『犬たちの神話と伝説』 (ジェラルド&ロレッタ・ハウスマン著 池田雅之+伊東茂ほか訳 青土社)
2000年10月15日初版