『オズの魔法使い』 ……の、魔法 | 手当たり次第の本棚

『オズの魔法使い』 ……の、魔法


オズの魔法使いって、誰でも子供の頃に一度くらいは読んだ事があるんじゃないかな。私も、もちろん、読みました。だけど、好きかどうかと聞かれれば、「……?」
となってしまうのだ。

嫌い、というのではない。
でも、好きとも言い切れないのだよな。
なぜだろう?

つらつらと考えてみたのだけど、それは、オズの魔法使いが実は魔法使いではなかった、というラストにあるような気がする。
エメラルドの都は、実は、緑色のサングラスのせいだった。
それってさ。
「こちらのアトラクションは立体映像です!」
でも、入口でセロファンみたいなのを貼った、ボール紙の眼鏡を配るのな。
あの時の「なーんだ」にちょっと似てる。

つまり、魔法使いというものに期待する、「ワクワク感」。
それがあっさりと水をかけられて、失望してしまうわけだ!
それが……いやなんです。

では、なぜ、『オズの魔法使い』が嫌いじゃないのか?
それは、エメラルドの都の魔法使い以外のところに、魔法がたくさん、かくれているからだと思う。
たとえば、口のきけるライオン。
あるいは、動くブリキ男や、かかし。
口をきいて動くだけでなく、彼らは、心まで持っているよね。

そして、なにより、ドロシーの家をオズまで吹き飛ばした竜巻。
これが一番凄い魔法だと思わないか?
子供の頃、『オズの魔法使い』のどこが一番好きか。
もしそう聞かれたら、絶対に、
「竜巻!」
そう答えたと思う。

今でも、ラストのエメラルドの都はやっぱり好きになれないけれども、『オズの魔法使い』には、それ以外のところに、素敵な魔法が充ち満ちている。
それが、魅力の秘密だと思うのだ。

著者: ライマン・フランク・ボーム, 守屋 陽一, Lyman Frank Baum
タイトル: オズの魔法使い