わちふぃーるどの『四季の絵ばなし』 | 手当たり次第の本棚

わちふぃーるどの『四季の絵ばなし』


わちふぃーるどのいろいろな絵本から取捨選択して、加筆編集された物語集。
なんだけど、ひとつ注意しなければならないのは、元の絵本と違い、こちらは全てモノクロだということ!

絵ばなしというくらいだから、もちろん、絵と文章の両方で構成されているんだけど、ほとんど段落ごとにカットが入るという形。
絵本とも違うし、漫画でもないし、普通の小説とも違うし、なんとも楽しい形式になってるんだ。だから、元になった絵本を持ってるよ、と思っても、これは買って損がないぞ。
なんたって、文庫だから、絵本に比べて安いし場所もとらないしさ。

ここに収録されている中で、私が好きなのは、ウィザーロークを誕生の物語とか、ハロウィーンの夜の話。それから、茸摘みの話。

ウィザーロークって、もとは枯れ木のくせに、ダヤンにみつけられて生き物になってからは、(生き物といっても枯れ木である事にかわりはないので)なかなかお茶目でけなげで、好きなんだよなー。『ダヤンとジタン』 でなんか、ほんと、大活躍するんだ。

茸摘みの話は、ダヤンとマーシィがフォーンの森で、化かされちゃう話。ここでラストに出てくるフォーンの魔法よけのおまじないは、実際にヨーロッパで妖精に化かされるのを防ぐため、使われているものだったと思う。

そしてなんといっても、ハロウィーンの話!
ダヤンと、ダヤンのもともとの飼い主であるリーマちゃんは、ちょっと残念な別れ方をしてるんだ。リーマちゃんの誕生日に、たくさんの子供たちがダヤンと遊ぼうとしたために、うんざりしたダヤンは(猫って、子供の群にいぢられるのは嫌いなものだよね?)、家を飛び出しちゃったんだから。そのまま、ヨールカの魔法でわちふぃーるどに行く事になるんだけど、そんな経緯なので、リーマちゃんとダヤンは、ちゃんと「さよなら」も言ってなかったんだよ。

ダヤンはもともとリーマちゃんの事が好きなんだから、きっとその事は、心にかかっていたんだろうなあ。

月の上でリーマちゃんや、ジュダとカシス(これはダヤンの弟たち)、それにリーマちゃんのお父さんである善人のケントスさんたちに会えたのは、絶対嬉しかったはず! 夢だったのかどうかは最後までわからないけどね。

著者: 池田 あきこ
タイトル: わちふぃーるど 四季の絵ばなし