Fuck Boredom Let's ××! -2ページ目

三島由紀夫。

手術が決まると急に慌ただしくなった。

手術室が空き次第すぐに手術に入るそうで

先生があちこちに電話をし手配をしている。

何しろ緊急な上に休日の夜間帯でスタッフさんも少ない。

後で聞いた話では予定帝王切開なら

こんな日こんな時間には絶対に手術しないという。


すると先生から手術室が17時くらいに空くので

17時過ぎには手術を始めますと言われる。

腹を括ったといっても初めての手術にかなりビビっていたので

『こんなに早く!?まだ心の準備がっ!』 とは思ったものの

これを逃すと次はいつ入れるかわからないと言われたため

「わかりました、17時過ぎですね…。」 と答え、いったん病室に戻る。


手術が始まるまで少しゆっくりしようと思ったが

病室に付くなり服を着替えるよう指示され、その後陰毛を剃られ、

一息つく間もなく、レントゲン技師が機械を持って

病室にやってきてその場でレントゲンを撮ったり、

(手術の前のレントゲン撮影は必須とのこと

胎児に放射線が当たらないよう

腹の上に鉛の遮蔽板を置かれたが、これが地味に重く辛い。)

手術の説明を受けたりで忙しい。

配偶者は配偶者で売店に腹帯などを買いに行かされたり、

一緒に手術の説明を受けたり、同意書にサインをしたりで忙しそうだ。


そうこうしているうちにあっという間に手術の時間になる。

車椅子に乗せられて手術室へと向かう。

配偶者もついてきてくれたが、

手術室のある階の入口に差し掛かると

戻って病室で待つように言われてしまう。

手術室の前に待つスペースがあると思っていたのだが、

看護師さんいわく、あれはドラマの中だけの話らしく

総合病院では普通1フロアにいくつも手術室があるので

ICUに入る患者の付き添い以外の待つスペースは無いらしい。


配偶者と別れ、ついに手術室に到着し手術台の上に乗る。

ここで服を脱がされ全裸にされる、寒い。

しかも手術室の入口に向かってM字開脚のような格好にされているので

入ってくる人に対して局部が丸出しになっていて、どうにも居心地が悪い。

すると今度は手術台の上で丸くなるよう指示される。

手術台は狭い(普通のベットよりだいぶ狭くて体がちょっとはみ出る)し、

お腹が大きいのと陣痛があるのでなかなかキツい。

ようやく丸くなると、背中に麻酔を打たれる。

痛みは思ったほどではないが、背骨に沿ってニョロニョロと

管が入ってくる感じが何とも言えない気持ち悪さだった。


この辺りからいよいよ恐怖感が最高潮に達し

手が冷や汗で湿り、唇が震えてくる。

この頃から麻酔も効いてきてだんだん足が動かなくなるが

さわられてる感覚は残っているので

『本当に麻酔が効いているのだろうか…?』 と、不安がさらに大きくなる。

すると先生がお腹に針を指してきた。

「痛いですか?」 と聞かれる。

この時点ではまだ少し痛かったので、正直に痛いと申し出る。

少し時間を置いてまた針を刺される、今度は痛くない。

麻酔はちゃんと効いているようだと一安心する。


そして手術が始まった。


ジャキンッ!ジャキンッ!腹の切られる音がした。

しかし麻酔がしっかり効いていなかったようで、切り傷のような痛みがする。

『マジかよ!さっき針刺された時はは痛くなかったのにっ!』

かなり焦り、パニックになりかける。

なぜか最初は 『もう手術が始まっているんだし。』 と我慢しようと思ったが

『もし、このまま手術が進んだらもっと痛くなるかもしれない…。』 と

恐怖を感じ 「痛いです、痛いです!」 と申し出る。

執刀医の先生が 「この状態でどうしよう。」 と話しているのが聞こえる。

するともう一人の先生が

「今から追加で薬を入れますね、これ入れたら寝ちゃいますから。」 と言い

全身麻酔に切り替えることになった。


薬が入った瞬間、頭上のライトがグニャリとかすみ、そのまま意識を失う。

しばらくすると 「オギャア!オギャア!」 と産声が聞こえてきた。

先生が肩を揺すって 「産まれましたよ、元気な男の子です。」 と話しかける。

その声を聞いて目を開けようするが、麻酔が効いていて上手くいかない。

薄ぼんやりと赤ちゃんの形が見えたがハッキリとはわからない。

もう少し目を開こうと思った矢先、激しい吐き気に襲われた。

「気持ち悪い、気持ち悪い。」 と吐き、

吐しゃ物を受け止めるお盆をひっくり返したところで

また意識を失ってしまい、子供を抱くどころか顔すら見ることができなかった。


結局、全身麻酔だったのに3回も目が覚めた。

2回目は耐えられないくらいの寒気で、3回目は痛みだった。

ちょうどお腹を縫っている最中だったようで痛くて仕方なく

『早く終われ~っ!』 と思いながら、うわ言のように

「痛い…。痛い…。」 と繰り返していると、笑気ガスをあてられた。

『このガスを吸えば楽になれるんだ!』 と必死で吸い込む

そしてようやく意識を失うことに成功し、そのまま手術が終わった。


誰も知らない。

先生がくるまでの間に看護師さんに熱を測るよう言われる。

結果は38度9分。

別に風邪など引いてなかったのに

こんな高熱が出ていることに驚いたが

看護師さんも驚いているようだった。


「頭が痛いとか、喉が痛いとか、咳や鼻水が出るとか、

関節が痛いとかありませんでしたか?」 と

3回くらい聞かれたが、何の症状もなく元気だったので

「特に何もありません。」 と答えるしかなかった。

「流行は終わっているけどインフルエンザの可能性もある。」

とのことで、鼻に綿棒みたいなものを突っ込まれ

他の原因を探るために血液検査も受ける。


しばらくすると先生が病室へとやってきた。

先生によれば普通110~150の胎児心拍が200近くもあるとのこと。

母体も高熱が出ているし、まだ検査結果が出てないが

子宮内感染の可能性もあるので

遅くても今日中に赤ちゃんを出した方がいいとのことで

陣痛誘発剤の投与が始まる。


この時点で15時30分くらい。

しかし陣痛誘発剤を投与してもなかなか陣痛が始まらない。

16時を過ぎた辺りでもう1度内診をするが

やはり子宮口も開いていないようだ、すると先生から


「この感じでは産まれるまでにおそらく12時間はかかるだろう。」

「ギリギリまで待ってもいいが

赤ちゃんは今日中には出さないといけない、これは譲れない。」

「ちなみに陣痛誘発剤は夜間の投与はしていない。」

(人の少ない時間帯に投与するのは危険とのこと)

「赤ちゃんが弱ってしまう前に

早く外に出してあげたほうがいいと思うがどうしますか?」 と言われる。


内心 『もう、どうしますも何もないような…。』 と思いつつ

『自分のエゴで自然分娩にこだわって

もし腹の子を死なせてしまったら一生後悔する。

手術は怖いが、何よりも大事なことは

母子ともに無事に出産することだ。』 と腹を括り


「わかりました、それなら帝王切開でお願いします。」 と申し出て

16時30分、緊急帝王切開が決まった。


バニラアイス。

2015年5月5日の11時35分、突然の腹痛が襲う。

最初は『もしやこれは陣痛か?』 と思っていたが、間隔なくずっと痛い。

“陣痛は痛い時と痛くない時があり間隔がある”と

母親学級で聞いていたので

これはお腹にガスがたまって痛いのかと思い

何度もトイレに行くも何も出ない。


そうこうしているうちに1時間経過。いよいよ痛みが我慢できなくなり

『これは陣痛じゃなくてもとりあえず病院に行かないとヤバい』

と判断しタクシーを呼んで病院へ向かう。


14時ごろ病院に到着、車椅子に乗せられて産婦人科病棟に向かう。

到着するとまずは内診をされる。

この時点で子宮口が4cm開いており

この痛みは陣痛で間違いないとのこと。

ただ産まれるまではまだまだかかるようなので

病室へと案内され抗生剤の点滴を打たれ

腹に胎児の心拍を確認する機械を巻かれる。


するとモニターを見ていた助産師さんが

「あれ、赤ちゃんの心拍が早いわね…。」 と呟き

「ちょっと先生を呼んできますね。」 と病室を出ていった。


この時はまだ自分と胎児が大変なことになってるとは全然思っておらず

部屋が妙に暑いと感じてたので

『今のうちにアイス食べたいなぁ。』 などと考えていた。

ワハハ。

まさかの緊急帝王切開だって、笑うしかねえ。


妖精さんがきた。

決算の忙しさを乗り越えようやく産休に入り、

悠々自適な生活を送りつつ定期健診に行く。


いつものように検査が終わり先生の話を聞いていると、

あなたはGBSが陽性ですと言われる。

先生いわく、この菌は常在菌だけど

お産の時に赤ちゃんに感染する可能性がある。

今日膣剤を入れるのでこれで菌がいなくなってなかったら

お産の時に薬を点滴するとのこと。


今までどの検査も引っかからず健康そのものだったので

ちょっとびっくりしたけど、薬さえ点滴しとけば普通に産めるようなので

まぁおそらく大丈夫だろうと思う。

ついでに先生にいつ頃産まれそうかと聞いてみたら

予定日より早く産まれそうとのことだった。


もう最近は体が重いは、足はダルいは、胸焼けがするは、

臨月の体重管理が大変だはでなかなかしんどかったので

早めに産まれそうと聞いて嬉しくなる。



この時はまだ自分は普通に出産できると信じて疑いもしなかったけど

まさかあんなことになるとは…。