「古都の秋」の17絃パートを演奏して思ったことを書いてみようと思います。
まず難易度ですが、一箏は初級から中級、二箏は中級。17絃は初級くらいかな。
テンポはゆっくりで楽譜もそれほど難しくないので、すぐ弾けるようになると思います。それゆえ弾けるようになってくると退屈に感じてしまうかもしれませんが、ゆっくりな曲だからこそ、聞いてる人に退屈に感じさせないように弾くのがこの曲の難しさだと思います。
では、楽譜の最終ページに書いてある曲解説を読んでみましょう。
文を読みながら情景を思い浮かべることが出来る人は原文を読み、野村正峰氏と共に遺跡に至る道のりを楽しんでください。
私は情景をイメージするのが苦手なので、そんな私のお脳みそにわかりやすいように要素を抜き出します。
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秋の終わり。場所は滋賀県大津市、近江京の遺跡。
細い山道を登っていく野村正峰氏。
山川のせせらぎ、寺院跡には礎石だけ。
一面に散った紅葉、落ち葉を踏みしめる音、カサカサ。
壬申の乱とともに、わずか5年で廃都となった大津京。
中腹の樹林の間から、当時は琵琶湖を背にした壮麗な大津京が見下せたんかなぁ?
柿本人麻呂の古都をしのぶ歌。
さざなみの 志賀の大わだ 淀むとも 昔の人に また逢わめやも
(なんちゃって訳:志賀の大わだの淀みは昔と変わらんのに、ここにいた人にはもう会えんのやなぁ。)
『古都(コト)』というより『湖都(コト)』って都だったのかもなぁ。
この去りがたい思いを綴ろう。
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ってとこですかね。
近江京は667~672年。柿本人麻呂は660~724年頃に生きた人。近江朝に出仕してたかもしれんらしいですね。この歌を詠んだ時、廃墟の様子も生々しかったかもですね。
以上を踏まえて、楽譜を見ていきましょう!
野村正峰氏の会である正弦社に所属してれば、この曲の詳しい解説など聞けるのでしょうが、外部の人間はこれらから推理していくしかありません。
解釈が間違ってるかもだけど、そこは仕方がない!もし正しい解釈をご存じの方がいらっしゃったら教えてくださると嬉しいです。
まず冒頭に「思いをこめて」と注釈があります。その「思い」とは具体的に何でしょうかね?
野村正峰氏の『去りがたい思い』でしょうか。共感能力の高い人ならその想いを汲んで弾けるでしょうが、それは難しい事だし、所詮は他人の感情ですからね。それに近い『自分の感情』に置き換えるのが良いと思います。
歴史が好きな方は歴史に思いをはせてもいいし、詩が好きな人は柿本人麻呂の詩に込めた思いを乗せても良いかもです。
私は単純に『THE★晩秋』って思いました。
脳みその構造がシンプルなのでね。『去りがたい』なんて感情を抱いた事ないし。多分、実際に現地に赴いたとしても、「へー、ここがそうなのかー」って一応は思うでしょうが、振り返った瞬間スタスタと次に行っちゃってるだろうし。
でも、しみじみと『秋』を感じた事はあるので、それにしときます。一応、『THE☆晩秋』じゃないです。黒い★がこだわりです。
なので、音を『風景』と捉えていきます。
あと、作曲者の『去りがたい思い』がピンとこないにしても、やはり尊重はしたいので、音は深く長めにします。
最初の一小節目は静寂の中から音を発する感じ。静かだけど弱音じゃない。押さえの余韻がきれいに響くように。
二拍目の長さはそれで良いですか?『九』の音をどれくらいのばす?次の『九』を弾くために爪を準備して、音を消しちゃってたりしませんよね??
△の音の長さはどれくらいが丁度いいですか?拍に捕らわれ過ぎて、行進みたいになってない?でも伸びすぎて、拍を見失ってはダメですよ?
押さえるスピード、絃を放すタイミングもちゃんと意識しましたか?
そう考えると、とても難しい一小節でしょ?私は今回十七絃だったので、気楽にぼーっと待ってましたが、聞きながら「私だったらどう弾くかな?」ってのは考えました。
次に来る「為為斗為 斗斗十オ九」の呼応は鳥?楽譜の解説には鳥や虫の事は書いてなかったけど、森に生息してないって事はないでしょ!って事で、鳥にしときます。
「一五六五七八九オ九十~」からふわっと風の起こりを感じ、尺八の風に引き継ぐ感じ。
で、尺八を引き継いで17絃登場なんですが、何なんだろ、このやり取り?合奏の時も、ここをどう弾こうか迷いました。確かなのは、ここから曲が動き出すんですよね。
で、この三小節の箏と17絃と尺八のやりとりはなんだろー??と思ってる内に、箏の「十斗」の連続音がいきなり入ります。
山を歩いていると、突然「チチチチッ!」って鳴くやついますよね?私はあれにします。
「ケケケケッ!」って怪鳥にならないように、繊細にやさしくね☆
なんとなく全体のイメージが固まってきたので、さっきのよくわからんかった呼応の三小節は、山の秋の風景を表現してるって事にしようかなって思いました。落ち葉が落ちていく音かもしれませんね。
遠く(十七絃)、近く(箏)、もしくは、大きな葉(十七絃)、小さな葉(箏)。尺八の風に吹かれて落ち葉がハラハラと…。
うん、なんかそんな感じしてきた!
そして前奏が終わり、いよいよ2ページの楽譜番号1から物語が始まっていきます。
これ以上は長くなるので書きませんが、押さえでの転調部分や景気の良いフレーズを『場面の切り替わり』と捉えると、色んな風景が見えてくると思います。
このフレーズは一体何を表現しているのか考え、その表現に相応しい音が出せているのかを一音一音精査しながら弾くと、練習も退屈ではなくなるし、そうして出来上がった曲は、その想いが聞いている人にも伝わると思います。
解釈は人それぞれあると思うので、ご自身の解釈を見つけ、それにふさわしい音を出せるように弾き方を工夫しながら練習し、音楽で表現してみてください。