ものごとの捉え方は人によって様々です。
人の数だけ、解釈の仕方があることでしょう。
がんになった患者さんやご家族とお話をしていると、いつもそのように思います。
「どうして私が......」
「健康には気をつけていたし、煙草もお酒もやらないのに......」
「子どもが一人前になったので、これから夫婦二人でゆっくり過ごせると思っていたのに......」
「なんでうちの娘ががんなんかに。代われるものなら代わってあげたい......」
多くの患者さんやご家族から発せられた言葉です。
一方で、希ですが、こんなお話をする方もおられます。
「病気になってみてはじめて人のありがたさがわかったよ」
「がんになったことは悔しいけれど、今までたくさん楽しんできました」
「限りがあるってことがわかって良かったのかも知れません。準備ができるから」
物事の捉え方は本当に様々です。
ここに私たち医療者が入り込む余地はなさそうです。
考え方や見方を変えてみませんか?
などととても言えるものではありません。
せいぜい、
「私の患者さんでこんな方がおられましてね」とか、
「私は、こんな風にしているんですよ」などと
その患者さんに参考になりそうなことをお伝えするぐらいでしょうか。
生きることにも死ぬことにも、良い悪いはないと思います。
さらには、健康や病気をどのように捉えるかも、良い悪いはありません。
小林正観さんは、こう述べています。
宇宙にはピンチやマイナスの現象があるのではない。
現象は全部ゼロなのです。
それを自分がどう思っているかだけなので、もともとピンチという現象はない。
中村天風先生の言葉である『人生は心一つのおきどころ』とも重なります。
嫌なことやつらいことに直面したときに、いつもこの言葉を思い出しています。
私にとっては、困ったときの最良の言薬です。