今回は、劇薬のお話です。
友人の医師から聞いた実話です。
ある女性のがん患者さんが、緩和ケア病棟に入院されていました。
食事も進まず、元気がなく、主治医も病棟の看護師さんも、どう接していいか困っていたそうです。
そんなある日、ひとりの男性の面会人が突然、現れました。
そして、患者さんに向かって、大きな声でこう言い放ったそうです。
「なんや、まだ生きとったんか⁉」
その瞬間、病棟全体が凍りつきました。
他の患者さんもいるのに、何てことでしょう。
その言葉を浴びせられた患者さん、どうなったかと思いますか?
当然、怒りに満ちあふれたそうです。
そして、見返してやるとばかりに、
食事もするようになり、
なんとご自宅へ帰ることができたのだそうです。
その男性とは?
実は、その患者さんの手術をした主治医だったのです。
ここでの元主治医の発した言葉「なんや、まだ生きとったんか⁉」は、
まさに劇薬です。
主治医は、患者さんの性格や状況を判断して、
そんな言葉を発した訳ではないのかも知れません。
しかしながら、患者さんを発憤させたことで、
結果的にはプラスの方向に導いたことは事実でしょう。
私が診ている頭頚部がんの男性患者さんも、
来年2月まではもたないと言われたそうです。
しかし、私の前では、そんなことはないと証明してみせる。
あの先生を見返してやるんだ、と言っています。
一歩間違えば、患者さんを傷つけてしまう言葉ですが、
劇薬の言葉としてプラスに働くこともあるのですね。
もちろん、信頼関係があればこそなのでしょうが。
最後までお読みいただきありがとうございました。
医療現場での対話力向上をモットーに
臨床対話コーチとして活動しています。